Mozart ピアノ協奏曲第21/24番
(ハワード・シェリー/シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア)


PRCD-1289
Mozart

ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467
ピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491

ハワード・シェリー(指揮とピアノ)/シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア

TRILUDAN(日本ビクター/CarlTON原盤)  PRCD-1289 録音年不明   100円で購入(中古)

 イギリスの指揮者兼ピアニストであるハワード・シェリーには膨大な録音が存在します。(主にCHANDOS)この2作品もロンドン・モーツァルト・プレイヤーズとの再録音が存在しますが、こちらのCDも現役です。録音情報は不明ながら優秀録音。鮮明で暖かい音質が楽しめます。ワタシはMozart に対して無条件なる愛情を捧げているので、見かければ必ず買う!そんなこんなで手に入れた一枚なんです。なんせ100円(税抜)だったし。

 指揮者としてのシェリーは、Beethoven のピアノ協奏曲全集(マイケル・ロール/ロイヤル・フィル GALA20.3318-GA )を聴いた時、「ああ、Mozart みたいに軽快な演奏」という印象がありました。「弾き振り」です、コレ。例えばアンダ全集なんかが有名だけど、あのカメラータ・アカデミカ・ザルツブルクのアンサンブルは、あまりいただけませんでしたね。シェリーはオーケストラのコントロールも一流ですね。シティ・オブ・ロンドン・シンフォニアの技量がどれほどかは知らないけれど、どのパートも生き生き、瑞々しい響きが溢れました。

 このピアノはなんと表現したらよいのかな?技巧に不足はないし、細部までよく描き込まれた演奏。軽やかで、柔和で、笑顔が晴れやか。ほっかりと暖かく、ふっくらと清潔なる音色。表現方向として浪漫的な色付けじゃないんです。しかし、素っ気なさとは無縁、ほのかな味わいが、ここ彼処(かしこ)に広がって、部屋中に馥郁たる香りが充満します。

 第2楽章「アンダンテ」〜「短くも美しく燃え」(美しい邦題だ)の旋律〜慈しむような入念なるデリカシー。透明な心境。ソロもバックも、夢の世界に遊ぶかのような、無垢な時間が流れました。

 デモーニッシュな表現も可能なハ短調協奏曲だけれど、そっと控えめに、やさしく、激高の欠片も見あたりません。華やかではないが、可憐なんです。歌い口が大仰じゃなくて、自然体でどこまでも流れがよろしい。悲劇の激情ではなく、秘めたる嘆き。チカラ強さを強調しない。叩き付けない。陰影があって、微妙な表情の変化は続きます。切なさ、哀しみは深化し続けます。「ピアノと管弦楽のための協奏曲」ながら、両者がここまでピタリとバランスしている事例とは、滅多に出会えないでしょう。

 繰り返すが、極上の録音バランスであって、適度な残響がありながらピアノは芯をしっかり感じさせ、バックと融合します。ワタシは所有のCD演奏に順列など付けたことはない(ましてや、すべてが素晴らしいMozart !)が、まちがいなく胸打たれる一枚であることを認めましょう。今日だけでなんど聴いたことか〜その度に新しい発見がある。(2004年5月21日)

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written by wabisuke hayashi