Mozart レクイエム ニ短調K.626(ヘルベルト・カラヤン/
ベルリン・フィル/ウィーン楽友協会合唱団1961年)


DGオリジナル Mozart

レクイエム ニ短調K.626

ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィル/ウィーン楽友協会合唱団
ウィルマ・リップ(s)/ヒルデ・レッセル=マイダン(a)/アントン・デルモータ(t)/ヴァルター・ベリー(b)/ヴォルフガング・マイヤー(or)(1961年)

ヴェスプレ(証聖者の荘厳晩課) K.339より第5曲「Laudate Dominum(主をほめたたえよ)
エクスルターテ・ユビラーテ K.165

フェレンツ・フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団/RIAS室内合唱団/マリア・シュターダー(s)/ヴォルフガング・マイヤー(or)(1960年)

写真はDGオリジナル

 カラヤン一番最初の録音のはず。2015年に拝聴して曰く

音質は(なんせオリジナルを知らぬから)圧縮音源としては上々、タダやと思えば充分音聴けますよ。例の磨きあげたレガートは耳当たりよろしく、やや重く流麗、分厚い響き、リズムは後ろ倒し、なのは想像通り。声楽は充実して(とくに声楽に明るい方からボロカスに云われることも多い)ウィーン楽友協会合唱団に不満もありません。ゴージャスな響きはまさに”カラヤン節”。クラリネットの音色は極上(ライスターですか?)。弟子が加筆完成させた(?)Offertorium以降、こどもの頃初めて聴いた時から(カール・リヒター)”音楽はワン・ランク下がる”と確信したもの、これが驚くほど立派!それを感じさせないほどみごとな完成度ぴかぴかに仕上げて、全曲堪能いたしました。
 前回拝聴音源はたしか.mp3/256kbps圧縮ファイル。”タダやと思えば充分音聴けます”とは失礼な言い種、今回はちゃんとした可逆圧縮音源.flacにて拝聴。ベルリン・イエス・キリスト教会(ダーレム)の豊かな残響を湛えて極上に優秀な音質。演奏内容は上記とほとんど変わらない。まったりゴージャス極上に磨き上げられた重厚なるMozart、ここから先は嗜好の世界でして、今回はこのまったり甘美マイルドな世界を堪能いたしました。声楽陣は絶好調、評判芳しくないらしいウィーン楽友協会合唱団、声楽ソロになんの不満もありません。馴染みの Suessmayr版。器楽編成はフルート、オーボエ、クラリネットが抜けて、バセットホルン(上記にはクラリネットとしてある)ファゴット、トランペット各2本、トロンボーン3本、ティンパニ、弦五部、オルガン+声楽という制約された特異なもの、それでもMozartのマジックは不満を感じさせぬサウンドに仕上げております。無宗教無神論者な自分にもたっぷり敬虔な気分堪能できる名曲中の名曲。

入祭唱 Introitus
(1) Requiem aeternam 永遠の安息を与え給え(Adagio)思いっきり引きずるようなレガートはいつも通り。遅めのテンポに分厚くも甘美な合唱、バセットホルンのジミな響きはウィルマ・リップの清楚な声に似合って思いっきり劇的に重い開始、若い頃はこの耽美的なスタイルに耐えられなかったけれど、これはこれで豊かな残響に身を委ねても悪くないと感じるようになりました。(6:00)
あわれみの賛歌
(2) Kyrie 主よ、憐れみ給え(Allegro)ここも劇的慟哭なところ。ここもゴージャスな響き、圧巻の音の洪水に埋もれて感慨深い表現でしょう。(2:15)
続唱 Sequentia
(3) Dies irae かの日こそ怒りの日なり(Allegro assai)「怒りの日」も怒涛の進撃!合唱も管弦楽もパワフルに圧倒されました。(1:59)
(4) Tuba mirum 妙なるラッパの響きにて(Andante)トロンボーンとバスは茫洋とスケール大きく掛け合って、ここもテンポは遅い。一転アントン・デルモータの緊張感ある登場、ここもテンポは悠然と急がない、アルトが引き継いで可憐なソプラノも登場、ここの弦のオブリガートはデリケートなニュアンスに充ちたもの…だけど、あまりに浪漫風情過ぎる表現はまったくのカラヤンの世界であります。(4:24)
(5) Rex tremendae 仰ぐもかしこき御霊威の大王(Grave)ここのスケール大きな合唱の絶叫、この威力を聴くと合唱団が世評芳しくないのが不思議なほど、圧巻の押し出しとスケールに打たれます。(2:32)
(6) Recordare 慈悲深きイエズスよ(Andante)ここはバセットホルンに導かれて優しい、静かな場面。声楽ソロの絡み合いはゆったりと優しく、雄弁そのもの。控えめな管弦楽の合わせ方も極上の仕上げでしょう。(5:29)
(7) Confutatis 呪われし者を愧服せしめて(Andante)ここは激しい怒り(男声)と天井の優しい声(女声)の対比が強烈なところ。声楽オーケストラのバランスも最高の表現。映画「アマデウス」ではサリエリが驚嘆するところ(もちろんフィックション2:39)
(8) Lacrimosa かの日や涙の日なるかな(Larghetto)ここは泣ける旋律ですねぇ。涙を誘うゆったりとした歩みは入念、大仰に甘い味付けに溺れそうなほどのスケールはほかでは滅多に聴けない。(3:28)

奉献唱 Offertorium
(9) Domine Jesu 主イエス・キリスト(Andante)ここの旋律はいかにも”らしく”ない。(声楽ソロのフーガとか)昔からちょっと違和感がありました。カラヤンの重く、引きずるように重い(けど語り口の上手い)表現にもちょっぴり違和感有。それにしても凄い低弦と合唱の迫力!(4:16)
(10)Hostias いけにえと祈りを主に捧げん(Andante)ここも楽曲としてメリハリ足りない?旋律がちょいとツマらない感じ。穏健な合唱が続いて、途中から前曲の激しくも劇的な旋律が再登場します。(5:10)
感謝の賛歌 Sanctus
(11)Sanctus 聖なるかな、万軍の天主なる主(Adagio)晴れやかにスケールの大きな合唱だけど、ここも旋律に深みが足らないと感じるところ。ラストはやたらと賑々しく盛り上がります。(1:49)
(12)Benedictus 主のみ名によりて来たれる者は(Andante)静かな女声ソロの掛け合いから始まって、やがて男声ソロも参入する安らぎの旋律。ここも今一歩旋律の魅力に足りない。当たり前に美しい旋律だけど。ラスト唐突に「救い給へ(Hosanna)」力強く乱入して終了。(5:14)
平和の賛歌 Agnus dei
(13)Agnus dei 世の罪を除きたもう神の子羊(Larghetto)ここの旋律も構成が見えぬ印象。管弦楽と合唱の掛け合いもありきたりっぽい。微妙にMozart自身の支持が入ったり、入っていないところはあるみたいだけど、奉献唱 Offertorium以降はちょっと作品として落ちる感じ。(勝手な印象です3:56)
聖体拝領誦 Communio
(14)Lux aeterna 主よ永遠の光を彼らの上に照らし給え(Adagio)ここは神々しい冒頭の繰り返しなので、ようやくMozartに戻ってきた!そんな感慨に打たれました。カラヤンはたっぷり、思う存分旋律を引きずって、サウンドを磨き上げて締めくくりました。ゴージャス甘美なサウンドに敬虔な精神(こころ)は充たされました。(6:34)

 フェレンツ・フリッチャイ(Ferenc Fricsay 1914ー1963洪牙利)によるヴェスプレ(証聖者の荘厳晩課) K.339より第5曲「Laudate Dominum(主をほめたたえよ)はMozartのみならず、あらるゆ音楽の中でもっとも高貴に心洗われる名曲。(5:17)Maria Stader(1911ー1999洪牙利→瑞西)は宗教的作品には欠かせぬ清潔な歌唱(ちょっと生真面目過ぎ)フリッチャイは引き締まってかっちりとしたアンサンブル、RIAS室内合唱団の精密な響きは聴きものでしょう。エクスルターテ・ユビラーテは喜ばしくもめでたい、可憐な作品であり清潔な演奏でした。当たり前だけど、カラヤンとは別世界。(5:09-0:57-6:17-2:37)

(2023年2月4日)

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written by wabisuke hayashi