Orff 舞台形式によるカンタータ「カルミナ・ブラーナ」
(ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス/
ニュー・フィルハーモニア)


EMI CDM64328 Orff

舞台形式によるカンタータ「カルミナ・ブラーナ」

ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団/合唱団/ワンズワース・スクール少年合唱団/ルチア・ポップ(s)/ゲルハルト・ウンガー(t)/レイモンド・ウォランスキー(br)/ジョン・ノーブル(b)

EMI CDM64328 1966年

 人類の原始根源の活力を感じさせる声楽作品は大好き。言語意味不明でも熱はしっかり伝わります。出会いはレオポルド・ストコフスキー(←カットが多い)ヘルベルト・ケーゲル旧録音とか、エルンスト・ヒンライナー辺りの言及も残っておりました。ま、ド・シロウトな音楽ファンだからなんでも、誰の演奏でも良いようなもの。Rafael Fruhbeck de Burgos(1933ー2014西班牙)による若い頃の録音がたまたま目に付いたので、久々作品をしっかり堪能いたしました。分離よろしく音質極上、低音もよう効いております。オーケストラの技量、声楽陣も好調でした。

 声楽ソロに混声合唱+少年合唱、三管編成にティンパニ5台+多種多様な打楽器5人、チェレスタ、ピアノ迄含む大規模編成。「初春に」「酒場にて」「愛の誘い」の3部から成る大作(以上Wiki情報初演は1937年フランクフルト(Bertil Wetzelsberger ベルティル・ヴェツェルスベルガーによる。1892-1967独逸)。ゲンダイオンガクの類だけれど、旋律はわかりやすく、リズムは強烈、血湧き肉躍る名曲中の名曲に間違いない。

 「」として「全世界の支配者なる運命の女神」ここが一番有名なところ。ドカンと一発!フル・オーケストラに打楽器の低音ド迫力+合唱の絶叫が劇的なところ。怪しげな囁きとの対比は原始の粗野な世界を連想させます。以下、同じものすべて3回繰り返し(ストコフスキーは2回に省略/繰り返すことによって旋律リズムは耳馴染むもの)ややゆったりとした明晰な語り口に、オーケストラの切れ味も抜群、熱狂的な始まりは絶好調。

 第1部「初春に」は華やかな女声が主役。始まりはは小鳥の甲高い啼き声から開始して、「春の愉しい面ざしが」は静謐につぶやくような合唱が神秘のように抑制的。「万物を太陽は整えおさめる」は訳知り顔に説教臭いと記憶していたバリトンが優しく、切々と歌います。「見よ、今は楽しい」は楽しげな合唱がそっと軽快に歌います。「芝生の上で」はオーケストラによる、変拍子リズム剽軽な「ダンス」より開始。「森は花咲き繁る」は賑々しくも喜びにあふれた合唱が圧巻の力強い(やはり変拍子)リズム(ティンパニが決まります)そして静謐に優しい対比のみごとさ。「小間物屋さん、色紅を下さい」は女声ソプラノ二人+合唱による可憐にデリケートなところ。「円舞曲」はゆったりと落ち着いた管弦楽から始まって、やがて熱狂的な合唱へ躍動しました。そして「おいで、おいで、私の友だち」は囁くよう。第1部ラストは「たとえこの世界がみな」は華やかな金管ファンファーレから輝かしい合唱が締めくくりました。

 第2部「酒場にて」の主役は力強く朗々とした男声ソロでしょう。 「胸のうちは、抑えようもない」は雄弁なバリトン・ソロ。言葉はわからんでも題名と抑揚のみでその気持はしっかり伝わります。「昔は湖に住まっていた」の出足は高音ファゴットですか?テナーのファルセット?はなんとなく妙なテイスト(ほら話ですか?)に勇壮な男声合唱が追いかけます。それをヒステリックなオーケストラがストップ。「わしは僧院長さまだぞ」には再び立派なバリトン登場、これが滅茶苦茶雄弁!合唱の合いの手も鋭く衝撃的。ラストは「酒場に私がいるときにゃ」男声合唱による切迫した盛り上がりとなりました。この辺り打楽器のド迫力もリアル。この第2部は上出来でっせ。

 第3部「愛の誘い」は女声ソロ男声ソロ大活躍。「愛神はどこもかしこも飛び回る」はソプラノと少年合唱によるメルヘンかつ神秘な囁き。youtubeにこの部分から始まるフラッシュモブがあって、痺れましたよ。「昼間も夜も、何もかもが」はバリトン独唱だけど、これもファルセット多用して特殊な、静かな効果を上げております。「少女が立っていた」はそのままの静かな流れのソプラノ独唱。ルチア・ポップの声は思いっきり可憐です。「私の胸をめぐっては」は切々としたバリトンソロに、きらきらとした管弦楽と合唱の男女対話が絡んで輝きます。オモロいリズムですね。「もし若者が乙女と一緒に」はテナー3人、バリトン、バス二人のみ伴奏なし。「おいで、おいで、さあきておくれ」はノリノリの男女合唱の掛け合いとなります。「天秤棒に心をかけて」はしっとりソプラノの幻想的ソロ。どんな意味なのでしょう。「今こそ愉悦の季節」はソプラノ、バリトンに合唱+少年合唱団が元気よろしく徐々にテンポアップして、アツく躍動いたします。種々打楽器が(カスタネットが際立って)多彩に効果を発揮しております。

 「とても、いとしいお方」はコロラトゥーラ・ソプラノによる愛の讃歌でしょう。「白い花とヘレナ〜アヴェ、この上なく姿美しい女」は雄弁で華やかな合唱。そしてエピローグ「全世界の支配者なる運命の女神」は万感胸に迫る冒頭の衝撃再来して締めくくりました。最高。

(2022年4月24日)

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written by wabisuke hayashi