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指令:苦手Beethoven を克服せよ


 クラシック音楽とやら呼ばれるジャンルは、小学校4年生から熱心に聴いていたから既にん10年か。初めて自分のお小遣いで買った30cmLPは「運命」「合唱」〜オーマンディ/フィラデルフィア管(CBS/SONY二枚組2,500円)だったから、Beeやんとも長いつきあいとなります。そういえば4歳上の兄が「悲愴」(バックハウス)「月光」(ゼルキン)の17cmLPを持っていた記憶もある。

 子供だったから、(横で聴いていても)即旋律を覚えちゃうのね。集中力が違うのかな?子供って、飽きもせず同じ曲ばかり聴くじゃない。それがたまたまこんな音楽だっただけかも知れません。「Beethoven ったら、そりゃ交響曲でしょう」という時代(今でもか?)だったから、全9曲の克服に励みました。その辺り、一度サイトにも掲載しました。(その後、まだまだ在庫増状態)いずれにせよ、ていねいに、大切に聴いてきたつもり。

 ところがね、前回阪神が優勝した辺り(1985年)からかな?Mozart を急速に愛するようになって、それ以来Beeやんがどうも重い。鬱陶しい。悪いけどもう少し静かにしてくださる?さあ、もっと笑顔でさ、そんなに四角四面に頑張らなくってもいいじゃない〜そんな感じ。ちょっと、精神充実している時じゃないと、ツラくて聴いていられないよ。

 それでもね、たくさん音楽は聴いてきました。ジンマンの軽快なリズム、シェルヘンの激しい大爆発、ハノーヴァー・バンドの素朴な味わい、マッケラスの清楚な世界も悪くない。ああ、ブロムシュテットの全集もちゃんと買いました。その後、シューリヒトの歴史的ライヴ(VIRTUOSO 5枚組 8番抜け)やら、アーベントロート(5曲)、朝比奈翁の(大阪フィル1985年)だって第1〜5/8番迄ある(安かったから)。第9番「合唱」もたっくさん買ってあってまとめて真面目に聴いてます。(その後、加速度的にCDは増えているが)

 正直に告白します。その後、歴史的録音ボックスが激安で出たでしょ?ほとんどBeeやんの交響曲が含まれるが半分以上避けて通っている(つまり未聴)と思います。単発のCD購入在庫はその存在さえ忘れがち(じゃ、買うなよっ!て?だって、ムラヴィンスキーの東京ライヴ(第4番)が@250でっせ。これはすばらしい緊張感だった)。が・・・

 嗚呼、日々どんどんBeeやんが苦手になる。で、ある日、以下のようなSOSを拙掲示板に告知しました。


●林 侘助。 題名:誰か!助けてくれ

ネタも煮詰まってきたので・・・ワタシ、Beethoven アレルギーが悪化しちょります。そうだな、ヴァイオリン協奏曲+ロマンス二曲、エリーゼのために・・・こんなもんかな?ああ、七重奏曲OKね。ほか、有名なる交響曲とか聴くと、疲れ果て、もう音楽はしばらくいいや・・・となっちまいます。

どなかた!「嗚呼!Beeやんって素晴らしいぜ」とアツく語って下さる人、切に募集。

 ウチのBBSに集う人々は皆善男善女ばかり・・・さっそく反応が!

Res:H 題名:ベートーベンならKempe全集をお聞きください!

ケンペさんのベートーベンは清涼にして透明。実は私も第九を聞くたびに、交響楽パートが「つまらん」と思っていたのですが、先日入手したケンペの全集収録の9番を聞くと、これが細部まで丁寧に色づけされていて、とても心地よいのです。特に3楽章、こんなに美しいアダージョ、他にありますか、と思います。4楽章の合唱も緻密で伸びやかであります。人生の歓喜に浸ること、間違いありません。是非、騙されたと思ってお試しを…。

 この全集は、出色の出来です。5番、6番(Hayashiさんが図書館CDで聞かれたもの)、3番も素晴らしい。続けて聞いても私は飽きません。

Res:C 題名:私はBeethoven の若い頃の作品が好きです

Beethoven の作品の中で、各ジャンルの第1番とつくものは、いずれもいい曲。 ピアノソナタ、ピアノ協奏曲、弦楽四重奏曲、交響曲、チェロソナタ、ピアノ 四重奏曲、弦楽三重奏曲、etc. 中には作曲年代を逆転して番号をつけている彼。 まぁ、第1番に限らず、若い頃の作品を取り上げて聞いてみると、う〜ん、 いいなぁ。若さの輝きかなぁ。(中年の感慨)

Res:S 題名:クラシック・ディスクのなかで

たぶん一番聞いた回数の多いディスクはC・クライバーの運命とG・グールド の熱情。 私じゃ説得力ないかしら・・・


 〜おおっ!「若い頃の作品を」という有力情報もあったが、イマイチ趣旨にそぐわない(勝手にそう判断)という感じも・・・それで

Res:林 侘助。 題名:国際救助隊はまだ来ない

強面じゃないこと、威圧感がないこと、強制されないこと、旋律がセクシーであること。カタのチカラが抜けていること。自然なノリがあること。ある意味クールであること。1960年代型「人生の矛盾はオレひとりが背負う」的決意を持って名曲喫茶の片隅で眉間に皺を寄せていた〜ものとはいっさい縁がないこと〜そういう方向でお願います。

Res:N   題名:単純に

15番の田園ソナタが好きです。
いつも助けられる、この曲に。
アシュケナージのしか持ってませんが どなたのでもいいと思います。

Res:K  題名:そういうときには

お好きなZinmann盤しかないっしょ!

Res:J 題名:私の師匠の受け売りですが、

ベートーヴェンが自分の恋人に送った熱いラブレターの中に書いてあったそうなのですが、交響曲第2番の2楽章は恋人の事を描いた音楽で、4番の2楽章は自分の恋の告白だそうです。そして最後にベートーヴェンの愛が行き着いたのはあの世界一美しいメロディーといわれている、第9の3楽章という事だそうです。

この事を知ってから、師匠はこの曲に対する考えが変わったそうです。

その話を聞いてから、私ももう一度ベートーヴェンを聴き直してみましたが、私はやっぱり2番4番は眠くなりました・・・。おそまつ様でした。


 いろいろと切り口はあるもんだね。精神論とか、純粋に「コレを!」的助言とか。

Res:C 題名:よくできた方を上に(^_^;)

昔、習字(書道?)の時間に、2種類提出しなさい、などといわれると、 自分でよくできたと思う方を上にしたりしませんでしたか? 「春」はこっちのほうがいいけど、「風」はこっちのほうがいい、 なんて悩んだりして。

Beethoven も、交響曲やピアノ協奏曲など、2曲ほぼ同時に作曲した ときは、自信のあるほうを第1番にしたみたい。必すしも作曲年代 順じゃなくてね。これって、習字の作品提出みたいで、思わず親しみ を感じません?(^_^;)>poripori

Res:B 題名:真夏に鍋焼き

暑苦しいベートーヴェンには暑苦しい演奏を。
定番フルトヴェングラーを 正座して聞きましょう。心で聞けば何かが見えます。聞こえない音まで 聞こえてきます。クラクラします。それもまたよし。音楽が聞きたくなく なれば暫く音のない世界で瞑想するもよし。聞きたくなくなることを 恐れてはなりません。「運命」を聞きませう。「エロイカ」を聞きませう。 その際に1947年の○○...とか選ばないこと。1度限りの演奏を何度も 繰り返さなくたっていいわけです。目をつぶってエイヤっ!

どーしても涼しいのがよろしければ、カメラータから出ているウィーン・ ハイドン・トリオの三重奏に編曲されているところの交響曲第2番を どうぞ。眠くなったら我慢せず寝ましょう。それが明日の活力に(爆。

Res:H 題名:注文の多い人だなぁ

「チカラが抜けて自然なノリ」を御所望であらば、ピアノソナタ31番。晩年の曲ですから、直角さまとは反対のアプローチです。不思議とベートーベンにしてはオタマジャクシが少なく、「間」がある曲、侘び寂びの境地か。第3楽章のAdagioはセクシーでっせ。続くFugaは、「え?!バッハでしょ?」と思うような曲想。いつもの自信満々のベートーベンとは別の、孤独で不安なベートーベンがいるように思います。

 私の保有盤はGilelsですが、Hayashiさん、ブレンデル盤をお持ちじゃない!


さらには「開き直りのような」助言が!

●SH 題名:そんなに??

hayashiさん、無理してベートーヴェン好きにならなくてもいいのでは。 ある日、突然好きになるかもしれませんよ。
ひとりくらい、ベートーヴェン拒否者がいてもいいのでは。
今のうちに、マーラーなどの厚い音を存分聴いて下さい。
人間は歳をとるにつれて、音の聞こえる幅が狭くなり 学生時代に感動した音楽でも、晩年になると、うるさく感じたりするそうです。 それから、頭&体が疲れてる時、暑い時にベートーヴェンはいけません。

hayashiさんには、刺激が強すぎます。ますます遠い存在になるだけです。 まあ、特効薬あるとすれば、CDではなく、 ナマで、超名演奏に遭遇する事でしょう。

で、ワタシの結論。

Res:林 侘助。 題名:多種多様なご指導に深く感謝します

「人間は歳をとるにつれて、音の聞こえる幅が狭くなり」の辺りが少々気になるが、「気にすることはない」「逃げないで真正面からとことん向き合って集中しろ」「初期作品がピタリ!」「いえいえ晩年の清明な境地が」「具体的にはこの曲が」などなどの暖かいお言葉、嬉しく思います。

世評高い名作であること、事実として多くの人々に愛されていること、自分もずいぶんと聴いて、かつて感動していたこと、手許にもたくさんのCDが存在すること。ナマ演奏でも出合う機会が多いこと。できればワタシはBeethoven と和解したい、という思いでいっぱいです。


・・・さらに助言が追加。嬉しいね。

●JJ 題名:メロディメーカー ベートーヴェン

ベートーヴェンの曲で、重厚だったり、「無理やり励まして」くれたり、 「ドラマ」を感じさせたり・・・ということのない、等身大の曲で 心身が疲れているときにも「沁み込んで来る曲」となりますと、 意外なのですが、晩年のピアノ・ソナタの31番作品110をお試しください。

まず「短い」というのもあるのですが、「寄り添う」曲です。
ただ、ピアノ・メゾピアノの細やかな響きのコントロールが弾き手に要求されるので、 (モーツァルトと同じく)誰ということはないですが、 「上手なピアニスト(←額面どおりの意味)」でお試しください。

たぶん、ベートーヴェンって、ある意味、他の作曲家よりも、 生涯を通じて、作風・形式が、激変ないし変動した人のような気もしますし、 同時期でも、かなりバリエーションがあると思います。

交響曲やミサソレミニスでも、案外、クレンペラーや「歴史的録音」が 人気なのは、ひとつには、要素の多い曲の「聴き所」の焦点を聴き手に 予め、ハッキリ絞って提供しているからかもしれません。


 ・・・・で。さっそく、助言に従って聴き始めました。

ピアノ・ソナタ第15番ニ長調作品28「田園」〜バーナード・ロバーツ(NIMBUS NI1774 10枚組 3,390円 この曲は1985年録音)

ピアノ・ソナタの全集はコレしか持っていないんです。(一枚物は沢山有)ああ、これはSchubert の世界だね。よく歌って、静かな味わいが快い。ロバーツは録音に音の芯が不足(これはNIMBUSの責任)したり、細部が甘かったり、音色に少々クセがあったり、で、敬遠していたCDだけれど、この演奏には違和感は存在しない。

チェロ・ソナタ 第1番 ヘ長調 作品5の1〜クルステフ(vc)/ヴォデニチャロフ(p) (BRILLIANT 99117  たしか200円)

軽快でMozart の躍動感に近い。そのBeeやんも親しげなる表情か。KRUSTEVという人は、調べがつかなかったが、ブルガリア辺りの方か?明快なる技巧と表情はまったく素晴らしい。

ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ニ長調 作品12の1〜ヴェルヘイ(v)/ムールダイク(p) (BRILLIANT 99113  たしか200円)

これはMozart だ。屈託のない、明るい旋律が時に暗転して陰りを見せる妙。第二楽章の変奏曲の楽しさは一聴に値します。こんな晴れやかなBeethoven もいるんだね。ライヴでした。いつもながら微笑んだようなヴェルヘイの清潔かつセクシーな音色を堪能。

交響曲第5番ハ短調 作品67〜朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー (JVC VDC-1〜4 4枚組1,250円中古で購入したウチの一枚。1985年大阪シンフォニー・ホール・ライヴ)

39:55で一枚収録の贅沢品。コレ別に「真夏に鍋焼き」という意味ではありません。たまたま買ったきり聴いていなかった記憶があるので、新しい、そして馴染みの指揮者(もちろん故人だけれど)でBeethoven を、という意。オーケストラが薄い、アンサンブルが緩い、ずばり上手くない。テンポは急(せ)かない、間もタップリ〜結果、威圧感のない演奏に仕上がっていて、聴いていてツラくない演奏でした。いえいえ皮肉じゃなく。けっして嫌いな演奏じゃないですよ、妙に親しげ。そして誠実。

 こうして新たな音楽への目覚めは続いていくのであった(続く)。 

(2003年9月23日 頭痛明けの朝に)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi