Ravel ピアノ作品集(アリシア・デ・ラローチャ(p)1969年)


SONY SRSC 1623 1969年録音 中古250円 Ravel

ピアノ作品集

道化師の朝の歌
高雅で感傷的なワルツ
夜のガスパール
オンディーヌ/絞首台/スカルボ

アリシア・デ・ラローチャ(p)

SONY SRSC 1623 1969年録音 中古250円

 「のだめ」再放送にて彼女の「道化師の朝の庭」にすっかり魅せられました。放送では細切れだから、ちゃんと全曲聴きたい!ことし2009年に逝去した、アリシア・デ・ラローチャを思い出しました。彼女には珍しいCBS録音は発売13年を経、現在でも入手可能。よほど売れていないのか。収録わずか43:46。これで良いのです。ややオン・マイクにて、さほどに優秀録音とは言えぬけれど、彼女のタッチは明快に収録されます。

 のだめは(誰の吹き替えかは知らぬが)けっこうリキの入った出足から、躍動する若々しい「道化師の歌」でしたね。こちら熟練のヴェテランは”フツウ”〜BBS年末「第九」論議にてよろしくない意味で使ってしまったが〜中庸の表現で淡々と進めていて、それでいてなんとも言えぬ気品と粋、華やかさ、味の深さ、暖かさ、コクを感じさせるもの。小器用じゃないが、テクニックに不足はなくて、ノリはとてもよろしい。ま、スペインのリズムは体質みたいなものでしょうから。

 「高雅で感傷的なワルツ」〜なんという名曲!Schubert がベースになっているらしいが、馴染みのウィンナ・ワルツとも異なる、まさに”高雅で感傷的”(ほんまは上品でセンチメンタルな、というのが訳として似合うと思う)繊細な揺れが支配して、夢のように美しい。専門家の分析はこちら。”スイスの精密機械職人”と評される音楽には、分析的緻密クールな演奏が似合うような気もするが、アリシア・デ・ラローチには細身な神経質の欠片もない。自然な呼吸のようなテンポ設定、テクニックのキレを強調しない豊かなタッチ、豊満なる包容力・・・ここ数日、こればかり聴いておりました。

 いつも陶然としちゃう・・・

 Ravel 「夜のガスパール」ってどういう意味?〜こんな更新記事を6年ほど前に更新しております。なるほど、勉強になるな。Ravel の作品はどれも素敵だけど、これは少々難解で”ほんわかメルヘン系”ではないでしょう。旋律はシンプルな美を安易に誇らない。彼女は鮮やかなテクニックでスケールかなり大きく弾き進めていくが、流麗でなく、むしろしっっかりと地に足を付けた力感がありました。骨太と評するとイメージが異なるが、少なくとも細部微細入念なる世界ではなくて、もっとざっくりとして、賑々しい勢いと迫力+生来の気品が前提になったもの。

 独墺系音楽の嗜好が強い日本では、少々音楽の自由度が強すぎて好みを分かつ作品でしょうか。また、並び称されるDebussyとも異なる世界であります。小柄だった彼女の、大きな音楽にしみじみ合掌。

(2009年12月25日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi