Mozart 交響曲第29番/第41番
(スウィトナー/シュターツカペレ・ドレスデン)


CCC 0000001122CCC Mozart

交響曲第29番イ長調 K.186a (201) 
交響曲第41番ハ長調 K.551

スウィトナー/シュターツカペレ・ドレスデン

CCC 0000001122CCC 1970年頃録音  5枚組1,000円で購入したウチの一枚

 潔く真っ白で、なんの印刷もない紙パック入りだから、当然なんの録音情報もなし。(p)1974/1976となっておるが、LP時代fontanaから出ていた第29番と同じものなのか?(「同じである」との情報も有)いずれにせよ、録音水準的にそうたいしものでもなく(とくに第41番)、できるだけ良いオーディオ機器で聴いた方がよろしいと思います。(ラジカセ〜おっとCD/MDセットでは止めた方がよろしい)

 交響曲第29番というのは、たいした名曲。それを知ったのは、このスウィトナー(LP時代)の演奏だったはずなのに、どんなんだったかなんの記憶もありません。で、我が音楽日誌では「どっひゃー!(中略)いやはや。この極上のしっとり感、深くてジミな響きのみでこりゃ大芸術。LP時代の記憶がなにもなくて、瞑想と安らぎの世界は若造には理解できんのか?恐るべき繊細さ、夢見るような世界」〜と、まぁ、こっ恥ずかしい一文掲載済。

 ほとんど何もしないというか、淡々と、特別な飾りもない演奏。豊かな残響と奥行きはあるが、少々肌理も粗い録音。で、何を聴くべきかというと「ドレスデンの音」なんですよ。ちょっとくすんでね、古風で落ち着いた底光りするような厚み。「嗚呼、ドイツってこんな感じ?」とド・シロウトも納得。

 ここ最近、確実にワタシの嗜好は変化していて、激しい変化ワザ頻発の爆演系はダメなんです。(ときどき、ウヒヒ、なんて喜んじゃうが)化粧だってナチュラル・メイクの時代ですよ。ガングロなんて絶滅したでしょ?そもそも容姿はココロの美しさを反映したもので・・・・なんて、話しはどんどん横道に逸れてしまいそうになるが、Mozart は難しいんです。

 シュターツカペレ・ドレスデンはまず弦でしょ。「ちょっとくすんで」というのは、ここの第一印象がある。木管は「シミジミ系」で、ベルリン・フィルなんかの「妖艶系」とは大いに異なって、これも魅力的(第2楽章最終版のオーボエの鬨の声に注目)。金管は?ほとんど気付かないくらい控え目な渋い響き。これだけ揃って、ほかになにを望もうか?


 「ジュピター」は、少々演奏の方向が違いました。ワタシの基準はジュリーニ/ニュー・フィルハーモニア盤であって、「細部までトコトン明快な歌」が欲しいんですよ。第29番とは録音の雰囲気もちがう(残響が少ない)し、テンポも前のめりっぽい。勢いが欲しかったのかな。

 ・・・と、ここまで執筆して数ヶ月が経過。上記演奏との違和感があって「どう決着を付けるか」と悩んだまま原稿在庫入り。で、ある日、目覚めました。これ、燃えるようなテンションの高い演奏なんですね。「ジュピター」の第1楽章は、やはりこのくらいの怒濤の勢いが必要なんですよ。

 第2楽章の木管が朗々と(しかも軽くない)とことん歌うこと。弦の(例の)古風でくすんだ響きも健在で、なんのことはないイ長調交響曲の行き方といっしょじゃないですか。この辺りでジンワリ来てしまって、もうダメ。ドレスデンの響きに身を任せたい。

 「天使が舞い降りる」第3楽章メヌエットは、溌剌としております。羽衣を纏った天女は少々お転婆で、若々しい。この辺りは軽々と演奏して欲しいが、ここでのスウィトナーはいつになく生々しくて、このテンションはそのまま終楽章へと続きます。一拍一拍アクセントを確認するような、しかも早めのテンポによる力強い演奏。

 少々前のめりくらいの迫力が続いて、木管の明快な、しかも木のぬくもりを失わない響きも大活躍。(これほど魅力ある音色は久しく経験せず)金管はけっして鋭さを表面に出しません。グイグイと牽引されるような、圧倒的盛り上がり。(繰り返し実行も嬉しい)ラスト「ジュピター音型」のフーガに怒濤の感動が押し寄せて、これも「入れ込み型」演奏の典型だったんです。


(おまけ)

 この録音、オーディオ機器を選ぶそうです。(児島在住の体操服屋の若旦那説)ワタシは現在に至るまでオーディオにはまったく興味がないが、この第29番はこの度初めて「ドレスデンの音」に気付きました。LP時代はそんな記憶はなくて、これは音源とオーディオ機器との相性かな?

 体操服屋の若旦那によると、自分の家ではダメで、親父のオーディオだとちゃんとヨロシく聞こえたそうで、あわてて自分の機器を再検討した、とのこと。今回はワタシはセーフみたいだけれど、ものによると印象一変する音源が存在するのかも知れません。(2002年8月9日)


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written by wabisuke hayashi