Mussorgsky/Ravel 編 組曲「展覧会の絵」/
交響詩「禿山の一夜」(マルコム・サージェント/ロンドン交響楽団)


http://boxset.ru/hd-transfer-from-dvd-19224-everest-m-mussorgsky-pictures-sargent/ Mussorgsky

組曲「展覧会の絵(Ravel 編)
交響詩「禿山の一夜」

マルコム・サージェント/ロンドン交響楽団

EVEREST 1958年頃録音 BOXSET.RU よりダウンロード

 1970年前後、コロムビア・ダイヤモンド1000シリーズの懐かしい廉価盤LP。じつはEVEREST原盤の優秀録音であったことなど、当時誰が知っていたでしょうか。その頃、カラヤン/ベルリン・フィル(1965年録音)超スローテンポ、艶々のオーケストラの響きに話題騒然、サージェントは既に亡くなっていたし、往年の名指揮者・英国紳士は日本ではさっぱり人気がなかったんです(おそらく現在でも)。こうしてネットから自由に音源をダウンロードできる時代になるとは・・・感慨無量。自主CD化するにあたってネットにて情報検索をしたが、まともな言及は(馴染みの)山本さんのみ。LPにて聴かれたんでしょうか。ワタシは初耳でした。

 かなりの優秀録音。鮮度と奥行き、広がりは充分だけれど、全体の響きはやや薄い印象有。これが自然なのかも知れません。各パートの音色の違い、存在感は明確です。冒頭のトランペット(途中のプロムナードでも)ちょっぴり不快な揺れがあって、元テープ(フィルム?)に劣化があるのかもしれません。それともリアルにそんな表現なのかも。テンポ設定は中庸〜速め。ロンドン交響楽団は快調だけれど、テンションをムリムリ上げたり、雄弁な節回しを駆使したりせず、淡々、ていねいな仕上げにて音楽は進みます。「古城」に於けるサキソフォーンも、「ビドロ」の深刻な歩みもさっくりとして官能や粘着質ではない。

 「卵の殻をつけた雛の踊り」は繊細に表現されており、「シュムイレ」の超絶技巧トランペットも無難にこなしました。1947年のロンドン交響楽団はかなり危うかったですよ。「サムエル・ゴールデンベルク」はさほどに貫禄なし。「リモージュの市場」にサワサワとした空気が流れて爽やか、アンサンブルの質も高い。「カタコンベ」に於けるトロンボーンも荘厳として味わい深い。ここの音場は素晴らしいですよ。

 「死せる言葉による死者への呼びかけ」の囁きはデリカシーに充ち、「バーバ・ヤーガ」の炸裂との対比はお見事。もっと打楽器駆使して大爆発しても良いんだけれど、この辺りが英国紳士の抑制なのでしょう。迫力とキレ、やや不足。それはラスト「キーウの大門」も同様であって、もっと大見得を切って欲しいところだけれど、端正な姿勢を崩さぬサージェント(ここでも音揺れ有)。音量が上がっても熱狂に至らない。

 山本さんは、「なんとなく古めかしさ感じさせる」とコメントされたが、サージェントの録音って、どれも「古めかしい」感じはあるんです。リズムのキレとかノリ不足なのかな?ラストはかなりルバートでタメた表現となってクライマックスへ。1958年(辺り)でこんな音質だったら仰け反りますよ。

 交響詩「禿山の一夜」は、おそらく前曲より出来がよろしく、決まっております。いまや滅多に聴かぬ作品(馴染みのRimsky-Korsakov 編)だけれど、テンポの動きも自然であって、久々新鮮な気持ちにて拝聴いたしました。作品そのものが現在ではちょっと時代遅れっぽい雰囲気満載であって、サージェントはヴィヴィッドに余裕の指揮ぶり。

(2011年6月10日)

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written by wabisuke hayashi