Mozart ピアノ協奏曲第13番ハ長調K.413(ランドフスカ)
第14番 変ホ長調K.499(ゼルキン)


Mozart  ピアノ協奏曲第13番ハ長調K.413(ランドフスカ)/第14番 変ホ長調K.499(ゼルキン) HISTORY 205164-302 40枚組6,590円で購入したウチの一枚 Mozart

ピアノ協奏曲第13番ハ長調K.413

ワンダ・ランドフスカ(p)/ロジンスキー/ニューヨーク・フィル(1945年ライヴ)

ピアノ協奏曲第14番 変ホ長調K.499

ルドルフ・ゼルキン(p)/ブッシュ/ブッシュ室内管弦楽団(1938年)

HISTORY 205164-302 40枚組6,590円で購入したウチの一枚

 必ずしも最上の音質条件ではないにせよ、歴史的録音はその個性やら価格的な優位さ(なんせ著作権切れだし)によって、聴く機会も、楽しめることも多いんです。メジャーで著名で、できるだけ新しい録音・・・ワタシは、あまりそんな条件にはこだわりませんね。それに「音質」というのはクセものでして、一般的には評価低い音質も、体感上ではずいぶん聴き易かったり、その逆の場合もあるんです。この一枚は、当然前者(というか、聴いているウチに音質を忘れちゃう)。既に話題にもならない録音だろうが、すっかりココロ奪われました。

 ワンダ・ランドフスカ(1979-1959)は現代(大型)チェンバロ(プレイエル社)演奏復興(教育)に功績のあった人で、Bach 原典演奏の嚆矢になった一人〜ま、かなり盛大に鳴る金属的大音量のチェンバロではあるけれど、未だにその録音は現役であります。同時に名ピアニストとして現代にその名を残しているのは周知の通り。以前に第26番ニ長調K.537「戴冠式」(ワルター・ゲール/室内管弦楽団1937年)を聴いたこともあったが、このハ長調協奏曲には少々驚きましたね。

 「Bach 原典演奏の嚆矢」というくらいだから、古典的キリリとしたスタイルを想像していたら大間違い!ずいぶんと浪漫的で、思い入れたっぷりの〜素敵な演奏でした。ロジンスキーらしい強靱快速な前奏が始まって、いきなりの思い入れたっぷりスロウ・ダウン+タメのソロ登場。玉を転がすように流麗、かつ清潔なピアノはまことに気持ちがよろしい。ロジンスキーも(いつになく)優しくランドフスカを包み込みます。

 賑々しくも晴れやかな表情はノリノリ。時に登場する”タメ”と”揺れ”を除けば、ほとんど現代にのスタイルであり、磨き上げられたピアノの音色が滋味深く輝いております。Mozart のピアノ協奏曲はどれも名作揃いだけれど、この作品をこれほど楽しく、ウキウキと拝聴したのはいつだったか、ちょっと思い出せない・・・(ハスキル?手許にないんです)。第1楽章のカデンツァは宝石がこぼれ落ちるような、華麗なる輝きに溢れました。

 ゆったり思い出を振り返るような、キラキラと切ない第2楽章「アンダンテ」、すべてが充たされ、余裕の微笑み満面の最終楽章「アレグロ」に、詠嘆の中間部(スロウ・ダウン)がやってきました(数回出現する!)。浪漫なんですね、やはり。そして、からりと幸せは(テンポも)戻って、軽やかに歌い続ける・・・

 第14番 変ホ長調K.499はゼルキン35歳の若き日の録音。ソロには人工的に残響と広がりが付加されているようで、低音もしっかりして、瑞々しい音質と感じました。バックには時代的にややポルタメントがあるけれど、全体的には端正で現代の感覚として違和感ありません。(アンダンブルやや粗く、薄く、でも勢いがある)ソロは若々しい感性に溢れ、清潔な語り口はキリリとして、しかも柔軟で暖かい。

 ブッシュ室内管って、アドルフ・ブッシュが自らヴァイオリンを執っていたのですか?ヴァイオリンの主旋律が雄弁に、よく歌いますね。

 蛇足です。先のランドフスカによる第26番ニ長調K.537「戴冠式」(ワルター・ゲール/室内管弦楽団1937年)(新星堂SGR-2004〜7)は1991年に購入したもので、その価格4枚組7,600円(税込)。こちらMozart Deluxe(History 205159)は40枚組6,590円(税込)でっせ。(2001年購入)10年で価格は11.5分の一に・・・音楽の価値は値段では量れないとは思いつつ、妙な感慨とため息ひとつ。

(2006年5月26日)


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