Holst 組曲「惑星」(ヴァーノン・ハンドリー/ロイヤル・フィル)


QUADROMANIA(membran) 222195-444 4枚組970円 Holst

組曲「惑星」 作品32

ヴァーノン・ハンドリー/ロイヤル・フィルハーモニック/アンブロージアン合唱団(1993年)

Delius

天国への道

クリストファー・シーマン/ロイヤル・フィルハーモニック(1994年)

Bax

交響詩「ティンタンジェル城」

ダグラス・ボストック/ミュンヘン交響楽団(1998年)

QUADROMANIA(membran) 222195-444 4枚組970円のウチの一枚

 所謂「RPO」音源でして、時に指揮者表記のないCDが駅売りされていて(海賊盤に非ず)、それに含まれる「惑星」がこれ、ハンドリー指揮のもの。ちなみに、ハンドレイではありません。ま、エイドリアン・ボウルトの弟子筋だし、素晴らしい演奏に仕上げているのは当たり前。師匠と並んでヴェリ・ベストか。オーケストラの調子も、録音状態も絶好調なんです。

 一番人気は「木星/快楽をもたらす者」(平原綾香ちゃんに感謝)だとして、まずは冒頭「火星/戦争をもたらす者」に於けるリズムのキレ、迫力がポイントなのでしょう。変拍子やら不安定な調性(一応ハ長調)にも関わらず、破壊的なイメージを与えないのが英国音楽の矜持であります。ハンドリー出足快調であり、適度に粗野であり、破綻のない迫力を以て、いきいきとしたバランス感覚抜群。

  「金星/平和をもたらす者」〜最近、こういった平穏なる緩徐楽章がお気に入りであります。ホルン、ヴァイオリン、チェロのソロが静謐なる詠嘆を繰り広げて、感銘深い演奏。この辺りの旋律はほんま英国の良心を感じさせる逸品也。「水星/翼のある使者」はスケルツォ楽章であり、抑制された剽軽なるユーモアが軽妙清潔明快。金管の深み、そして咆哮が素晴らしい効果。リズム感の良さは特筆すべき水準であります。

 さて、全曲中白眉である「木星/快楽をもたらす者」へ。ロイヤル・フィルの金管の魅力大爆発(実力充分)であって、いかに派手な曲想であろうとハンドリーは走らない。キラキラとした華やかさは充分だけれど、徒に雄弁すぎない。途中、タンバリンの存在もはっ!とするほどリアル。中間部「“I vow to thee, my country”(私は汝に誓う、我が祖国よ)」(綾香ちゃんの「ジュピター」主題)も味わい深い。揺れ動くテンポ設定にもムリはない。スカっとした演奏です。

  「土星/老いをもたらす者」は、「金星」より暗く、不安であり、瞑想的な静謐に支配されます。ここでも聴きものは金管であって、弱音〜思わぬ迫力で突出絶叫させるハンドリーの手腕はまったくお見事。着実なリズムの刻み、メリハリも説得力充分です。「天王星/魔術師」は、不安げなるスケルツォであって「魔法使いの弟子」クリソツ。曲想はやや暗いんだけれど、ハンドリーは思いっきりハジけてスウィング、金管、そして弦の大爆発で盛り上げます。元気いっぱい、迫力もノリもたっぷり。ここは「木星」と並んで録音の効果が出ております。とくに打楽器の存在感。

 「海王星、神秘主義者」・・・「惑星」もいよいよラスト。並の演奏なら静か過ぎて、音楽が弱くなりがちなんだけど、ハンドリーはほとんどmpで押し通して、細部も、全体の姿も明快です。声楽の扱いも上手い。やや食傷気味だった「惑星」がまったく鮮度たっぷりに、最初っから最後まで堪能できました。

 ヴァーノン・ハンドリー、78歳で亡くなったのは惜しいぞ!

 フィル・アップが凝ってますね。「天国への道」は、隅々までDeliusの穏健清涼な響きが支配して、いつもなら腰の弱いクリストファー・シーマンの演奏にも不満はない。Baxの交響詩「ティンタンジェル城」は知名度低いだろうが、勇壮なるスケールを誇った名曲。ミュンヘン交響楽団の響きは少々薄いが、作品の魅力を充分堪能させてくださる演奏に間違いはない。

(2009年7月25日)

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written by wabisuke hayashi