Bach/Schubert/Schumann/Rachmaninov/Prokofiev
(スヴィアトスラフ・リヒテル/1962年イタリア・ライヴ)
Bach
平均律クラヴィーア曲集第1巻より
第1番ハ長調BWV.846/第4番 嬰ハ短調BWV.849/第5番二長調BWV.850/第6番ニ短調BWV.851/第8番 変ホ短調ーニ短調BWV.853*
Schubert
アレグレットハ短調D915/17のレントラー D366より第1/3/5/4曲
Schumann
アベッグ変奏曲 作品1
Rachmaninov
前奏曲第23番 嬰ト短調 作品32-12
Prokofiev
束の間の幻想 作品22より第3/6/9番
スヴィアトスラフ・リヒテル(p)
DG PROC-1078 1962年イタリア・ライヴ/*はモノラル
Sviatoslav Richter(1915ー1997旧ソヴィエット)の硬質強靭なタッチはLP時代から大好き、出会いは小学生時代?だっけTchaikovsky ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調(ムラヴィンスキー1959年)/Rachmaninov ピアノ協奏曲第2番ハ短調(クルト・ザンデルリンク1959年)なんや音質ぱっとせんかったfontana LP 1,200円盤だったと記憶します。そしてこのライヴはLP廉価盤時代に愛聴して、Bach平均律との出会いはこれだったはず、著名な1970−73年全曲録音より、こちらのほうがお気に入りなのは刷り込みでしょう。この記録は1961年イタリア・ツアーCD2枚分のライヴより、音質はまずまず良心的でした。聴衆の咳もリアル。
Bachの平均律クラヴィア曲集第1巻第1番ハ長調BWV.846のシンプルなアルペジオが始まったらもう夢心地、例えば無伴奏チェロ組曲第1番ト長調「前奏曲」にも同様のマジックに感慨を抱いたものです。フーガには懐かしさがこみ上げて、リヒテルは思いっきり浪漫に表現しても違和感はありません。(4:41)第4番 嬰ハ短調BWV.849はその風情のまま哀しげな情景が淡々と広がって胸に染み入るよう。フーガには絶望的な切なさが粛々と広がりました。(8:52)第5番二長調BWV.850(前奏曲)はは一転軽快な音形が走り出して、正確な技巧が明晰かつ硬質なタッチ。(2:50)第6番ニ短調BWV.851は、ほの暗いスタッカートなリズムを刻みました。(3:39)
第8番 変ホ短調ーニ短調BWV.853のみモノラル、ほとんど拝聴に支障はありません。これは荒涼として絶望的な原野が広がるような前奏曲、とぼとぼ重い足取りが眼前に浮かびます。それはそのままフーガにも深遠なる苦しみを湛えたまま引き継がれてしっとり静謐、スケールの大きさに圧倒されるもの。(10:33)こんな浪漫な聴き方はBachにとって邪道かも知れないけれど、リヒテルの表現にはドラマを感じたもの。
Schubertのアレグレット ハ短調D915も哀しく切ない思い出が懐かしく、デリケート。(6:12) 17のレントラー D366より第1/3/5/4曲の屈託のない明るさは救いでした。陰影上手く際立たせた選曲・表現も抜群。(5:27)SchumannのAbegg-Variationsは題名通りABEGG音形が主題として提示され、4回変奏後終曲へ至る8:01。晴れやかな主題は歌謡性に充ちて甘く、しっとりタメのある表現も魅惑、ピアノはスタンウエイのキレのある華やかなさではないと類推します。キラキラ輝くような変奏曲は自在に揺れて、軽快な技巧、曖昧さのないタッチが続きました。この辺り圧巻の輝かしさ!一般に浪漫派を苦手とする自分が、ピアノ作品を好むルーツはこの演奏にあったのかも知れません。
ラストは露西亜もの。Rachmaninov 前奏曲第23番 嬰ト短調は儚い花火が燃え尽きるように濃密な光を感じさせ(2:16)Prokofiev 束の間の幻想はなんとも不思議な乾いた情感がちょっぴり漂いました。(1:15-0:26-1:03) (2021年1月15日)
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