Tchaikovsky 交響曲第6番ロ短調「悲愴」(1936-37年)/
Mussorgsky/Cailliet編 組曲「展覧会の絵」(1937年)
(ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団)
Tchaikovsky
交響曲第6番ロ短調「悲愴」(1936-37年)
Mussorgsky/Cailliet編
組曲「展覧会の絵」(1937年)
ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団
温故知新。「展覧会の絵」には24年前に素朴な言及が残っておりました。最近歴史的音源拝聴機会は少なくなって、安易に音の状態のよろしいものばかり求めております。それでも、時々太古録音に時代の個性を聴きたくなるもの。
「悲愴」のほうはいくつ録音があるのかわからぬほどのEugene Ormandy(1899-1985洪牙利→亜米利加)の十八番、これが一番最初の録音でしょう。音質は想像を超える上質、解像度も低音もかなりのもの。飾りの少ないストレート系さっぱりとした表現に速めのテンポ、時代故の弦のポルタメント奏法も悠々と、この時期からオーケストラの実力をはっきり理解できます。露西亜憂愁の旋律をたっぷり堪能いたしました。オーマンディも未だ30歳代ですよ。
第1楽章「Adagio,Allegro non troppo」はかなり速めのテンポに始まり、フィラデルフィアの弦は鳴り切ってたっぷり、瑞々しく蠱惑な音色に歌います。金管の爆発は音質的にちょっと厳しいけれど、深み厚みがあって魅惑の音色、疾走部分の若々しい一気呵成な勢いは相当なもの。時代を勘案すると大時代大仰な節回しに非ず、すっきりとモダーンなセンス、爽快な盛り上げにアツさも感じさせました。(16:20)第2楽章「Allegro con grazia」は5/4拍子という変拍子ワルツ。たっぷり甘い旋律はフィラデルフィアのジューシーな弦に乗って瑞々しいノリ。表現はさっぱりとして、湧き上がるような切ない、遣る瀬ない高揚も流れの良いもの。(7:40)とくに第3楽章「Allegro」スケルツォ楽章の緊張感とアンサンブルは颯爽として、惚れ惚れするほど。ここもかなりテンポは速くパワフルに荒々しい。ラスト方面にわずかなタメは珍しいかも。クライマックスのシンバルもちゃんと聴き取れます。(8:21)第4楽章「Adagio」は引き続き速めのテンポに流麗な厚みのある響き、湧き上がる若々しい前のめりの情熱。不気味なドラもちゃんと聴き取れました。全曲聴き通して時代の違和感はありません。(8:37)
Lucien Cailliet(1897-1985亜米利加)による「展覧会の絵」。当時Ravelの編曲がクーセヴィツキーに限定独占されていたからなんだそう。カイエと読んでいたけれど、カイリエが正しいらしい。最近この編曲録音は存在するのでしょうか。なかなか不気味な色彩感のある魅惑の編曲、楽器編成はちょっと調べが付きませんでした。オーマンディはこのあとRavel版をたしか3回録音したと記憶します。これも時代を考慮するとずいぶんと音質状態はよろしいもの。上記「悲愴」よりいっそう良好。演奏は熱気に充ちたストレート系表現に飾りの少ないのは同じ、フィラデルフィア管弦楽団のパワーと色彩を堪能できます。
冒頭のプロムナードは木管から始まって、優雅なバランス。(1:37)「グノーム」はまるでストコフスキー風に大仰(2:34)「プロムナード」は低めの管楽器のみに始まり、静かに弦が加わります。(0:51)「古城」は弦主体+オーボエ(イングリッシュホルンかも)によって切々と歌われます。(3:25)「プロムナード」は管楽器アンサンブルが華やか。(0:29)「テュイルリーの庭」に於けるこども達の口喧嘩は木管に表現され、それはRavel編に似ております。(0:59)「ビドロ」重い牛車は金管、弦がそれを追いかけてRavelほど重くはない快速(テンポも速くてさっぱり/1:53)
「プロムナード」ここは繊細な弦の弱音(0:49)「卵の殻をつけた雛の踊り」ここも木管と金管が呼応してRavelに風情は似ております。かなりノリノリ(1:16)「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」威圧的なサムエル・ゴールデンベルクは弦(後半は金管も加わる)縮こまっているシュムイレは木管に表現され、弱音の金管も入りました。(2:03)「プロムナード」は朗々とした金管群のファンファーレ、そしてフル・オーケストラが参入して堂々スケールが大きい。(1:39)「リモージュの市場」の喧騒は金管弦木管に小さく始まって、やがてテンポアップしていっそう賑やか。(1:18)「カタコンベ」は金管の錚々たる爆発。(1:46)「死せる言葉による死者への呼びかけ」は静謐だけどオーケストラが総動員されます。(1:54)
「バーバ・ヤガー」はRavel版だと打楽器のアクセント強烈、ここでは金管前面にちょっとアセント不足な感じ。(3:36)ラスト「キーウの大門」は金管大爆発からの弦が優雅にサポートへ。チューブラーベルによる鐘が鳴り響きます。できれば新しい録音で聴いてみたいけれど、全体にRavelより打楽器の効果が不足気味感じなのは残念でした。(3:47)
(2025年1月4日)
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Mussorgsky
組曲「展覧会の絵」(カイエ編1937年録音)
Dvora'k
チェロ協奏曲ロ短調 作品104(1946年録音)
ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団/グレゴール・ピアティゴルスキー(vc)
HISTORY 205236-303 10枚組2,190円のうちの一枚
オーマンディの「歴史的録音集」復刻なんて目の付けどころが渋すぎて、驚きの10枚組。しかも充分に安い。日本では人気は薄いはずだから、アメリカ辺りでは懐かしんで買う人も多いのでしょうか。ほとんどステレオ時代に再・再々録音があるレパートリーばかりで、「展覧会の絵」は彼の十八番でしょう。
で、流れてきた音楽を聴いて愕然としましたね。ちゃんと説明書きを読まないで買っているから、まさか「カイエ編」とは。(外箱にはその旨載っていない)いろいろな版で聴いてきたけれど、この版はウワサばかりでCDではもちろん初めてでした。これは希少価値。
静かな木管から始まるプロムナード、「グノーム」の多彩さはラヴェル盤を凌ぎ、古城前の吟遊詩人はオーボエで詩を語ります。「ビドロ」はオーマンディの真っ直ぐな表現のせいもあるが、速いテンポで突進します。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミーレ」における金管のしゃくり上げるようなこぶし、続く第5プロムナードの優雅な美しさ。
全体にラヴェル盤より打楽器がやや控えめだけれど、重量感・厚みも充分で、傾向としては似ている傑作。おもしろさはストコ版のライヴに匹敵します。録音が新しければ、目も眩むような輝かしい響きが堪能できるはず。(想像以上に聴きやすい音だけれど)オーマンディはケレン味がないというか、スッキリとした余計な飾りがなくて好感が持てます。
ドヴォルザークは音質がかなり良好。ピアティゴルスキーは1960年の録音(ミュンシュのバック)が有名だけれど、こんな録音があったことは知りませんでした。優雅で、まるで鼻歌混じりような節回しが軽快です。録音の加減か、低音が響かないが、威圧感がなくてよく歌って美しい。
バリバリと腕が鳴るようなテクニックだけれど、懐かしい民謡調の旋律はあっさりめに表現されます。ロストロの濃厚な味わいに慣れていると淡泊にきこえるかも。でも、流れはとても良い。オーマンディはいつもながら合わせものは得意で、オーケストラは抜群に上手くてソロにピタリと付ける。ま、上記「展覧会の絵」も含めて、このオーケストラは大昔から上手かったということでしょう。
同時期の録音である、トスカニーニ/クルツ(vc)盤に比べれば、たとえ技術的に完璧でも「歌心」が違います。この演奏には堅苦しさがありません。終楽章もノリが良くて楽しく聴けました。
一般に、とくに「展覧会の絵」みたいな曲は良好な音質で聴くほうがよろしいでしょう。でもねぇ、この価格でしょ?わざわざ選んで買うようなCDじゃないかも知れないが、出会ったのもなにかの縁。存分に楽しませていただきました。 (2001年3月30日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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