Mozart ディヴェルティメント第2番ニ長調K.131/メヌエット変ホ長調K.122(73t) /音楽の冗談 ヘ長調K.522/
ディヴェルティメント第1番変ホ長調K.113(シャンドール・ヴェーグ/カメラータ・ザルツブルク)


CAPRICCIO C7024/7 Mozart

ディヴェルティメント第2番ニ長調K.131
メヌエット変ホ長調K.122 (73t)
音楽の冗談 ヘ長調K.522
ディヴェルティメント第1番変ホ長調K.113(第1稿)

シャンドール・ヴェーグ/カメラータ・ザルツブルク

CAPRICCIO C7024/7(これは現役の番号) 1990年2月18-22日録音

 最初6枚組にてけっこう高価入手したあと、4枚分を(BOOK・OFFにて)買い足したもの。歴史的音源はパブリック・ドメインとなって気軽に聴けるようになったから、それなり聴取機会はあります。でもね、小学生からの筋金入り(と自覚する)クラシック音楽ファンも堕落して、音質を気にするようになりました。子供の頃購(あがな)った”無名廉価盤LP”が、じつは往年の名録音であったことは意外と最近認識した次第。(代表例EVEREST、MERCURY)シャンドール・ヴェーグ(1912-1997)が遺したMozart ディヴェルティメント/セレナーデ集(10枚分)久々拝聴して、その鮮明なる音質、鮮烈なる演奏に(あらためて)驚いたものです。

 現代楽器、スタイルはやや浪漫方面であるにせよ、引き締まって厳しいアンサンブル、溌剌とキレのあるリズムは20余年を経て現役の鮮度。

 K.131(嬉遊曲第2番ニ長調)我らがヴォルフガング22歳の作品6楽章30分弱に及ぶ大作です。第1楽章「アレグロ」から希望に溢れた躍動はいつものスタイル、木管の絡み合いが美しい。第2楽章「アダージョ」は纏綿とした浪漫表現になっていて、清潔かつ甘美な安らぎが堪らぬ魅力です。第3楽章「メヌエット」は舞曲のお手本のような快活。剽軽なる第4楽章「アレグレット」を経、第5楽章「メヌエット」では4本のホルンが大活躍(3度同じフレーズ繰り返し/上手いもんですよ)、このホルンの存在が作品全体を大きく見せているのでしょう。終楽章「アダージョ」冒頭のホルン重奏も荘厳なるスケールを感じさせ、そこにフルート、オーボエが優雅に絡んで「アレグロ」のフィナーレに突入。華やかに軽やかにフルート、オーボエも歌います。ラスト、突然リズムが変わって忘れがたいアクセントへ至るのもMozart のマジックでしょう。

 メヌエット変ホ長調K.122 (73t)は偽作の疑いもあるらしい。わずか24小節、1分少々シンプルな舞曲であります。そして、このCD中白眉である「音楽の冗談」へ。お気に入りの作品であり、さてこんな「冗談音楽」をどう仕上げるか興味津々。まずは第1楽章「アレグロ」はがちがちに整って颯爽としたアンサンブルにて突入、第2楽章「メヌエット」も同様の几帳面なるスタイルだけれど、”ホルンの調子外れ”がみごとに対比されました。ホルンの外し方も絶妙の上手さ!ヴァイオリン・ソロも思いっきり優雅で素敵です。途中居眠りして、ここだけ聴けば甘美なる旋律に酔いしれること、必定。文句なし名手のワザ。”ホルンの調子外れ”回帰して目覚めちゃうが。

 第3楽章「アダージョ」は(K.131同様)清潔甘美な浪漫表現なのだな。マヌーグ・パリキアン(v)も素晴らしかったが、こちらカメラータ・ザルツブルクのコンマスも誠実そのもの。ソロのラストで破綻するが、この際、もっと破壊的に崩していただきたかったところ。終楽章はリズミカル愉しい旋律弾んで、ついに不協和音での破綻を迎える・・・ま、こういった冗談音楽の趣向だから、かっちり楽譜通り、みごとに整ったアンサンブルながら、思いっきり弛緩した、そんな演奏で聴きたいものです。

 K.113(嬉遊曲第1番 変ホ長調)は、弦+クラリネット、ホルン各々2本加わった第1稿とのこと。(第2稿は管楽器のみ/未聴)2本のクラリネット大活躍で、1771年時点でこんな素敵なクラリネットの活躍が聴けるというのも凄い。クラリネット協奏曲イ長調K.622は1791年でっせ。スリムで溌剌、クールな風情の演奏です。じつは第2稿を棚中より探そうとして、結果(第2稿はなくて同じ第1稿にて)イルジー・マラート/マンハイム・プファルツ選帝候室内管弦楽団(2002年)を比較再聴したが、そちらはもっと(良い意味で)ユルいというか、優雅な演奏でした。

 ヴェーグの演奏は洗練され、美しく夾雑物を取り除いて、厳しい美しさがありました。

(2012年1月7日)


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written by wabisuke hayashi