Mozart 歌劇序曲集(ヨーゼフ・クリップス/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団)Mozart
歌劇「フィガロの結婚」序曲 ヨーゼフ・クリップス/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 LP 30 cm: Musical Masterpiece Society MMS-2218 以下のコメントは15年前。Ad'esの5枚組はとうに処分済、貴重な太古録音揃っていたっけ。Schurichtの交響曲は別途音源確保済、そしてある日、クリップスの序曲集、それもオリジナル収録9曲揃えてネットに出現しました。Wagnerみたいな大掛かりな作品さておき、序曲集のみ続けて聴く習慣は廃れているかも。しかも1960年前後?音質の苦しさに定評のあったコンサート・ホール・レーベル、記憶通り懐かしい、ぼんやりとしたLP板起こし音源を愉しみました。瑞西の独逸語圏オーケストラはこの時期、未だチューリヒの歌劇場を兼任していた頃か、1995年に就任するデイヴィッド・ジンマンが大活躍するのは遠い将来でした。 オペラの旋律まったく登場しないのに生命躍動する勢い一気呵成な「フィガロ」、劇的な最終場面クライマックスを髣髴とさせる「ドン・ジョヴァンニ」、なんやら筋のわからぬサリエリとの対決作品「劇場支配人」は序曲しか聴いたことがないけど、元気のよろしいヴィヴィッド華やかな作品です。気軽な作品ばかり、オペラ畑の人であるヨーゼフ・クリップスは振りなれた作品なのでしょう、微笑みを浮かべて軽快、オーケストラもじつに上手いもの。 荘厳勇壮な出足、やがて疾走を始める「魔笛」の愉しさ、ファンファーレともに雰囲気が変わって華やかな結末を迎える完成度の高い作品です。当時の土耳古ブーム(リズムやトライアングルがオリエンタル)に乗った「後宮からの誘拐」は作品として短いから、たしか最初に聴いたMozartのオペラでした。(フェレンツ・フリッチャイ/1954年)中間部がオペラ冒頭のアリアになってますよね。「皇帝ティートの慈悲」は本編聴いたことなし(イェド・ヴェンツ/ムジカ・アド・レーヌムのCDは眠ったまま)でもね、序曲を聴く限り”Mozartに駄作なし”大原則徹底、弦の湧き上がるような繰り返しにワクワクしまっせ。 「コジ・ファン・トゥッテ」(女はみんなこうしたもの、または恋人たちの学校)はちょっぴり優雅にノンビリユーモラスな風情に充ちて素敵です。くるくる回る木管の掛け合いがなんとも粋な風情でしょう。「La Finta Giardiniera」も知名度の低い作品、これは若い頃FMにて吉田秀和さんの痒いところに手の届くような解説を思い出しました。(だからちゃんと全曲聴いたことがある。たしかセミョン・ビシュコフ?自信ないなぁ)これも笑顔が浮き立つようなあっという間の2:29也。ラスト「イドメネオ」はクソ真面目なオペラ・セーリア(重厚なオペラ)なんだそう。立派な交響曲を聴くかのような堂々たる立派な陰影深い序曲であります。 嗚呼、愉しい!クリップスっていつも力みとは無縁、音の悪さも忘れます。でもね、やっぱり歌が入らんと隔靴掻痒、よう知った作品は序曲の後の歌を心待ちにして、結果、次の序曲が始まるとガッカリせんでもない。 (2017年2月26日)
交響曲第36番ハ長調K425「リンツ」 カール・シューリヒト/パリ・オペラ座管弦楽団
歌劇「フィガロの結婚」序曲 ヨーゼフ・クリップス/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 Ad'es 14.185-2 Disque 5 1960年前後の録音 5枚組8,000円で購入 こりゃ「1,000円以上のCD」分類だな。でも、まぎれもなく「コンサートホール」音源。LP時代には当然所有していて、じょじょにLPを処分してCDに切り替えつつあった時期の購入でした。(1991年10月26日購入とメモがある)当時は贅沢していたんですね。(バブル時期か?) とんでもなくマニアックな音源満載のMozart 5枚組で、ゴールドシュミット/パリ音楽院管とか、パイヤール室内管の前身であるJ.M.ルクレール合奏団、イヴォンヌ・ロリオのソナタ、パレナン弦楽四重奏団、アンリ・メルクル(v)/ジャン・ユボー(p)のヴァイオリン・ソナタ、とか・・・閑話休題。 やがて幾星霜〜日本経済は破綻し、阪神大震災は来ちゃうし、オウム真理教は暗躍するは、ワタシは大阪から博多に転勤になるは、挙げ句に岡山に流れて来ちゃうし、可愛い小学校一年生だった息子は高校3年生になっちゃうし・・・・で、10年振りに聴いたんですよ、これ。音質がイマイチ印象もあったし、ずばり存在を忘れていた、というのが正直なところ。 ま、シューリヒト・クリップスという黄金のカップリング、しかもムリムリ73分以上の収録も嬉しい。序曲から始まって、その間に交響曲が挟まるんだけれど、指揮者の個性、オーケストラの違いがわかってとても楽しいものです。録音はいちおうステレオだけれど、両者とも差がないくらい曇りがちでよろしくない。 まず、クリップスから。これ、まったくいつもの彼のスタイルで、一つひとつの旋律・音をそっと、ていねいに歌っていて、やわらかい表現が極上。アーノンクールなんかの「叩きつける」感じとは対局でして、あまりに優しすぎて物足りなく感じる人もいるでしょうか。でも、こんなデリケートなタッチって、おそらく他では絶対に存在しない。 旋律の冒頭にアクセントを付けないで、そっと音符を置いていく感じ。そして、やさしく朗々と歌ってくれるから、ノリにも不足しない。肩のチカラも抜けてます。どの序曲を聴いても、ちゃんとオペラ本番への期待が高まってウキウキすることに変わりありません。トーン・ハレ管は派手さがなくて、ジンワリとした響きが好ましい。 シューリヒトの交響曲は、ずいぶん久しぶりだけど、これ、やっぱり絶品だなぁ。ト短調交響曲がこれほど繊細に、そくそくと胸に迫る悲しみが横溢することも珍しい。リキみはないが、一件淡々と見えながら、じつは旋律の細部にまで感情がこもっていて、並の表現じゃない。けっして粘らず、即興的な流れは崩さない。速いテンポが微妙に揺れるんですよ。 この曲、初めて録音で聴いたのはこの演奏だった記憶有。(またはセルか?)中学生だったワタシは、いきなりこんな名演を聴いちゃったんだなあ。「オーケストラが三流。音質最悪」なんていわれるが、これ、なんの不満があるの?「リンツ」はハ長調の難しい作品だけれど、ストレート系のほとんど(一見)なにも味付けしないような表現でした。 アンサンブルを神経質に整えるタイプじゃないから、粗っぽく聞こえるかも知れません。しかも、このオーケストラは(録音のせいか)低音がやたらとカルくて、聴き流せばただのヘロ演奏に思えるかも。この飄々とした躍動感、軽快な勢いはオーケストラの明るい響きと相まって魅力爆発です。「リンツ」は「勢い命」ですから。 (2002年12月13日)
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