Prokofiev 交響曲第5番 変ロ長調 (クリストフ・エッシェンバッハ/ヒューストン交響楽団/1994年ライヴ)
Prokofiev
交響曲第5番 変ロ長調
クリストフ・エッシェンバッハ/ヒューストン交響楽団
ヒューストン交響楽団の自前CD? 1994年ライヴ
これって意外と希少な音源?ネットを探っても出現しません。一般にピアニスト上がりの指揮者に対して妙な偏見があって、ほとんど彼の演奏を聴く機会はなかったけれど、華麗なポストを経、現在はワシントン・ナショナル交響楽団とか。44分とはちょいと贅沢な収録、これがライヴとは思えぬ緻密な演奏、ヒューストン交響楽団ってこんな色彩豊か+迫力たっぷりに鳴るのですね。打楽器の使い方が絶妙にポップな作品、かつてはそのウケ狙い風情に反発を覚えたけれど、現在はお気に入りです。音質も極上。(「音楽日誌」2015年10月)
Christoph Eschenbach(1940〜)は現役を代表する指揮者でしょう。ヒューストン交響楽団のシェフを務めたのは1988-1999年、40-50歳の精力気力充実期にヒューストンで活躍したのですね。Brahmsの交響曲全集(1991-93年)あたりが代表的な録音でしょうか。これはネットから偶然入手した音源、オーケストラの自主作成盤?入手は難しそう。音質極上。ライヴとは信じがたいほど颯爽と、洗練されたアンサンブルであります。オーケストラとの信頼感を感じさせ、露西亜風泥臭い風情皆無。Prokofievはここ数年、シニカルな旋律リズムがお気に入り、Shostakovichよりネアカな感じしませんか。勇壮であり、平易にわかりやすい、この第5番も大好きな作品になりました。全44:47だからテンポは遅めかも。停滞感はありません。
第1楽章「Andante」。勇壮かつ爽やかな主題が美しく歌う出足、弦も管もフルに使って雄大な夜明け、露西亜の広大なる大地のような情景であります。平易穏健なように聴こえて、じつは変拍子らしい。試しにド・シロウト的に3/4拍子で振ってみ、全然音楽と合わないから。細かな音形の間(あい)の手も微妙にユーモラス、Prokofievらしい個性でしょう。 金管と打楽器(9種)が華々しい朗々と響いてオーケストラの実力+スケールをたっぷり感じさせます。ラストが迫ってドラの一撃がダメ押しです。
第2楽章「Allegro moderato」。ノリノリ疾走するスケルツォ楽章でしょう。打楽器のぽこぽことした響きも、切迫感に微妙なユーモアを色付けしております。中間部は木管を中心に優しく歌ったり、金管が重々しく歩みを遅めて、やがて忙しない疾走、大爆発が戻ります。この楽章もわかりやすく、軽妙だけど妙にシニカル、表情も色彩も豊かなオーケストラの響きがみごとなところ。細部描き込みは入念そのもの。
第3楽章「Adagio」。静謐安寧な緩徐楽章。際立った美しい、清潔な旋律(弦)はShostakovichにはない個性なのでしょう。「ロメオ」を思い出しますね。足取りは寂しげに、でも暗くはない。響きは清廉として繊細、重苦しくもありません。やがて木管や低弦、低音の金管に旋律は引き継がれながら、徐々に姿を変容させます。これは葬送行進曲風かも。
第4楽章「Allegro giocoso」。かつてはここ、盛り上がってこれから!って時にすとんと終わってしまうみたいで、なんや素っ気ないなぁ、そう思っておりました。管楽器が遠くから序奏を始めて(ここのニュアンスが入念)やがてくぐもったヴィオラから、ノリノリのリズムをクリアに刻んで、管楽器が剽軽シンプルな旋律を次々と受け渡すカッコ良いところ。ちょいとさらりと抜いた感じも粋でっせ。時に入る多彩な打楽器のキレ、ぽこぽこした響きもあいかわらずユーモラス。単純に同じ旋律繰り返しでもなくて、微妙に突っ掛かるようなリズムもオモロいもの。金管も参入して、やがて打楽器全員参加に賑々しく、クライマックスを迎えて華やかな大団円であります。(盛大な拍手にようやくライヴであることを思い出しました) (2016年12月18日)
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