Mozart 管楽器を含む室内楽(コレギウム・アウレウム団員)


RCA(ドイツ・ハルモニア・ムンディ) 77513-2-RV Mozart

クラリネット五重奏曲イ長調K.581
ハンス・ダインツァー(cl)

オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370
ヘルムート・フッケ(ob)

ホルン五重奏曲 変ホ長調K.407
ヴァルター・レクスット(hr)

コレギウム・アウレウム団員

RCA(ドイツ・ハルモニア・ムンディ) 77513-2-RV 1976年録音 $1.99で購入

 古楽器の黎明期を支えたコレギウム・アウレウム合奏団だけれど、”使用楽器ではなく、音楽表現そのもの”こそ重要と認識されるようになった現在に生き残るべき音源。キルヒハイムのフッガー城「糸杉の間」で録音された素晴らしき音質も特筆されるべきでしょう。以下のコメントはおそらく20世紀中のものであって、できれば抹消したいくらい稚拙な文書にぞっとします。閑話休題(それはさておき)・・・久々の再聴をしましょう。

 ”真っ白な諦念のクラリネット五重奏曲、軽快に弾むような幸福を感じさせるオーボエ四重奏曲。ちょっと無骨で素朴な喜びを表現してくれるホルン五重奏曲”(かつてのコメント)〜それはその通りで間違いはない。

 素朴粗野なMozart ではなくて、しっとりと鳴り渡る響きに心奪われます。ソロ楽器は古楽器(またはレプリカ/写真を拝見して判断)だし、現代楽器にガット弦を張った弦楽器らしい。豊かなヴィヴラートが聴かれ、細かいニュアンスはむしろ浪漫・・・最近の古雅な響きとは異なります。いつもより少々エキゾチックなサウンドながらほとんど現代楽器?〜そんな感じかな。聴き慣れた、いつものMozart に近くて違和感はありません。言うまでもなく、どれもこのジャンル最高の名曲ばかり。

 限りなく精神の安寧を生む名曲・クラリネット五重奏曲。名手ダインツァー(ザビーネ・マイヤーの師匠)は低音から高音まで音質にムラがなく、細部まで明快な響きを実現しております。技術的にはまったくスムースそのものであり、やや高音が鋭い現代(いま)風の色気ある音色。1790年製のクラリネットらしいが、音だけで聴く限りどこがどう違うのか・・・?状態也。弦楽器の繊細な表現含め、良質な現役の室内楽演奏として堪能いたしました。

 オーボエ四重奏曲の躍動はまるで嬉遊曲でしょう。これもまったく、現代楽器同様の表情豊かな音色、機能的な技巧を誇ります。中低音わずかに粗野な響きが覗きました。幸福一杯の第1楽章〜第2楽章にやや不安げなる心象がしっとりと現れます。終楽章は憂愁も晴れて清々しい笑顔が広がりました。ソロは要らぬ鋭さのない、暖かくも豊かでエエ音色やなぁ。

 ホルン五重奏曲は、ナマで聴いてすっかり感心しました。ホルンはもちろんだけれど、ヴィオラ(2台)がキモなんですね。素人考えだけれど、古楽器系ではホルンが一番難しそうではないか・・・だってバルブがないんでしょ。ヴァルター・レクスットは期待通り、やや苦戦気味のたどたどしさが粗野で不安定でエエ感じ。スムースでないからこそ味もある。弦のほうは特別なことはなくて、いつも通りの優しい音色は過激ではない。ちゃんと美しいヴィヴラートが歌っておりました。

 古楽器のどうのとか、折衷主義云々要らぬ蘊蓄抜きにして、良くできた美しい”Mozart の管楽器を含む室内楽”として愉しむべき一枚。録音も極上です。

(2008年6月6日)

 聴いてこそ音楽、なんですが、CDはどんどん貯まっていく。本棚から溢れてしまう。自慢でもなんでもなくて、好きなだけなんです。それなりに有名な曲は、かならず一枚は揃えるように気をつけているつもりですが、思わぬレパートリーが抜けているもの。LP時代の記憶とごっちゃになっているんでしょうね。

 心から愛して止まないMozart ホルン五重奏曲 変ホ長調K..407が、コレクションから抜けていることは自覚していました。(エア・チェック・テープは存在する)で、このCDを買ったんですけど、じつはオーボエ四重奏曲ヘ長調K.370も持っていなかったことに気づきました。何故?驚愕、不思議。もしかしたら、まだ持っていない有名曲はたくさんあるのかも、といった不安。

 このCD、録音もいい感じだし、ワタシはとても気に入りました。(というか、昔から知っている演奏)でも、全然評価されないでしょ?これは70年代における古楽器と現代楽器の折衷的な演奏が、いまとなっては時代遅れとなっているからなんでしょう。(例えば現代の補強されたヴァイオリンにガット弦を張ったり、表現そのものは保守的だったり)コレギウム・アウレウムの最盛期には、出る録音ごとに絶賛されたのも今は昔。

 でも、最近こうして廉価盤として復活してくれて、ようやくワタシの身近となってくれました。折衷でも保守的でも、やすらぎを感じさせる演奏と思います。誰がなんと云おうと大好き。ヘタな解説などなにも付いていないけれど、録音情報やソロの写真(楽器も写っている)もあって、これで充分。
 Mozart EDITIONとかいう30枚シリーズらしい。

 ダインツァー(cl)は、そういえば最近噂を聞きませんね。かつてはメシアンなんかの録音もあったはず。写真を見ると古楽器(風)を使用しているようだけれど、古楽器の鄙びた印象はほとんどなく、演奏スタイルそのものも現代風。雄弁で、深く、透明感のある音色。親密な室内楽として立派な水準です。

 フッケ(ob)も(古楽器特有の)粗野な音色の印象はほとんどなく(少々低音域に味わい有)、流麗でリズミカルな演奏ぶりは美しい。

 レクスット(hr)も技術的な不自然さは感じさせない。(低音域のおぼつかなさは聴いていておもしろい)逆に弦楽器も含めて、ほとんど現代楽器の味わいで、それはそれで整った、いきいきとしたアンサンブルは悪くありません。

 フランツヨゼフ・マイヤー(v)をリーダーとする弦楽器群は、最近の古楽器と違ってそれなりにヴィヴラートも効いて豊満で美しい。なんとなく素朴な味わいがある現代楽器(ちょっと音が薄いけど)、といった風情。

 真っ白な諦念のクラリネット五重奏曲、軽快に弾むような幸福を感じさせるオーボエ四重奏曲。ちょっと無骨で素朴な喜びを表現してくれるホルン五重奏曲。
 ウィーンの名手たち(ウラッハ)の演奏は極め付きの愛聴盤ですけど、柔らかい極上の録音で聴く、親密な演奏もまた味わい深いもの。

 「古楽器にしては」とか、「中途半端だ」なんていうのは、後付けの知識から来る評価で、じゅうぶんな美しさに満ちた演奏と思うのですが。とにかく名曲です。室内楽のコメントはこれくらいしか付けられません。

 ・・・・・・・で、この原稿をアップ・ロードしようかな、と思っていたところ、あることを発見。「じつはオーボエ四重奏曲ヘ長調K.370も持っていなかった」なんて大ウソで、レナーSQ/レオン・グーセンスの歴史的録音をちゃんと持ってました。最近この手のボケが増えてきて・・・・いけまへんなぁ。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuK.e hayashi