鶴田 静 「田園に暮らす」

文春文庫+PLUS文庫 2001年発行/写真エドワード・レビンソン

 最近、先端医療ものなんかを熟読していて、そのあまりの(精神的)重さ故、サイト執筆など思いも寄らない・・・で、美しい写真一杯の一冊を、ということで購入したもの。おそらく団塊の世代じゃないのかな?ダンナはやや年齢(とし)下の英国人カメラマン。房総半島の丘陵地に住まいするヴェジタリアンだそうです。

 農耕生活、田園風景、センス溢れる住まいのデザイン、野趣溢れる料理・・・レビンソンさんの写真には、目もココロも洗われるような思い。鶴田さんは1970年代に英国に渡り、共同生活と菜食主義と出会い、帰国後、自然食材の食堂の経営に参加したり、翻訳や文筆業をされていたなかで、現在のご主人と出会ったとのこと。

 あとは生まれ育った東京から、田園風景豊かな房総半島へ・・・家を改装し、土を耕し、ご近所と馴染み、友人を招き、チェルノブイリの被害を受けた子供達を招き・・・ワタシは、その素晴らしき生き方に賛辞を惜しみません。

 でもね、ワタシは都会育ちだし、たまに遊びに行くのならともかく、田園地帯(厳しい自然条件もあることでしょう)に暮らすことはできないでしょう。(ウォシュレットもないだろうし)硬派の菜食中心生活も出来そうにない・・・肉はそんなに好きじゃないけど、魚は止められない。原発には賛同しないし、環境問題にも気を付けているつもりだけど、自らの生活を律してまで行動しよう、とは思いません。

 ひたすら美しい情景に、しっかりとした”自分の生き方”を貫く姿勢に感動します。若い頃には、仕事厳しさや人間関係に嫌気がさして、「人里離れたところに隠棲したい」なんて考えたことはありますよ。そのうち、田舎は田舎なりの不便さとか、都会よりいっそう難しい人間関係が理解できるようになって、そんな安易な思想は捨てました。

 でもね、インターネット時代になったでしょ。空気や水のきれいなところに住むのも、悪くない時代になったかもね。問題は”生活の糧”ですよ。この著書の筆者であるご夫婦は、ちゃんとそこをクリアしているんでしょう。夢を与える本だから、そこにはあまり触れなかったんでしょうか。若い人はこんな生活にあこがれて家を飛び出しちゃう・・・そんな元気も(おそらくは来るべき挫折だって)うらやましく思えます。

(2005年7月3日)


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