Mussorgsky 組曲「展覧会の絵」/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲/
「ラ・ヴァルス」(J.C.カサドシュ/ロイヤル・フィル)


RPO RPC-108 Mussorgsky/Ravel 編

組曲「展覧会の絵」

Ravel

バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
ラ・ヴァルス

ジャン・クロード・カサドシュ/ロイヤル・フィルハーモニー

RPO RPC-108 録音年不明 315円(新品)にて入手

 どんな小さなレコード屋(いまはなんとお呼びすれば・・・)にも、ホームセンターのかごの中にも、オークション業者の出品点数嵩増しにも使われる音源。いわゆるロイヤル・フィルの自主音源であって、指揮者が明記されないものもたくさんあります。あちこち貸し出されて、廉価盤の音源として流用される機会も多いでしょう。時代は既に”データ”が主流になっていて、CDというのは急速に売れなくなっております。こういった音源をしっかり記録してあげるのも、長年お世話になった音楽CDに対する敬意のつもり。4年前の入手だけれど、現在ならおそらく手は伸びない。その気にならない。

 録音年は明示されないディジタル録音であり、鮮明を誇っております。奥行き広がり、管楽器の定位の良さ、打楽器の自然でリアルな迫力、どれをとっても文句なし。肝心の演奏は、素直さも極まった、といったクセのないもの。オーケストラのキレ、迫力、技量に不足はないが、「グノーム」「ビドロ」など低音が活躍するところでの”タメ”が足りない。「カタコンブ」に於けるコラール風金管の旋律もクリアだけれど、素っ気ないほどストレートで正確そのもの。

 こういったCDは初心者向けなんだろうから、これは充分なる価値でしょう。原曲を考えると、もっと旋律にたっぷり味付けしても良いのだろうが、繊細と洗練がちゃんと存在して、けっして場違いな解釈ではない。「死せる言葉」はさらさらと流れ、「バーバ・ヤーガ」は節度を以て爆発し、物足りないと言えば物足りない。響きは濁らない。ロイヤル・フィルの金管って、もっと激しかったでしょうが。充分上手いけど。

 ラスト、クライマックスの「キーウの大門」も朗々と鳴り響いて、整ったアンサンブルに文句はないが、何かが足りない。脳裏にはストコフスキー(ライヴのほう)の”やりたい放題”が懐かしく木霊しました。でも、こんな演奏を好む人はいると思います。

 「展覧会の絵」もそうだけれど、Ravel もオーケストラの技量が問われる作品です。結論的には、精密精緻に仕上げられた作品を、細部まで丁寧に仕上げて下さって、しかも音質極めて鮮明。足りないのは”香気”と”色彩”でしょうか。(とくに「ダフニス」)「ラ・ヴァルス」はかなりのメリハリで、派手にどんちゃんやって下さって迫力充分だけれど、この作品には退廃とか、ぞっとするような色気+粋が欲しいところ。

 日常聴きには充分なる品質を誇る一枚。価格にも文句はない(中古ではなくて、通常価格ですから)。でも、ワタシはずいぶん遠いところに来てしまいました。

(2009年5月22日)

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written by wabisuke hayashi