R.Strauss 家庭交響曲/メタモルフォーゼン
(アントニー・ヴィト/シュターツカペレ・ヴァイマール)


NAXOS 8.570895 R.Strauss

家庭交響曲(2007年)
メタモルフォーゼン(23の独奏弦楽器のための習作)(2005年)

アントニー・ヴィト/シュターツカペレ・ヴァイマール

NAXOS 8.570895 

 オペラ中心の活動なのか、このオーケストラの録音はほとんど聴いたことがありません。偶然、お気に入りのR.Strauss管弦楽作品中、この家庭交響曲はほとんど馴染んでいなくて、これを機会にしっかりお勉強の意欲もありました。NAXOSへの数多い録音で知られる Antoni Wit(1944ー波蘭)はR.Straussの有名どころをまとめて録音していて、ようやくその一部を拝聴機会を得ました。これがしっとりジミに温かくも落ち着いたサウンド、木目の響きに惚れ惚れするような出色の音質、知名度に頼らぬ【♪ KechiKechi Classics ♪】鉄則に従った大穴の発見!大掛かりな4管編成、サキソフォーン4本というのが個性的でしょう。

 全編途切れずに演奏され、4部に分けられるそう。区切りの理解が違っていたら教えて下さい。第1部「家庭の主人の主題」(←今や好まれぬ用語)は「ドン・キホーテ」冒頭に似て、さらにしっとり落ち着かせたような温和な風情、ギラギラするような金管の爆発場面は控えめに、ヴィトは慌てずにしっとり歌っておりました。低音も効いた会場の空気感しっかり、適度な残響も優秀録音でしょう。オーケストラの瑞々しい厚み、管楽器の色気にも不足はありません。(5:27)

 第2部「こどもが遊び、母親の子守歌に包まれて眠る様子」はスケルツォとのこと。軽快な木管の掛け合いはこどもを表現して、子守唄はしっとりしたヴァイオリン・ソロ、優しく平和に微笑ましい情景が続きました。5:30辺り、不安にちょっぴり暗転するところは「ドン・キホーテ」を彷彿とさせました。(6:43)第3部「仕事をする夫、愛の交歓、妻の気づかい」静謐なしっとり風情は継続して木管、そして弦の掛け合いは目眩がするほどの美しさ。(6:05)「Adagio」はいかにもウィーン・フィル辺りが似合いそうな陶酔の場面、シュターツカペレ・ヴァイマールのサウンドに不足なし、情感は高まって感極まるこの作品中白眉。この辺り「英雄の生涯」を連想させるもの。静謐のうちに収束して・・・(13:20)

 ラスト第4部「喧嘩、そして和解の歌」はガラリと風情は変わって、「薔薇の騎士」風旋律のフーガから始まって雰囲気は賑々しく勇壮に力強いもの。ここでの分厚い響きはオーケストラの実力充分、金管の炸裂も余裕でしょう。嵐を連想させる風情(喧嘩)はやがて4:10辺り優しくしっとり収束して、木管による「和解の歌」シンプルな旋律へ。やがてそれは圧巻の金管の雄弁な爆発に至ってオーケストラの技量の見せ所でしょう。8本のホルン合奏最高、「英雄の生涯」を連想いたしました。(15:13)全体雰囲気としては「アルプス交響曲」かな?あれほどわかりやすい自然描写はないので、ちょっぴりとっつきにくいかも。例の如し、多種多様多弁な旋律は魅惑に充ちていると知りました。

 メタモルフォーゼンは最晩年、フクザツな和声の絡み合い、人生の黄昏諦観色濃い作品。このオーケストラの弦の色気、寄せては返す陰影の深さはホンマもんでっせ。作品との出会いはクレンペラー(1961年)、それは立派な演奏に間違いはないけれど、状態のよろしい音質は耳に快いもの。(28:18)

(2021年2月20日)

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written by wabisuke hayashi