de Falla/Francaix/Honneger/Tcherepnin/
Rachmaninov パガニーニの主題による狂詩曲
(マルグリット・ウェーバー(p)/フェレンツ・フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団)


LP時代のデザイン de Falla

スペインの庭の夜(1957年)

Francaix

ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ(1956年)

Honneger

ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ(1955年)

Tcherepnin

ピアノと管弦楽のための10のバガテル(1960年)

Rachmaninov

パガニーニの主題による狂詩曲(1960年)

マルグリット・ウェーバー(p)/フェレンツ・フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団

DG 4792691-CD20

 これはLP時代よりの愛聴盤(Rachmaninov)。ほかも幾度も聴いております。Margrit Weber(1924ー2001瑞西)はもう誰も知らんと思うけど、瑞西の実業家の奥様、現代音楽に一言あったそう。たしかにモノラル時代にFrancaix、Honneger、Tcherepninなんてあまり録音はなかったでしょう。いくつか初演も担当しているらしい。de Fallaはのちにクーベリックとの再録音があって、これは旧モノラル、この作品って濃密かつ官能的な風情漂うエッチな作品!小粋なFrancaix、ゼンマイ仕掛けのおもちゃのように無機的かつ愉しいHonneger、忘れ去られるにはもったいないほどNikolayevich Tcherepnin(1899ー1977露西亜→仏蘭西)泥臭い民族的な旋律・・・最高。

 でもね。白眉は”パガニーニ狂詩曲”、驚くほど音質がよろしいし、このステキな作品との出会いはこれだったんです。文句なく甘美な浪漫旋律、絶妙なタメがありがちな”上手いだけの若手”とは一線を画す、絶品。フリッチャイのバックもその効果に寄与していることでしょう。(「音楽日誌」2018年11月より)

 ・・・これに付け加えるようなこともないけれど、昔懐かしいFerenc Fricsay(1914ー1963洪牙利)。膨大な音源が残って、どれも意外と音質良好(前半はモノラル)歯応えのある演奏ばかり。LP時代廉価盤に多く登場したことに、昔から親しみを感じておりました。

 「スペインの庭の夜」は湿度の高い濃密官能的な夜を感じさせる名曲、大好きですよ。「ヘネラリーフェにて(En el Generalife)」はほとんどWagnerの雄弁でしょう(トリスタン風)。ピアノはデリケートかつ流麗。素晴らしい技巧のキレを堪能可能です。(10:00)はるかな踊り(Danza lejana)」はエキゾティックな旋律がリズミカルに響いて、テンポを上げてやがて情熱的。(4:38)「コルドバの山の庭にて(En los jardines de la Sierra de Cordoba)」は激情が走って、リリカルな歌に充ちたピアノは暖かくセクシー、雰囲気たっぷり緻密なオーケストラが包んでかっちりと入念なサポートぶりでした。華やかに走り抜いて、上手いオーケストラでっせ。(7:55)

 Francaix(1912ー1997仏蘭西)は演奏者と同時代の作曲家、この作品(1936年)以外聴いたことはありません。以前、”小粋”と表現した小品は、剽軽に快活ユーモラスな「Prest leggiero」(1:56)、静謐淡々と趣ある「Lent」(1:21)、ノンビリとつぶやくように、そしてちょっぴり不安げな「Allegretto」(1:50)、ラストは「Rondeau」(2:26)淡々と小走りに進むような、ステキな作品でした。Honnegerワルター・クリーンの演奏で昔からお気に入りだった作品。まるで機械仕掛けのおもちゃのように楽しく、ピアノは無機的に調子外れ風に淡々として、モダーンなテイストが漂いました。3:08-2:23-4:20の短い3楽章、ラストはかなりノリノリ、キレのあるピアノはブルースでした。

 Tcherepnin以降はステレオとなります。音質はまったく現役(先のモノラルは低音が少々弱い)。この作曲家もこれ以外聴いたことはない。懐かしい民謡を連想させるような泥臭い、短い旋律が連続して愉しいもの。力強く明晰なピアノと、オーケストラの掛け合いは息が合って精密でした。(12:48)そしてトリはRachmaninov、LP時代中古にて格安に贖(あがな)った名曲全集的なもので出会った作品がこの演奏。あまりの甘美な美しさに打ちのめされた記憶も(もちろん音質も)鮮明です。冒頭からオーケストラの充実した響き(←輝かしいアンサンブル)ピアノは素晴らしい技巧、粒の揃った音色、疾走に惚れ惚れいたしました。刷り込みかなぁ、後々種々いろんな演奏を聴いても、これ以上の感銘を受けた記憶がない。力強く、かっちりとして細部迄明晰な表現、テクニックのみ表層を流すことを許さぬ陰影豊かな世界、たっぷり堪能いたしました。(24:32)

(2020年8月29日)

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written by wabisuke hayashi