Stravinsky バレエ音楽「春の祭典」
(ストコフスキー/フィラデルフィア管弦楽団1929/30年録音)


HISTORY 20.3295-HI Stravinsky

バレエ音楽「春の祭典」(1929/30年録音)
バレエ組曲「火の鳥」(1919年版/1935年録音)

レオポルド・ストコフスキー/フィラデルフィア管弦楽団

HISTORY 20.3295-HI  10枚組 3,350円

 ディズニー映画「ファンタジア」風収録より再聴。次のCDに「火の鳥」も収録されたので一緒に聴きました。このような近現代管弦楽の精華みたいな作品を、わざわざ太古歴史的録音で聴く必要あるのか・・・小学生時代にルーツがある「クラシック音楽愛好遍歴」には幾山川があって、「よほどのことがない限り、整った音質条件で聴くべき」(ノーミソ硬き思い込み!)と歴史的録音を一気に処分しちゃったこともあったのです。(LP時代)21世紀に至ると、著作隣接権クリアとの関係で「歴史的録音」は激安ボックス物で大量に放出〜これがけっこう新鮮な感触にて愉しめることに気付いたものです。

 ストコフスキーの「春の祭典」については、かつて

この録音時はまだホカホカと湯気が立っているような現代音楽だったはず。今でこそ、大人気曲だけれど、複雑な変拍子・不協和音は元来超難解な曲なんです。ところが、これが「ジュラシック・パーク」風に恐竜によって表現されると、画像となんの違和感もなく一気に聴かせてくれるから凄い。演奏は、現代の精緻なアンサンブルに比べると少々アバウトながら、オーケストラの上手さはピカイチで感心します
と、少々素っ気ないコメントのみ。

 彼は1922年この作品のアメリカ初演を手掛けていて、その盤石の自信はこの録音からも感じ取ることが可能です。映画「ファンタジア」の音源は1939年、しかもあちこち(映像に合わせて)カットがあって別物。こちらちゃんとした全曲収録、年代から想像される水準を大幅に上回って、明快で分離の良い音質(管楽器に距離感もある)に驚かされます。やや広がりが付加され、結果的にたいへん聴きやすい、たんなる資料的価値を乗り越えた存在でしょう。ワタシが耳にした「春の祭典」中、もっとも旧い録音となります。最近の録音で馴染んでいる耳にも、聞こえるべき旋律情報に不足を感じさせません。

 演奏は”極めてまとも”でして、ま、その前に”まとも”ってな〜に?的論議が必要でしょう。技術的に正確でリズムにキレがあること、過度な味付け、飾りを排すること、その上で指揮者の個性が刻印されることだと考えております。「指揮者の個性刻印」「過度な味付け、飾り」が先に立っちゃうと嗜好は別れてしまうし、あまりに素っ気なく乾いているのもツマらない・・・オーケストラに技術的問題があったり、色彩に不足するものは問題外か。

 打楽器の迫力とか、収録音量の強弱対比にやや弱点がある(かなりのものだけれど)のは当たり前ながら、金管の驚異的な上手さ、華やかさ、迫力に驚き、時に聴き馴染みのないパートさえ聞こえてきます。(楽譜の改変?おそらくは録音のマジックでしょう)弦にポルタメントが散見され、それは華やかで妖しい効果を生み出します。”現代の精緻なアンサンブルに比べると少々アバウト”との前回評価撤回。前時代的・歴史的演奏としてではなく、充分モダーンで集中力があり、強力粗野であり(音質除けば)現役で通用する水準です。

 細かいトラック分けも配慮あるもの。エキセントリックではなく、”難解なる破壊的現代音楽”(当時)をわかりやすく、魅力タップリに描いて下さった先駆け演奏でしょう。けっして懐古趣味ではない。

 「火の鳥」は音質的な改善はいっそう進んでいて、颯爽と(かつてない)速めのテンポ設定(SP収録の都合だろうか?)とメリハリ、輝かしさが(たっぷり)ありました。フィラデルフィア管弦楽団圧巻の技量発揮!但し、「終曲」ばっさりカット有はとても残念でしたが。

(2007年10月5日)


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