Mozart ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219(ジャック・ティボー)


HISTORY 205172-302 Mozart

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219

ジャック・ティボー(v)/ミュンシュ/パリ音楽院管弦楽団(1941年)

弦楽四重奏曲第19番ハ長調 K.465「不協和音」

ブダペスト弦楽四重奏団(1932年)

HISTORY 205172-302     40枚組(Mozart DELUX)6,590円で購入したうちの一枚

 いや、いけまへんな、こんな有名なる演奏に手を出しちゃ〜いえいえお勉強ですよ、偉大なる先人に敬意を表して温故知新。いや、もうコレ圧倒的ですね。こんな演奏が存在すると、この後の世代はたいへんっすよ。ヴァイオリンの流麗かつ、ツルツルと滑らかなる音色を聴いていると、まったりと音楽に身を預けて思考停止状態に突入します。

 なんですか、この第1楽章「アレグロ」の軽快なる「ノリ」。カラダが揺れますよ、聴いているほうは。気持良くね。小粋で、お洒落な表現。テンポをタメにタメて、一気に爆発して声高らかに歌い出すでしょ。その間合いの良さ、のびのびとした声のハンサムなこと。天才の天衣無縫なる旋律を、なんの苦もなくスルリと表現して「ああ、こんな素敵な曲だったのね」と万人を納得させる魔術。高まりゆく熱。

 第2楽章「アダージョ」の、気高くもセクシーな音色、ほのかなポルタメントを聴いていると音楽が香ります。聴いていてドキドキするほど魅力的。旋律が暗転すると、部屋の空気も陰るような錯覚に陥ります。ヴァイオリンも泣きますよ。古さはまったく感じませんね。ちょっと昔の映画だけど、やっぱりヘップバーンは素敵だね、といった風情か。溜息ばかり。

 終楽章はますますアツくなってきましたね。表情は涼しげで軽快さを失わない。短調に暗転するところでは表情が濃く、豊かなこと。早めのテンポで緊張感が持続します。自由なる歌が流れ続けました。

 壮年だったミュンシュのバックはいきいきとして、一本芯の通った立派なもの。なにより、音質が良いですよ。オリジナルは知らないが、ワタシ如きの市井の音楽ファンがマンションの一室で楽しむには充分すぎます。ヴァイオリンの息遣いが感じられるじゃないの。ちゃんと。

 戦前のパリって、こんな空気に充ちていたのでしょうか?ちょっと酔いそうな、濃密なる音楽が溢れました。


 ブダペストの「不協和音」ね。これ初耳だけど、(これも)驚くべきほど音質がヨロしいんです。深遠なる不協和音の導入から一転、爽やかなる歓びが吹き上げる旋律が全面開花するでしょ?それが快速テンポ(SP収録の都合かも知れないけど)でカッコ良い。ノビノビと若々しい。ああ、青春って素晴らしい・・・・そんな思いが駆け巡りました。

 この曲を初めて聴いたのは中学生の時。なにもかもが未整理で、欲望ばかりギラギラして、そして希望と可能性に溢れていた頃。スメタナ弦楽四重奏団(モノラル録音のLP)でした。この曲を聴くとね、懐かしい思いが込み上げます。なにも持っていなかったけど、すべてがあった・・・・・。

 第2楽章「歩く速さで、歌うように」〜陰りのない、晴れやかな表情が眩しいくらい。第3楽章「メヌエット」の躍動感。ハジける歌。時に聴かれるポルタメントが効果的なこと。(しかし、清潔感が勝って甘くならない)終楽章は超特急です。めまぐるしい音の乱舞はピタリと息が合っていて、聴き手を興奮させます。

 もうこの作品は「室内楽」という範疇から外れてしまって、無限の広がりがありました。ワタシはMozart が大好きです。(2003年2月7日)


(さっそくメールにて指摘有。香港の金田さんより)

モーツァルトの録音評、楽しく拝読いたしました。聴いてみようか、と いう気をおこさせる力がありますね。

ところで、1941年の録音とすれば、当時のパ リはドイツの占領下で、戦前というのはどうでしょうか?多分、戦前の雰囲気を伝 えるという意味なのだとは思うのですが・・・ つらい時代の録音ということだと 思いますよ。

私もあまり知識がないので、たいしたことは言えませんが、当時のパリの楽壇には いろいろな事情もあったようです。

例えば、ミュンシュは密かにレジスタンスを支援していたそうで、その結果として 戦後に勲章を貰ってます。ティボーについて言えば、ドイツでの演奏は拒否したと どこかで読んだことがあります。


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written by wabisuke hayashi