Mozart ピアノ協奏曲第21/1/25番
(デレク・ハン(p)/ポール・フリーマン/フィルハーモニア管弦楽団)
Mozart
ピアノ協奏曲
第21番ハ長調 K.467
第1番ヘ長調 K.37
第25番ハ長調 K.503
デレク・ハン(p)/ポール・フリーマン/フィルハーモニア管弦楽団
BRILLIANT 99321 1992年録音 40枚組9,500円で買ったMozart MasterWorksの一枚。
我らがヴォルフガングのピアノ協奏曲集は宝物です。ダニエル・バレンボイム(旧録音)、イェネ・ヤンドー、アンネローゼ・シュミットの各全集、他単品CDをずいぶん処分したつもりだけれど、その後追加購入したものも含め5種類の全集が棚中にあって、日常座右の愛聴盤に間違いはない。(ゲザ・アンダ全集は盤質が劣化してしまって廃棄/残念)デレク・ハンの全集を手許に残したのは、どーせ知名度低くて売れんだろうね、と類推したこと+演奏に愛着があったから・・・ヤンドー、シュミットにも(処分にあたり)執着ないではなかったんだけれど・・・閑話休題(それはさておき)
デレク・ハンは1957年生まれ(ワタシと同い年だ!)中国系アメリカ人であり、リリー・クラウスの弟子筋とのこと。ポール・フリーマンは1936年生まれ、英国のヴェテランです。NAXOSで検索すると、ちょっとマニアックな録音目白押しですな。ジミでウェット、しっとりとした落ち着いた味わいのピアノであります。ロンドンの聖オーガスティン教会での録音は、残響豊か(過ぎ)であり、自然で聴きやすいが、やや曇ったサウンド印象がいっそうその個性を助長します。
オークションでのCD処分はいったん休止しているが、一度だけ送付後「国内盤じゃないのか」と叱られたことがありました。日本製品への信頼、そして解説が必要だったのでしょう。ワタシは最低限の情報〜作品、演奏者、録音情報(これが抜けていることが多い)さえあれば、ほかはなにも要りません。ネット時代になって、作品情報は検索できるようになったし、演奏者も同様、太鼓持ち的演奏評論解説などジャマになるばかり。でもね
協奏曲には「カデンツァ」情報が欲しいんです。アフレッド・ブレンデルの旧全集にはちゃんと作曲者のコメントがありました。このデレク・ハン盤、チャーミングなハ長調 K.467協奏曲第1楽章では、交響曲第40番ト短調の第1楽章の哀しい旋律が密やかに登場して驚かされました。誰の作曲なんだろう?落ち着いて沈静した味わい、適正で中庸なテンポ設定、浮き立つようなリズム感ではないが、自然な、優雅なノリはちゃんとあります。
第2楽章「アンダンテ」の優しさ、床しい浪漫は、ここ最近古楽器を聴く機会が多い耳には、少々甘美が過ぎる陰影有。終楽章のバランスの良さも特筆すべきデリカシーと流れの良さ。平明で素直、薄もやがかかったような爽やかな空気を感じるピアノ。
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CDの収録は80分弱だから、どの作品と組み合わせるか、編集者の腕の見せ所。シンプル素朴なヘ長調 K.37協奏曲は、先ほどの感傷的な作風とはずいぶんと異なる世界です。(編曲ものだそう)可愛らしく、夢見るような作品を、しっとり、瑞々しく(色気充分に)表現して、安らぎの16分であります。あちこち、名残惜しげなる”立ち止まり”ちゃんとありますよ。11歳にして、例の”暗転”がちゃんと存在する。
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ハ長調 K.503は、スケールの大きな難物です。無条件幸福Mozart 作品中でも、最近までちょっと苦手にしていた・・・大柄で大仰なる作風。これも、古楽器系の溌剌たる演奏ですっかり開眼済。ここでのデレク・ハンはかなりゆったりとしたテンポで、いっそう(作品の)スケール感を強調しているように聞こえます。リキみはないから、違和感やら反発はないけれど、残念ながら嗜好ではない。
全集に於けるポール・フリーマンのオーケストラは、目立たず、クセがなく、伴奏に徹して個性を殺していると感じます。ここではかなり雄弁であり、ザ・フィルハーモニアは美しいし、アンサンブルの破綻もないけれど、遅めのテンポが少々緊張感を削ぐ場面がある。(ソロとの関係で)第2楽章「アンダンテ」の木管の歌に酔いしれる(終楽章も同様だ)けれど、ほんのちょっぴり、ウェットが過ぎて重い印象がありました。
終楽章は立派ですよ。淡々として、洗練され、練り上げられたピアノ。完成度の高い演奏だけれど、表現として”旧態”(あくまで嗜好として)であって、作品に新たな切り口を与えてくださるものではない・・・勝手な言い種でした。 (2009年9月25日)
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