Mozart セレナード 変ホ長調K.375/ハ短調K.388(384a)
(ヘンク・デ・グラーフ(cl)他)


BRILLIANT 92627/13 2001年録音 Mozart

セレナード 変ホ長調K.375
セレナード ハ短調K.388(384a)

ヘンク・デ・グラーフ(cl)/ジャンセン(cl)/ヴリーズ(ob)/ハルヴァルソン(ob)/スタインマン(fg)/ヴィッセ(fg)/メルヴェ(hr)/ブールマン(hr)

BRILLIANT 92627/13 2001年録音  23枚組全諸経費込みで3,500円程でオークション入札したウチの1枚

 2006年に入手した「全集よりのバラ購入」(素っ気なくも紙袋のみ収納/外箱なし)より。オランダのクラリネット奏者ヘンク・デ・グラーフ(ロッテルダム・フィル主席)を中心としたアンサンブルとなります。感慨深く、優雅な作品であり、演奏であります。録音も優秀。お恥ずかしいが、ワタシはこの作品をずっと「駅売海賊盤」で聴いておりました。既に棚中には存在しないが。

 ワタシが子供の頃、”クラシック音楽”はお金持ちの趣味だったんです。ワタシは市井のビンボー人の子供だったから、そりゃ大切になんども同じLPを聴いたものですよ。この2曲の管楽セレナードは、著名なるK361「グラン・パルティータ」より知名度的に落ちるし、録音だって少ない。だから、仮にラジオで「ああ、エエ曲やなぁ」と思っても、簡単には聴けなかった。やがて社会人となり、そして中年に至って自由自在、思うように(廉価盤)CDを購入できるようになっても、それは”贅沢なる行為”といった自覚未だあります。

 素敵な作品を、思い立ったら即聴ける、そんな歓びを忘れないよう自戒。閑話休題(それはさておき)、ワタシは(Mozart に限らず)軽快なる管楽アンサンブルが大好きなんです。

 変ホ長調K.375は、第2稿(1782年)による演奏となります・・・って、第1稿(ヘ長調)の録音が存在するのかどうか知らないが。典雅で悠々朗々と明るく、時にそっと暗転するいつもの素敵なヴォルフガング旋律が、しっとり落ち着いて表現されております。もっとリズム感を強調する行き方もあると思うんだけれど、あくまで慌てず、中庸のテンポとメリハリを極度に付けない穏健派演奏。グラーフ(cl)には録音も多いが、他の演奏者も派手な個性を前面に出さず、安定した技術と息のあったアンサンブルが瑞々しい。

 ハ短調K.388は、これは後に弦楽五重奏曲第4番ハ短調K.406(516b)に編曲され、そちらのほうが有名かも。これは数少ない”Mozart の短調作品”。楽器編成は小さくとも、ちょっとした交響曲を連想させるような大きな作風と、劇的旋律の陰影が愉しめます。「ナハト・ムジーク」という表題にはあまり意味があるとは思えないほどの深遠さ有。(終楽章はBeethoven ピアノ協奏曲第3番ハ短調終楽章にそっくり!)

 「アレグロ」-「アンダンテ」-「メヌエット」-「アレグロ」という4楽章による構成も異例であって、これもまるで交響曲。演奏は上記変ホ長調K.375同様であって、”安定した技術と息のあったアンサンブル”を前提として、全22分前作とは180度個性の異なる世界を堪能できます。”短調で深淵”に価値があるというわけではないが、爽快な”明”との対比はCD一枚に収録するに意味ある世界。

 2001年21世紀に入っての録音であります。最高。

(2008年2月22日)


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written by wabisuke hayashi