Respighi 交響詩「ローマの祭り」/「ローマの噴水」 (マイケル・ティルソン=トーマス/ロサンゼルス・フィル)
Respighi
交響詩「ローマの祭り」
交響詩「ローマの噴水」
マイケル・ティルソン=トーマス/ロサンゼルス・フィルハーモニック
Columbia Masterworks M35846 1978年録音
Michael Tilson Thomas(1944ー亜米利加)はサンフランシスコ交響楽団の長期政権を終え(1995ー2020)現在はどうしているのでしょうか。ボストン交響楽団の副指揮者として1969年デビューは新鮮な話題として記憶しております。当時のDG録音は現在でも鮮度抜群。バファッロー・フィル、ロンドン交響楽団と華麗なる経歴を経て録音も多彩、この珍しいロサンゼルス・フィルとの34歳録音は少々不遇でして、CDは現役じゃないでしょう。なんせ一番人気「ローマの松」を欠いて、かつてバーンスタインの「松」と組み合わせて妙な廉価盤CDが出ていたこともありました。
これはLP板起こし音源をネットより(申し訳なくも不正)入手したもの。当時のロサンゼルス・フィルはズービン・メータが降りて、ジュリーニが就任する辺りでしょう。意外と珍しい組わせはアナログ録音時代、音質は上々だけど、少々音量が低い。Respighiのローマ三部作は大好き、デーハーに宝石箱をひっくり返したように華やかな響き、「松」が一番好きだけど残り2作もたっぷり愉しみましょう。開放感明るさが他の20世紀音楽とは一線を画す名曲と思います。
Feste Romaneは1928年、三部作のラスト。初演は1929年トスカニーニ、三管編成に多種多様な打楽器、ピアノ、オルガン、マンドリン迄入って近現代管弦楽法の粋を集めたもの。祭りの趣旨や内容は残念ながら理解できておりません。第1部「チルチェンセス(Circenses)」は皇帝ネロ時代「キリスト教徒たちが衆人環視の中で猛獣に喰い殺されるこの残酷な祭り」(Wikiより。以下同様)の詳細描写とのこと。冒頭トランペット(ブッキーナ?)による賑々しいファンファーレは聴衆の熱狂なんだそう。低音楽器は猛獣の唸り声、賛美歌風の旋律はキリスト教徒の殉教を表現して、不気味に荒々しいところ。第2部「五十年祭 (Il Giubileo)」は「50年ごとに行われているロマネスク時代のカトリックの祭(聖年祭)」とのこと。教会の鐘、「永遠の都・ローマ」讃歌の高鳴らかな金管の響きも魅惑(超絶に上手い)カッコ良いスケールであります。
第3部「十月祭(L’Ottobrata)」は「秋のぶどうの収穫を祝って開催されるルネサンス時代の祭」とのこと。軽快な明るい旋律、第1部とは打って変わって親しみやすい民衆の祭り風情がいっぱいに漂って、夕暮れのセレナーデは静かに締めくくります。第4部「主顕祭(La Befana)」は「ナヴォーナ広場で行われる主顕祭前夜の祭がモチーフ」って?カソリックの幼稚園通って以来の宗教的素養皆無に意味不明です。クリスマス以上に重要な行事とか、喧騒と混乱に金管中心に素っ頓狂な熱狂が続いて、リズムは激しく移り変わりました。誰でも映画で見たことのある手回しオルガン、酔っぱらい騒動とか混沌と華やかさが、親しみやすい旋律と不協和音に紛れて「狂喜乱舞」(これもWikiの表現)興奮の絶頂のうちに終了します。(24:29)
パワフルに上手い金管のキレもたっぷり、華やかなオーケストラやなぁ。スムースな流れに若きマイケル・ティルソン=トーマスは客演でも統率は完璧でしょう。メータ時代より繊細緻密を感じさせます。
Fontane di Romaは1916年、三部作最初の作品は1918年トスカニーニの再演によって真価が知られたそう。こちら「祭り」に比べてちょっぴり打楽器は少なめだけど、ハープやチェレスタが加わっておりました。第1部「夜明けのジュリアの谷の噴水(La fontana di Valle Giulia all'alba)」は木管と弦、チェレスタの静かな囁きに描写される早朝の爽やかな風情、どこの噴水かは特定されていないらしい。第2部「朝のトリトンの噴水(La fontana del Tritone alla mattina)」はホルンは女神のほら貝、テンション高い弦の上昇音形は水の吹上を表現しているのでしょう。明るい朝の日差しに湧き上がる高揚感、明るいオーケストラは全力で爆発して快いところ。「アルプス交響曲」に一脈通じるものを感じました。
第3部「真昼のトレヴィの泉(La fontana di Trevi al pomeriggio)」はわずか3分半ほど、「凱旋式」旋律が堂々勇壮に響き渡って、ここは金管の力量の見せ所でした。やがてしっとり落ち着いて収束しつつ第4部「黄昏のメディチ荘の噴水(La fontana di Villa Medici al tramonto)」は静謐に沈静化していくデリケートなラスト。「祭り」に比べて終わり方はジミっぽくておとなしい感じ。(16:25)
ま、いろいろ勝手なことを書いたけれど、文句なし素晴らしい名曲。ド・シロウト(=ワシ)は誰の演奏であれたいてい堪能できるもの。 (2021年7月10日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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