R.Strauss 管楽器協奏曲集
(アンドレ・プレヴィン/ウィーン・フィル)


DG UCCG6360 R.Strauss

オーボエ協奏曲ニ長調(マルティン・ガブリエル(ob))
ホルン協奏曲第1番 変ホ長調(ラルス=ミヒャエル・ストランスキー(hr))
ホルン協奏曲第2番 変ホ長調(ロナルト・ヤネツィク(hr))
クラリネットとファゴットのための二重小協奏曲ヘ長調(ペーター・シュミードル(cl)/ミヒャエル・ヴェルバ(fg))

アンドレ・プレヴィン/ウィーン・フィルハーモニー

DG UCCG6360 1996年録音

 Andre Previn(1929ー2019亜米利加?)は10代の頃からジャズを演奏して著名な存在、やがてヒューストン交響楽団(1967)を皮切りにロンドン交響楽団(1968ー1979音楽監督)ピッツバーグ交響楽団(1976ー1984)ロサンジェルス・フィル(1985ー1989)ロイヤル・フィル(1985ー1992)オスロ・フィル(2002ー2006)のシェフを務めたとのこと。ウィーン・フィルの常連でもありました。その穏健なバランス感覚を好ましく聴いておりました。R.Straussの主要な作品はウィーン・フィルと多く録音して、これは67歳の記録。当時の首席級がソロを務めたようです。

 ステキな音楽は音質やら演奏技量など一定の条件が整えば、どれも愉しめるもの。最近そんなことを痛感しつつ、Richard Strauss(1864ー1949独逸)の管楽器による協奏的作品集も堪能いたしました。

 オーボエ協奏曲ニ長調は最晩年1945年の作品。2管編成、金管はホルン2本のみ。第1楽章「Allegro moderato」からさわさわと静かにデリケートな弦に乗って、夢見るように懐かしい、甘いオーボエが自在に歌います。達観して枯れた風情も漂う。第2楽章「Andante」は落ち着いて平明な旋律、オーボエは朗々と雄弁、管弦楽伴奏とソロはウェル・バランス。人生の黄昏が色濃く広がるところ。ラストはかなり長いソロがひとり雄弁でした。第3楽章「VivaceーAllegro」は華やかな躍動が続いて、カデンツァはソロイストの腕の見せ所でしょう。晴れやかな表情が続いて、晩年の平明な境地が伺えます。(8:12-8:30-4:31ー2:42)全曲途切れず通して演奏されました。

 ホルン協奏曲第1番 変ホ長調は1883年18歳の若書き作品。2管編成ティンパニも入って、途切れなく演奏される、素直に陰りのない希望溢れる作品。第1楽章「Allegro」は勇壮に豪快なソロがぶち上げてスタート。力強く輝かしく、前向きな希望に充ちております。Schumann風かな?馴染みのMozartに比べると、旋律はもっと伸びやかに広がりを感じさせるもの。ストランスキーのホルンは思いっきり雄弁!甘いチェロもソロに絡みます。第2楽章「Andante」のソロ陰影深く、悠々たる風情に大きく、慌てない。木管の絡み合い、弦のすすり泣きもデリケートでしょう。第3楽章「Rondo.Allegro」はストレートな闊達さ、躍動が続きます。文句なしの豪快なホルンは最終盤名残惜しくテンポを落として悠々と大きく歌い続けました。(5:17-5:17-5:27)

 ホルン協奏曲第2番 変ホ長調は1942年晩年の作品。初演は1943年カールベーム/ウィーン・フィル/ゴットフリート・フォン・フライベルク(hr)だったとか。楽器編成は上記同様。第1楽章「Allegro」のソロの始まりは第1番に比べるとずっと細かく、複雑に変化に富んで雄弁な旋律でしょう。ヤネツィクの音色は前曲と微妙に変わってちょっぴり粗野?に興味深いもの。ド・シロウト耳にはこちらいっそう技術的には難しいと類推します。そのまま続けて第2楽章「Andante con moto」は寂しげに安寧の表情、ソロの登場は1:30頃、伴奏の自然な流れに乗って溶け込みます。遠い景色を臨むような懐かしさが漂います。オーケストラはソロとそっと息を合わせて、絶品のサポートでしょう。第3楽章「Allegro molto」は闊達に細かい音形が続いて、技巧的な転調が次々と続いて前作と60年の違いがしっかり出て個性的にパワフルなな躍動でした。(8:21-5:06-5:21)

 クラリネットとファゴットのための二重小協奏曲ヘ長調は1947年最晩年の作品、伴奏は弦+ハープのみ。これも途切れなく演奏されます。第1楽章「Allegro moderato」はいかにも最晩年の諦念に溢れて、わずかなヴィヴラートも官能的なペーター・シュミードルはささやくように静かな始まり。やがてユーモラスに控えめにファゴットも参入して不安が過(よぎ)ります。控えめな伴奏に回っている弦楽合奏はソロを引き立てて絶品。第2楽章「Andante」は伸びやかなファゴットのソロが主役、優しくクラリネットも絡んで対話は続きます。第3楽章「Rondo.Allegro ma non troppo」は軽快な二人のソロが絡み合って、明るく饒舌な会話が続いても人生の寂しげな黄昏は隠せぬ寂しさが感じられました。(6:02-3:05-8:38)

(2023年3月18日)

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written by wabisuke hayashi