Rachmaninov ピアノ協奏曲第1/2番
(アシュケナージ/プレヴィン/ロンドン響)


Rachmaninov  ピアノ協奏曲第1/2番(アシュケナージ/プレヴィン/ロンドン響) Rachmaninov

ピアノ協奏曲第1番 嬰ヘ短調 作品1
ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18

アシュケナージ(p)/プレヴィン/ロンドン交響楽団

独DECCA 467 004-2  1970年録音 9枚組3,000円にて購入したウチの一枚

 1970年頃がワタシが熱心にこの類の音楽を聴きだした頃か。アシュケナージはその頃からメジャーで人気のピアニストだったし、そのウチ指揮もしだしたでしょ?どういうわけか音源を確認する機会は(おそらく一度も)なくて、ようやく最近Shostakovich 交響曲第5番(ロイヤル・フィル 1987年)やら、Sibelius 交響曲第2番(フィルハーモニア管 1979年)を聴き出したところ。(正直、聴いた狭い範囲ではあまり感心できない・・・感じ)。ああ、そういえば「展覧会の絵」(アシュケナージ版。フィルハーモニア管 1982年)も少々聴いたかな?(印象は同様)

 ピアノの方は、もっと聴いていなくて、つい先年、ピアノ協奏曲第2番をコンドラシン/モスクワ・フィル(1963年。これも永遠のベストセラー。マゼール/ロンドン響とTchaikovskyと併せて)を(はじめて。ようやく)聴いたところ。

その情感に揺れる心象風景のデリカシー、バックは控え目だけれどまさに憂愁とはこのことか、これがロシアとアメリカの違い?陰影の深さはさすがだし、そして無用に重すぎない。なんせ録音が素晴らしい。
と。それにFMで偶然聴いたMozart 協奏曲第17番ト長調〜パドヴァ・エ・デル・ヴェネトー管との新しい録音らしいが
〜古楽器か、というくらい控えめで遠慮しつつ、ゆらゆら揺れる奥ゆかしい演奏は誰?ああ、でもこれやっぱり現代楽器だよね、なんて思いつつ、極限の抑制、絶対に走らない旋律、時に過去を振り返るようなシミジミとした味わいに、じ〜んと来ましたね。〜(音楽日誌より)
ようはするに、「アシュケナージを聴くため、期は熟した!」ということですよ。そこに出会ったのが「9枚組3,000円」ボックス〜運命か。

 第3番で気付いたんだけれど、Rachmaninov は録音状態が重要では?そうじゃないと、そもそも音楽の全容がわかりにくいんじゃないか、と思います。作曲者による自演(全集)、ホロヴィッツの歴史的録音(第3番)、リヒテルのモノラル時代録音(第1/2番)は、拝聴すべき重要な問題提起を含んでいるが、もっと甘い旋律とか、切ない情感を素直に楽しんでもよろしいのではないか、ということです。

 お恥ずかしいお話しだけれど、第1番をちゃんとした録音で聴いたのは初めて。嗚呼、美しい、やさしい〜素敵な作品だった、そんなことは誰でも知っていることなんだろうが、ワタシはアシュケナージの演奏で(遅れ馳せながら)気付きましたよ。こうなると他の(歴史的録音でも)様子がわかってきちゃう。リヒテル(p)/ザンデルリンク/モスクワ放響(全ソ・ラジオ・テレビ大交響楽団?1955年)に は「硬質な打鍵には悲劇が宿っていて、聴き手に手抜きを許さない集中力と緊張がありました。甘さが殺されて、なんやらやたらと深い!ザンデルリンクのバックは極上」(音楽日誌)との感想も・・・

 ワタシはこの1970年の録音、ずいぶんと抑制された、ややサッパリ系の演奏だと思います。1963年コンドラシン盤と比べると、「情感に揺れる心象風景のデリカシー」〜という方面(いや、もうそれも文句なく感動するが)ではなく、もっと自然体で「いかにも技巧メ一杯披露します!」的演奏でもない、暗い情念とも少々縁遠いか。もしかしたらプレヴィンの穏健表現が、それを求めているのかも。(コンドラシン/モスクワ・フィルの洗練された濃厚さも魅力だけれど)いつもの英DECCAらしからぬ、残響やら距離感を大切にした録音も好ましい。

 第2番といえばリヒテル(1959年ヴィスロツキ/ワルシャワ・フィル)が有名で、それはまさに「硬質な打鍵には悲劇が宿」るような、胸を締め付けるような感動にまちがいない。こちらアシュケナージは豪放磊落ではない、甘い旋律は上品な味付けであくまで甘く、やさしく、くどすぎない。第2楽章の溜息のような囁き、打鍵の力感に不足はないが、リキみ、濃厚な表情などどこにも存在しない。あくまでていねいに音楽は流れ、細部ニュアンスを楽しむべき演奏でした。そして存分に輝かしく盛り上がります。ジミではない。上品なんです。永く座右に置くべき一枚。

(2004年9月17日)

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written by wabisuke hayashi