Rachmaninov 交響的舞曲/ヴォカリーズ
(サイモン・ラトル/バーミンガム市交響楽団)


EMI TOCE-9707 Rachmaninov

交響的舞曲 作品45(1982年)
ヴォカリーズ 作品34-14(管弦楽版/1983年)

サイモン・ラトル/バーミンガム市交響楽団

EMI TOCE-9707

 Simon Rattle(1955ー英国)は2017年よりロンドン交響楽団の音楽監督、若い頃は長期1980-1998年、City of Birmingham Symphony Orchestraのシェフを務めておりました。メジャーに話題なものを避ける性癖のある自分は、アバドもラトルもベルリン・フィル時代の録音をあまり聴いておりません。これは27-8歳、当時新進気鋭若者の記録でした。音質もアンサンブルもまずまず、各パートの色気とか個性にはやや足りない。露西亜風憂鬱陰影をあまり感じさせぬ快活誠実な表現と感じました。

 交響的舞曲はRachmaninovのラスト作品、内容はほとんど3楽章の交響曲、傑作と思います。晩年才能が枯渇したとか、そんな悪口も一部伺うけれど、そんなことはないですよ。初演は1941年ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団。名曲を堪能いたしましょう。二管編成だけど、打楽器は多種多様です。ティンパニ、トライアングル、タンブリン、スネアドラム、シンバル、大太鼓、タムタム、シロフォン、グロッケンシュピール、鐘3(D,E♭,F#)、ピアノ、ハープ(Wikiより引用)

 馴染みの哀愁風情を湛えたまま、行進曲風リズムが緊張感たっぷりに充たされてカッコ良い第1楽章「Non allegro」。若きサイモン・ラトルはやや慎重な手探り状態でしょうか。もっと決然としたリズムのキレやら勢いがあってもよろしかったかと。中間部の木管による儚げに静かな掛け合いは誠実、ここはもっとたっぷり色気が欲しい。それを受ける弦の囁きにはいっそうの甘美を!(12:09)

 第2楽章「Andante con moto (Tempo di valse)は不安げなファンファーレから始まる(幾度も登場する)妖しくも甘美なワルツ。ヴァイオリン・ソロは官能的、続くオーボエ・ソロもためらいがちのリズムに乗って、この幽愁濃厚な風情を愉しみましょう。贅沢言えば、この辺りもエッチな色気やら深みに足りない。テンポの扱い、揺れも若さゆえに熟達してピタリとは決まっていない感じ。(10:04)

 第3楽章「Lento assai - Allegro vivace」はスケルツォ風、ほの暗く軽妙なリズムから力強いフィナーレは充実しております。「怒りの日」主題も激しく登場。若者の表現はちょっぴり前のめりに落ち着かない。調性リズムが次々と変遷するフクザツな楽章はいまいち流れが整理されていない、つかみどころがない感じ。濃厚Rachmaninovには苦甘い音色がちょっぴり足らんオーケストラの個性かも。ベルリン・フィルとの再録音はきっと姿が違うのでしょう。(14:38)

 「ヴォカリーズ」は稀代の切ない名旋律、爽やかに清潔に歌われております。もしかしてRachmaninovの一番人気?(6:53)

(2021年12月18日)

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written by wabisuke hayashi