Rachmaninov 交響楽団、合唱、独唱のための詩曲「鐘」 作品35
(スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立交響楽団/ユルロフ・ロシア合唱団)


Rachmaninov  交響楽団、合唱、独唱のための詩曲「鐘」 作品35 (スヴェトラーノフ)YEDANG CLASSICS  1979/84年録音  YCC-0153
Rachmaninov

交響楽団、合唱、独唱のための詩曲 「鐘」 作品35
バリトン独唱、合唱、管弦楽のためのカンタータ 「春」 作品20

スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立交響楽団/ユルロフ・ロシア合唱団/マスレンニコフ(t)ピサレンコ(s)ヤコヴェンコ(br)

YEDANG CLASSICS  1979/84年録音  YCC-0153 10枚組 3,990円にて購入したうちの一枚

 スヴェトラーノフは母国ロシアではもちろん、オランダ、そして日本でも根強い人気を誇りました。ワタシは残念ながら彼の(ナマはもちろん)CDもまともに聴いたことはありません。独墺系の有名作品を、彼の音源で追ってみるというような趣味は特別にはないが、たっぷり濃厚で甘いRachmaninov なら一度聴いてみたい〜この作品は(少なくとも日本では)熱心に聴かれている様子もないし。以前、メロディアのLPで出ていたものと同じ音源でしょうか。(録音年は同じ)

 ワタシは外国語には縁が薄くて、この作品の「深い意味合い」も全然わからない。でも、とろけるような美しい旋律であることは保証できます。受け売りだけれどエドガー・アラン・ポーの原詩らしい。

第1楽章 「銀のそりの鈴」
第2楽章 「美しい結婚式の鐘」
第3楽章 「おおいなる警鐘」
第4楽章 「葬儀の鉄の鐘」
 各々幼少期〜老いと死への流れを表現しているとのこと。合唱を伴う交響曲風でもあります。そう思って聴くとなんやら納得するというか、「銀のそりの鈴」は、たしかに子供時代の夢と希望に溢れた可憐な雰囲気(文字通り鈴が大活躍)があります。楽しげ、軽快なるテンポで音楽が始まり、強烈かつ静謐な合唱が喜びを歌い上げ、テナーが表情豊かにソロを取ります。やや不安げで幻想的な途中部分もあるが、それは合唱のパワーでうち消されます。やがて強靱な金管が加わって大団円へ。

 荘厳なる「美しい結婚式の鐘」(レント)〜オーケストラの奥行きが深いですね。弦が厚みを保って幾重にも響きあいます。瞑想的な歌に充ちて、結婚式の鐘はチューブラベルで、静かに、控えめに表現されます。ソプラノの喜ばしいソロ(花嫁?違うか)は切々と、オーボエとフルート、そして弦のオブリガートで飾られ、それはオーケストラ全体に引き継がれ、甘く陶酔するような旋律が続きました。ロシアのオーケストラ(合唱)でこんな繊細な味付けも可能!先入観は禁物です。神に対する畏敬の念ははっきり聴き取れることでしょう。この楽章、全曲中の白眉。

 「おおいなる警鐘」は、激しい不安と葛藤が合唱の絶叫によって表現され、金管の切れ味、打楽器の大爆発は、まさに期待通り。この楽章、相当に強烈です。終楽章「葬儀の鉄の鐘」は、かなりゆったりとした葬送行進曲。切々たる嘆きのバリトンに絡むのは低音のオーボエ(妖しい)であり、強靱な金管(エネルギーがもの凄い)の一撃です。やがて合唱が全員で死者を悼みます。

 後半、ホルン・ソロ(控えめヴィヴラート)が呼び水となって、男声合唱のリズミカルなテンポ・アップが出現〜しかし、やがてゆったりとした葬送行進に戻ります。厚みのある弦が回帰し、安らぎのうちに全曲を終了しました。

 「爆演系の雄」=スヴェトラーノフ、みたいな先入観を持って聴くと少々はぐらかされますか?時に激しい金管や打楽器(+合唱)の活躍はある(例えば「おおいなる警鐘」)が、美しいオーケストラ、明快な表現がけっして異形ではありません。カンタータ「春」も、甘く、切ない旋律を繊細に、大胆に、時に激しく歌ってくださって聴き応えがありましたよ。ラスト期待通り抜群の盛り上がり。(2004年10月8日)


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written by wabisuke hayashi