弦楽のための音楽
(ポール・マンリー/プリマヴェラ室内管弦楽団/アリーネ・ブレワー(hp))


COLLINS CLASSICS  3006 Roussel 

シンフォニエッタ 作品52

VAUGHAN-Williams 

グリーンスリーヴスによる幻想曲

Elgar

弦楽セレナード ホ短調 作品20
ため息 作品70

Debussy 

神聖なる舞曲と世俗的な舞曲

Vaughan Williams 

トマス・タリスの主題による幻想曲

ポール・マンリー/プリマヴェラ室内管弦楽団/アリーネ・ブレワー(hp)

COLLINS CLASSICS 30062 1990/91年録音 600円(新品)で購入。

 ここ数年怒濤の如くCDを処分し、また往年の名盤と評された著名なる音源ボックスの価格下落に伴って、購入もしております。安易に知名度だけで音楽を聴いていないつもりだけれど、逆に無名演奏家を”自分だけが知っている”的マニア気取りも止めちまいました。

 【♪ KechiKechi Classics ♪】に掲載されている音源も半分くらい処分済みかも知れない・・・が、購入10年余、これはちゃんと残しておりました。600円など21世紀には珍しくない価格となったが、丁寧に、永く聴いてあげれば充分に価値がある。Primavera Chamber Orchestra はネットで検索しても様子がわからないし、Paul Manleyも同様。英国の指揮者団体と類推。Collins Classicsも活動を止めてかなり時間が経過しております。

 配慮ある収録作品、素直で地味、オーソドックスな演奏、音質も優れた一枚。英仏ワタシの音楽嗜好ど真ん中であって、静謐で粋な作品が並びました。Rousselの作品はほんの10分にもならぬ小品だけれど、擬古典的(やや)硬派なリズムが素晴らしい佳作。おフランス的にほんわかしていなくて、不協和音も素敵な、このCD中もっともハードな歯応え+躍動推進力が愉しめます。快調な出足。明るい表情。

 「グリーンスリーヴス」は保留条件なしの愛聴作品であって、いったい棚中にいくつあるのか・・・わずか4分間の愉悦、素敵な演奏にしか出会ったことはない。過度に表情付けをせず、淡々粛々と進めていくのは、いかにも英国風矜持の世界であります。このCD唯一管楽器付加(フルート)されて、色彩が広がります。

 Elgarのセレナードもわずか3楽章計11分ほど。後悔と諦念が入り交じった、床しい旋律が連続します。これも”淡々粛々”路線が好ましい。↓昔のコメント見ると当時のワタシは「Sospiri」を知らなかったんだな、作品番号で検索できなかったのか。ハープとオルガンが加わって、宗教的嘆きさえ連想させる、荘厳なる5分間の”ため息”(先日、あまりの無慈悲なお仕事状況連続にため息をついたら、回りから”幸せが逃げますよ”と諭されました)。

 Debussyのアルカイックな世界は個性的であって、緩急合わせて10分ほどの作品。静謐で夢見るような「神聖なる舞曲」、躍動がプラスされた明るい「世俗的な舞曲」だけれど、こちらも充分に気品があります。

 ラストを締め括るのは「タリス幻想曲」であり、このサイトでも数回触れているが、弦楽+バンダ(別働隊)+弦楽四重奏といった凝った編成であり、実演で経験するといっそう感慨深いもの。古雅な旋律をベースとし、オルガン的な響きを実現している(つまり非常に地味だ)が、このモノクロの世界を愉しめれば英国音楽への道は近いんです。

 聴き馴染んだバルビローリとか、先日思わぬ感銘深かったストコフスキー盤のグラマラスに比べれば、ずいぶんと内省的な集中力ある演奏でした。

 Primavera Chamber Orchestra〜この素晴らしきアンサンブルはどこに行ったの?録音は数点あるようだけれど。

(2009年5月1日)

 「スポンサーはユーロ・トンネル」って、最近このパターンが多いんですか?NAXOSなんか、けっこうやってますね。(安くなるんだったら、なんでも付けて欲しい)

 選曲の冴えが興味を引きます。でも、こんな団体、誰も知らないせいでしょう。レコード屋さんのカゴで売れ残ってました。600円。知名度ばかりにこだわっていると、こんな美しい音楽を見落とすこととなる。虚心に、値段の安さを求めると「犬も歩けば棒に当たる」・・・いやこれは「残り物に福」かな。「プリマヴェラ」って素敵な名前じゃないですか。イギリスの団体みたいです。

 ルーセルは「シンフォニエッタ」〜「小交響曲」と呼ぶに相応しい、わずか7:30ほどの可愛い曲。快活で、ユーモアたっぷりのルンルンな(うぁっ、ちょっと表現古いか)味わいの弦楽合奏。冒頭から「こりゃ、当たりだな」の予感にニヤリ。

 「グリーンスリーヴス」は、弦楽にフルートとハープのみ加わったシンプルな編成ながら、その深い、文字通り幻想的な世界にあっというまに連れて行かれます。次のエルガーも、ちょっと胸が痛むような切ない旋律だけど、淡々として、むしろ早めのサッパリとした演奏です。そのほうが、曲そのものの味わいはよく表出される。

 しっとりとして地味目の響き、抑制されて力みのない大人のアンサンブル。室内アンサンブルの宝庫、イギリスの隠し玉(秘密兵器)でしょうか。静かな部分での、息をひそめて囁き合うような、細かな配慮の連続。

 「Sospiri」は、手許の辞典を見ても出てこないし、何枚かCDを持っているけど意味合いがわからない。これがハープを伴って、悲しみをこらえながらゆっくりと歩むような、深遠な小曲。遠くを見つめながら、思わず深呼吸をしてしまいます。クサい表現ですが「苦しかった過去も、いま思い起こせばすべて幸せだった」と人生を振り返っているよう。

 ドビュッシーの曲は意外と手に入らないもので、CD時代になってからは初物でした。この曲もハープが活躍する曲。イギリスの音楽に比べると、同じ静けさでもエキゾチックで、どこかセクシーですね。妖精が舞い踊るような、夢見るような旋律。世俗な舞曲における、そっと恥ずかしげなワルツが奥ゆかしい。華やかな結末。

 「トマス・タリス」幻想曲。これは弦楽のみの編成で、知名度こそ「グリーンスリーヴス」に落ちるが、名曲の誉れ高いもの。演奏は、もうなにも付け加えるべきことがありません。このCDの最後を飾るに相応しい16分の陶酔。

 音の状態は、オーディオ的に映えるような派手なものではありません。アンサンブルの雰囲気が良く出た、自然で聴き疲れしないもの。「A COLLINS QUEST DIGITAL RECORDING」というそうです。なんのことやら、さっぱりわかりませんが。(2000年更新)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi