Purcell 組曲集+英国協奏曲集
(マッキントッシュ/シティ・オブ・ロンドン室内管弦楽団)


VOV ALLEGRETTI ACD 8165 Purcell(1659-1695)

歌劇「アーサー王、またはブリテンの守護者」〜弦楽による組曲
歌劇「ディドとエネアス」〜管弦楽のための組曲
歌劇「予言者、またはダイオクリージャン」〜「復讐の女神の踊り」(弦楽による)
歌劇「妖精の女王」〜組曲
劇音楽「アブデラザール、またはムーア人の復讐」〜組曲

Thomas ARNE(1710-1778)

オルガン協奏曲第2番(調性不明)

JOHN Stanley(1712 ?-1786)

オルガン協奏曲ハ短調

Thomas CHILCOT(1700-1766)

チェンバロ協奏曲 作品2-3(調性不明)

トーマス・マッキントッシュ(or/cem)/シティ・オブ・ロンドン室内管弦楽団

VOX ALLEGRETTI ACD 8165 1980年録音  500円

 ・・・シブい趣味だなぁ。

 英国往年の音楽ばかり、しかも演奏者はよくわからない(ネットで調べても)。「シティ・オブ・ロンドン室内管弦楽団」とは、リチャード・ヒコックス率いる「シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア」とは別団体で、名ヴァイリニスト・ルジェーロ・リッチとの関係が深い、と解説に言及がありました。現代楽器となります。所謂、演奏会用管弦楽への編曲ものでして、Purcellの旋律に馴染むには便利な一枚か、と思います。なんせ原曲は「ディドとエネアス」以外聴いたことはないし、「アブデラザール」だったらBrittenの「青少年のための管弦楽入門」の主題に引用された(ここでもちゃんと出現)くらいの経験ですから。

 歌劇「アーサー王、またはブリテンの守護者」〜弦楽による組曲となっているが、もの哀しい序曲(ラルゴ)が終わったらいきなりオーボエ(2本)登場して活躍しております。(表記ミスか)ゆったりとした”もの哀しい”旋律続くが、ノンビリ優雅な味わいタップリですね。激昂しない、爆発しない、旧き佳き時代を彷彿とさせる13:26〜ラストは「シャコンヌ」(チャッコニー)だけれど、これが名曲!PACHERBELのカノンを(ちょっとだけ)連想させる、諄々としたクライマックスを陰影豊かに出現させて下さいました。

 歌劇「ディドとエネアス」〜組曲には金管とティンパニも加わります。例の如しのゆったりとした序曲(レント)〜細かい音形の悲劇的な旋律が疾走(アレグロ)します。優雅で晴れやかな「成功の踊り(?)」、一転深刻な静けさを伴った「暗い洞窟」、軽快で喜ばしい「舟の踊り」、ラスト「水夫たちの踊り」は喜ばしくもノンビリとした味わいで締め括りました。(9:03)これって、悲劇なんですね。

 「復讐の女神の踊り」は、まるでBach のフランス風序曲を連想させるスケールがありました。(弦楽のみ/4:54)歌劇「妖精の女王」〜組曲は、再びオーボエが活躍して華やかな響きとなります。Purcellって短調の旋律が多いのですね。前奏曲/入場の踊りから成っていて、しっとりとした味わいと軽快さが同居しており、優雅で荘厳な哀しみが溢れました。後者はHandel の「水上の音楽」に於ける「ホーン・パイプ」を連想させます。トランペットが華やか。(7:26)

 劇音楽「アブデラザール、またはムーア人の復讐」〜組曲はいきなり”誰でも知ってる歌ってる”旋律から開始。しかも、Brittenが引用した部分だけではなく、ちゃんと他の旋律も出てきております(当たり前だけれど)。オーボエも加わって喜ばしい「メヌエット」、ラストのホーン・パイプはずいぶんとあっさりと終了いたしました。(5:34)

 演奏的には悪くないと思います。とくに管楽器も入った(相対的に)大きな編成の時にはバランス良く響きました。弦のみの時はちょっと厳しいかな?

 このCDは盛りが良くて、更に珍しい協奏曲3曲追加有。どーせならちゃんと作品詳細付けて欲しいけどね。

 Thomas ARNEのオルガン協奏曲は堂々たるスケール+明るさ(長調の作品)であって、著名なるHandel の魅力に一歩も引けを取りません。トーマス・マッキントッシュ(or)のソロが盤石な安定感有。JOHN Stanley オルガン協奏曲ハ短調は一転、暗い旋律(まるで「マタイ」のような!)が支配して収録として考えられたものだと思います。オルガン・ソロの雄弁は前曲を上回るでしょう。知名度がないのが不思議なほどの名曲!

 ラスト、Thomas CHILCOT チェンバロ協奏曲ではフルート大活躍。楽しいですよ。鍵盤をソロにした協奏曲は大Bach (1685-1750)が初めて、と記憶しているが、これは原曲なんでしょうか。実質上「チェンバロとフルートのための協奏曲」になっていて、その華やかさ、短調に暗転していく旋律の多彩さ・・・驚くべき傑作でした。トーマス・マッキントッシュのチェンバロは音量小さく(つまり正しいバランスで)ソロを執っており、なかなかの名手ぶりでした。

(2007年10月12日)

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