Tchaikovsky 交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」/「展覧会の絵」
(メータ/ロサンゼルス・フィル)


Tchaikovsky 交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」/「展覧会の絵」(メータ/ロサンゼルス・フィル) Tchaikovsky

交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」(1977年)

Mussorgsky/Ravel

組曲「展覧会の絵」(1967年)

メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー

LONDON  DCL 82556  420円(税込。中古)で購入

 ズービン・メータは巨匠と呼ばれる世代になった(1936〜)が、ニューヨーク・フィル時代(1978〜1991)辺りからやや人気凋落気味です。バイエルンの歌劇場の監督を務めるくらいだから実力充分、たかだか録音の世界くらいの評価で「人気凋落」とは、片腹痛い言い種か。ウィーン・フィルには定期的に登場しているし。所詮、音楽の缶詰であるCDで聴く範囲ではあるが、彼はロサンゼルス・フィル時代(1962〜1978)の録音が魅力的だと思います。英DECCA優秀録音のチカラもあるのでしょうか。

 メータはTchaikovsky交響曲全集を録音していて、ところがCDではちっとも復活しません。だからこの「悲愴」は貴重でっせ。「The Best Classics」という通販かなんかのシリーズで出たもので、一般に流通した気配がない。(かつて出ていた可能性はあるけれど)「貴重なもの=価値がある」ということではないが、ワタシは好きな演奏です。「かっちりと明快で豊かな演奏」〜これは購入時の感想。先入観かも知れないが、少々ウェット濃厚すぎる旋律を、入れ込みに過ぎず、素っ気なく鳴らず、変化に富んだ表情が充分にアツく、むしろ爽やかな躍動感がある。

 この作品は独墺系諸国でも人気らしくて、録音はたくさん存在します。ワタシの好みとしては、あまり厳格な”いかにも交響曲”風でやっていただくと少々カタが凝る・・・、できれば「美しい旋律でしょ」と素直に感じさせていただきたい。かといって濃厚な”泣き”がオーヴァー・フロウすると恥ずかしくって聴いていられない・・・優秀なオーケストラで、豊かに、細部まできちんと鳴らせていただきたいもの〜これはオーマンディ盤で、この作品に出会った(小学生時代)後遺症でしょうか。

 ロサンゼルス・フィル(あくまで録音上の感想)は、メータ〜ジュリーニ迄しか聴いておりません。(録音問題か、ずいぶんと印象が変わる)この時代、ちょっとウェットで豊満に、瑞々しい響きですよね。金管も朗々と鳴り響いているが、露西亜風大爆発ではないし、亜米利加風マーチング・バンド風でもなくて、バランスがとてもよろしい。つまり、第1楽章は深刻どんより悲惨に過ぎず、第2楽章は砂糖控えめながら甘さに不足せず、第3楽章はリキみはなくて、いつのまにか存分なる爆発に至って欲求不満にならない。

 アンサンブルがとても優秀でして、引き締まっております。終楽章は美しい(特に低音)・・・絶望に淵に追い込まず、皮相に流れない。旋律の歌わせ方は淡々方面だけれど、能天気とは無縁だし、やや官能的な魅力に充足しちゃう。たしか、以前なにかの解説書に「この録音はオリジナル楽器編成云々」との記述をみたような記憶もあるが、楽譜を照合する風習(力量・能力)のないワタシには言及不能です。

 ありがたいことに「展覧会の絵」がフィル・アップされました。「悲愴」のちょうど10年前、若手(31歳!)の人気実力筆頭として人気沸騰していた頃の録音です。この録音はかつてCD化されているだろうが、現役では発見できません。(ニューヨーク・フィルとの録音は購入可能)やはり”若い”というか、10年後は成熟しているのが理解できる演奏でしょうか。細部のツメがやや甘い、というか「間」も少々不足する感じ。旋律の歌わせ方が、時に前のめりに、少々焦り気味にそっけなくなっちゃう。優秀録音に間違いないが、ほんのちょっと「悲愴」より落ちるかも。

 でも、若さの勢いはぐいぐいと感じさせて、速めのテンポがアツい。しかも「古城」「カタコンブ」のゆったりとした語り口など、とても仕上げが美しくて、ロサンゼルス・フィルは快調です。潤いある豪華なサウンド。「リモージュの市場」に於ける見事なアンサンブル。(金管〜チューバ?〜の躍動感が素晴らしい)「ババ・ヤーガの小屋」「キーウの大門」の圧倒的ラッシュは予想通りの大迫力大団円でした。

(2004年12月3日)


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