Mozart ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調K.254/第3番ト長調K.496
(ボーザール・トリオ)


PHILIPS 422 700-2/422 703-2  1987年録音 5枚組7,500円(税抜)で購入 Mozart

ピアノ三重奏曲
第1番 変ロ長調K.254(嬉遊曲)
第3番ト長調K.496

ボーザール・トリオ

PHILIPS 422 700-2/422 703-2 1987年録音 5枚組7,500円(税抜)で購入

 もう”廉価盤を!”と声高に叫ばなくても良い時代になってまいりました。でも、棚奥からこんな値札の付いたボックスが発掘されると、さすがに少々驚きましたね。(c)1991年となっていて、発売と同時に購入したんでしょう、きっと。十数年間、倦まず弛まず聴き続けていればそれは”安い買い物であった”ということであり、いくら安価にて入手しても、ちゃんと聴いてあげなければ、それは無駄というものです。まして、この価格!CD一枚あたり@1,500!〜ああ、そうか、当時はこれでも(充分)廉価盤だったんだ。

 分厚いプラケースに別添の解説書、各楽章のトラック情報はそれを開けないと探せない〜そんな佇まいを糺して聴くべき存在の音楽だったのでしょう。日本の居住空間は狭いし、物流費製造費の倹約で、スリムパックが主流の昨今だけれど(それは取り扱いに便利で支持するにしても)、この豪華さ、立派さにはある種感慨があります。ほぼ同時期に買ったCDは先日、経年劣化が確認されたが、この独逸製のCDは堅牢のようでした。21世紀、極東の地方都市マンションの一室で軽やかに鳴り渡りましたよ。

 ワタシは、声高に叫ばない、激しく主張しない、淡々とした音楽への嗜好を強めております。ボーザール・トリオは往年の名団体(メナヘム・プレスラー以外はメンバー・チェンジし、少なくとも数年前までは活動していた)だけれど、ワタシは正直(よほど酷くない限りに於いて)誰の演奏でもかまわないんです。しかし、作品同様「声高に叫ばない、激しく主張しない」方向の、ていねいな仕上げに間違いなし。演奏云々はコメントできないくらい、静謐な気持ちで愉しめる2作品・・・というか、たまたま取り出した一枚(セットにはピアノ・トリオ全曲が含まれます)ですから。

 変ロ長調K.254は、自筆の楽譜では「嬉遊曲」とされるもの。誰が聴いても主役は完全にピアノでして、ヴァイオリンはそのオブリガート、チェロに至っては低音部の強化(通奏低音?)に過ぎないとのこと。そんなワタシの屁理屈コメントと無縁に「嬉遊曲」との題名通り、楽しく気軽な作品でした。(ハフナー・セレナードK.250と同時期の作曲)朗らかに、お花畑を散歩するようにウキウキとした第1楽章「アレグロ」、憧れを恋人に語るが如く囁き合う第2楽章「アダージョ」。こんな素敵な旋律が次々と生み出される驚き!

 ゆったりとカラダが揺れ出す最終楽章「ロンド」(メヌエットのテンポで)・・・例の「暗転」はほとんど登場せず、ゆったりと人生の春を楽しむような、簡素で牧歌的な旋律が続きました。

 ト長調K.496は微笑みに充ちたピアノ・ソロに始まりました。その旋律を弦が颯爽と追い掛けて・・・優雅ですね。弦楽器の地位は上がったとはいえ、まだピアノ中心の作品であります。ゆったりと深い呼吸の中で、楽しい思い出を回想するかのような、懐かしい第2楽章「アンダンテ」。

 Mozart は変奏曲の名手ですね。最終楽章は変幻自在、時に楽しげに、時に詠嘆の思いを込めて、歌が続きました。淡々としたピアノ、やや線が細めのヴァイオリン(イシドア・コーエン)はあくまで控え目、静かであり、チェロの存在感はジミ(バーナード・グリーンハウス)だけれど、その親密感は例えようもありません。

(2006年4月21日)

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written by wabisuke hayashi