Beethoven /Brahms ヴァイオリン協奏曲(ヌヴー)


MUSIC  &  ARTS CD-837 Beethoven

ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
ロスバウト/南西ドイツ放送交響楽団

Ravel

ツィガーヌ
ミュンシュ/フィルハーモニック交響楽団

Brahms

ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
ドラティ/ハーグ・レジデンティ管弦楽団

Chausson

詩曲 作品25
ミュンシュ/フィルハーモニック交響楽団(以上1949年録音)

ヌヴー(v)

MUSIC & ARTS CD-837  2枚組1,200円で購入

 佳人薄命というか、1949年の飛行機事故で、わずか30歳という若さで亡くなった女流ヴァイオリニスト。当然ながら録音は少なくて、本格的に聴いたのは今年2000年このCDが初めてでした。すべて亡くなる年の録音。音質それなり。

 Beethoven の作品中、屈指の名曲であるヴァイオリン協奏曲。つい先日もシゲティ爺さんの技に痺れたばかり。これは亡くなる約一ヶ月前の9月ライヴ録音で、残響少な目ながら音の状態は悪くない。ロスバウトのバックが立派で、堂々たる序奏は聴きもの。響きに芯があって、しっかりとしたアンサンブル。

 ヌヴーのヴァイオリンは、やや細身でヴィヴラートも爽やか、ノビノビと歌心に溢れて美しい。テンポがほんのわずかずつ次々と揺れ、細かいニュアンスが旋律に込められています。繊細で自由で、なんども聴きたくなる。ま、先入観もあるんでしょうけど、色気(女性の、とか言う話しじゃなく)を感じます。シゲティとは、またずいぶんと違う世界。

 43分以上かかっているから、早いほうのテンポではありません。雨上がりにお天道様が覗いているような、しっとりとして晴れやか、旧い録音であることを忘れさせてくれます。

 ミュンシュとの2曲は、オーケストラの実体がよくわからない。「詩曲」はドブロウエン/フィルハーモニアとの1946年録音とは別のはず。「ツィガーヌ」は、官能的で土俗的、躍動感溢れる名曲。ヌヴーの自在なヴァイオリンはいきいきとして、観客の拍手も熱狂的。「詩曲」も、瞑想的な旋律が映える名演奏。

 Brahms は、音質的にBeethoven より落ちます。SP復刻からノイズを取り除くとき、もっと大切なものまで取り去ってしまったような味気なさ。ハーグ・フィルも(録音のせいか)響きが薄い。ヌヴーのソロは変わりません。静かに深呼吸するように、推進力と、細部の彫琢が両立していて、音の条件はやがて気にならなくなる。第1楽章終了後、感極まった聴衆の拍手が聞こえます。

 古今東西、ヴァイオリンの名人はたくさん存在します。新しい録音で、技術的にも充分、美音したたるようなCDも簡単に手に入る。でも、こんな大昔の録音も捨てたもんじゃない。時空や悪条件を越えて、音楽の素晴らしさを教えてくれました。

 その自在な節回しから発散されるセクシーさ。あくまで爽やか、背筋が伸びたような自然な呼吸。「人工的なニュアンス」ではない、もっと天性の歌心が溢れていて、若々しい。ウワサの女流の実力はかなりのものでした。

 そういえば手元の、シベリウスの演奏もなかなか良かった。(ススキンド/フィルハーモニア管。1946年録音。DUTTON CDEA-5016)騙されたと思って、買って下さい。(但し、このCDも含めて、即手にはいるかは運次第。1994年発売)

(2000年11月3日更新)


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written by wabisuke hayashi