Rimsky-Korsakov 交響組曲「シェヘラザード」
(エーリヒ・ラインスドルフ/コンサート・アーツ交響楽団)/
Bartok 管弦楽のための協奏曲


米Capital録音 Rimsky-Korsakov

交響組曲「シェヘラザード」

エーリヒ・ラインスドルフ/コンサート・アーツ交響楽団/イスラエル・ベーカー(v)

米Capital録音 1960年

 Erich Leinsdorf(1912ー1993墺太利→亜米利加)の音源在庫ファイルを点検していてBnF Collectionsに復刻された音質の濁りが気になりました。1960年前後の米Capitral録音は優秀録音が多かったはず、慌てて別ものを探って、首尾よくMembran Wallet復刻を発見できましたMembaran 600551。期待通りの極上鮮明な音質。20世紀管弦楽技法の粋を集めて色彩豊かにデーハー、わかりやすい旋律連続な名曲中の名曲ですよ。オーケストラは西海岸の録音用団体、実力は充分でしょう。Israel Baker(1919ー2011亜米利加)はブルーノ・ワルターのコロムビア交響楽団のコンサート・マスターだから、同じオーケストラかも知れません。

 二管編成だけど、打楽器7種揃えてハープも入って華やか、第1楽章「海とシンドバッドの船」冒頭から迫力ある明るい金管炸裂(力強いシャリアール王の主題)しっとりとしたヴァイオリン・ソロ(哀愁のシェヘラザードの主題)やチェロの瑞々しい鮮度に満足。ホルンやフルートの存在感もリアルでした。聴き手を夜伽話に誘う、夢見るような旋律サウンドが続きました。(9:08)

 第二楽章 「カランダール(苦行増)王子の物語」いきなりのヴァイオリン・ソロの泣き(哀愁のシェヘラザードの主題)そっと寄り添うハープ、それを受けるファゴットの遣る瀬なさ(カランダール王子の主題)。オーボエも哀し気な歌に応えます。オーケストラの技量はたしかに主部に入って弦はテンポ・アップ、その決然とした風情、明るい響きはカッコよいもの。チェロのソロ、それを受ける遠くより響くホルンもデリケート。金管群も各パート明晰に分離して浮き立ちます。弦の低音ピチカートも効果的にリズミカル。ハープは思いっきり華やか。(11:37)

 第三楽章「若い王子と王女」は落ち着いた弦は極上の佇まいに安らぎの旋律(「女王の旋律」かな?ここが一番好き)静かに開始します。旋律の節回しは例の如くさっくりとしてウェットに非ず、淡々と歌うもの。天空を舞うような木管の合いの手も魅惑。クラリネットによる快活なリズムを伴ったところは「女王の旋律」速め版、ちょっぴり切ないですよ。そしてイスラエル・ベーカーのヴァイオリンがそっと泣いて(例の哀愁のシェヘラザードの主題は超絶技巧)木管との絡み、ホルンも良いですね。テンポの名残惜しい動かし方も職人技でしょう。(9:28)

 第四楽章 「バグダッドの祭り。海。青銅の騎士の立つ岩での難破。終曲」風雲急を告げる不穏な開始(速いテンポに力強いシャリアール王の主題)。強く訴えるヴァイオリン・ソロ(シェヘラザードの主題)も激しいオーケストラに否定され、各楽章の主題が回顧されつつテンポ・アップして緊張感は高まります。細かい音型でのアンサンブルの整え方、ノリノリの勢いは絶品!熱気を加えてクライマックスへの導き方も絶妙に、クリアな解像度に響きは濁らない。ラスト名残惜しく、ヴァイオリン・ソロが甘く歌って全編を閉じました。(12:08)

 予想外に、ここ最近聴いた中で最高の「シェヘラザード」でした。

RCA LPデザイン Bartok

管弦楽のための協奏曲

エーリヒ・ラインスドルフ/ボストン交響楽団

RCA録音 1962年

 Membran Wallet復刻はこの作品と組み合わせて収録されました。こちらも優秀な音質。コンサート・アーツ交響楽団も上手かったけれど、ボストン交響楽団の深い響きはまた別格でした。この作品の委嘱はクーセヴィツキー、初演を担当したのがこのオーケストラ。作品的にラインスドルフのクールな個性に似合っていると思います。大衆性と民族的旋律のみごとに融和した名曲中の名曲。

 緻密なニュアンスと迫力がバランスする「Introduzione(序章)から弦は絶品の洗練。(9:45)「Presentando le coppie(対の提示)は冒頭乾いた小太鼓からユーモラスに+精密な集中力を感じさせるところ。ボストン交響楽団の木管の妙技、金管の抑制に聴き惚れます。主旋律以外の細部までしっかり聴き取れて曖昧さはありません。(6:28)

 「Elegia(悲歌)音量は抑制しても細部フクザツな各パートの声部の絡み合いがしっかり浮き立って、妖しい旋律が映えるところ。(6:57)「Intermezzo interrotto(中断された間奏曲)ここもユーモラスに平易雄弁な旋律+トローンボーンの「ブーイング」と木管の「嘲笑」がオモいところ。この辺りオーケストラの上手さ絶品。(4:17)

 「Finale(終曲)は圧巻のオーケストラの威力!快速パッセージにぴたり息を合わせる超絶アンサンブル(とくに金管の鮮やかな技巧)パワフルに全曲を閉じます。流したり、曖昧さの欠片もなし。(9:15)これも最近聴いた中でヴェリ・ベスト。

(2023年1月21日)

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written by wabisuke hayashi