Rimsky-Korsakov 交響曲第1番ホ短調/
交響組曲「アンタール」嬰ヘ短調
(アンドレイ・アニハーノフ/サンクトペテルブルグ国立交響楽団)


NAXOS 8.550811 Rimsky-Korasakov

交響曲第1番ホ短調 作品1
(交響曲第2番)交響組曲「アンタール」嬰ヘ短調 作品9

アンドレイ・アニハーノフ/サンクトペテルブルグ国立交響楽団

NAXOS 8.550811 1993年録音

 Andrey Anikhanov(1965-露西亜)は日本でもお馴染みだけど、烏克蘭侵攻後はおそらく活動に苦慮していることでしょう。サンクトペテルブルグ国立交響楽団はフィルハーモニーに非ず、アレクサンドル・ドミトリエフが長く首席を務めた二番手オーケストラ(1997-2018年)、幾度か来日もしていて実際に聴いたこともあって、けっこうパワフルなサウンドだった記憶もありました。音質はかなり良好。

 交響曲第1番ホ短調はおそらく初耳、1865年初演20歳前の作品らしい。1885年改訂。二管編成、第1楽章「Largo assai - Allegro」は型通りというか優等生的にわかりやすい露西亜風旋律、未だ後年の絢爛豪華な爆発は感じ取れません。(8:50)第2楽章「Andante tranquillo」も耳馴染みよろしく優雅に甘い露西亜民謡風緩徐楽章、これも素直な風情に特別な個性の発露は感じられない。(7:09)第3楽章「Scherzo: Vivace - Trio」は符点のリズムが不安げなスケルツォ。(5:09)第4楽章「Allegro assai」は明るい表情に力強い歩みを感じさせるりズム、旋律の変化陰影も将来の萌芽を思われる魅惑の旋律でした。最終盤の金管もなかなか華やかな追い込み。(6:02)。アニハーノフの演奏は端正に整ってまっすぐと言うか、サウンドはそれなりパワフルでも、ちょっぴりスケールが小さく爆発が足らんかも。やや面白みない作品イメージは彼の表現責任かも知れません。

 交響組曲「アンタール」作品9は親しみやすいオリエンタルな旋律連続、知名度さておき、著名な「シェヘラザード」の色彩に負けぬ魅力的な作品と思います。Antarah ibn Shaddadとは6世紀アラビアの詩人とのこと、彼を表す主題(とても印象的なオリエンタル風情)は全編に出現して繰り返されます。三管編成、前曲に比べると成熟具合はぐっと深まっていると感じました。第1楽章「アンタールの夢」は廃墟の風景からアンタールの主題提示、可憐な女王の主題+鳥の攻撃が描写され、その繊細な掛け合い陰影は華やか。第1番にもハープは入っているけれど、その扱いはぐっと有機的でした。但し、演奏的には色気と厚みと力強さに不足して、端正生真面目に過ぎるかも。(9:36)第2楽章「復讐の喜び」は不安げな展開。アンタールの主題は怒りに彩られました。ここは金管爆発!なところだけれど、露西亜だったらもっとパワフルさと勢いが欲しいところ。ここの会場空気感はかなりリアル。(4:16)

 第3楽章「権力の喜び」は躍動する切ない、晴れやかに上機嫌なスケルツォ?「アンタール」主題も躍動して、なんとわかりやすい最終盤の盛り上がりでしょう。この作品に緩徐楽章はないのですね。(5:15)第4楽章「愛の喜び」ラストが緩徐楽章?人生に疲れ、女王との愛の喜びのうちに死んでいくアンタールを表現しているそう。シミジミと静謐な木管が絡み合う始まり、やがてやすらぎの弦がしっとり幻想的に歌ってホルンも参入いたしました。人生を達観した「アンタールの主題」も静謐。やがて落ち着いた風情のまま消え入るようにクライマックスを迎えました。(9:15)。第1-3楽章はやや速めのテンポにさっぱり(過ぎ)テイスト、終楽章は可憐に清潔な響きがなかなか聴きものでした。全体に重量感とアクが足らん感じ。

(2023年3月25日)

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written by wabisuke hayashi