宮沢明子・ピアノ・コレクション・サンプラー


VENUS VENUS-1005 中古@333  もともとスリーヴがなかったんです Mozart

ピアノ・ソナタ第8番イ短調K.310(1973年)

Chopin

夜想曲 変ホ長調 作品9-2/嬰ハ短調 作品27-1/ワルツ嬰ハ短調 作品64-2(1973年?)

Beethoven

ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 作品13「悲愴」

宮沢明子(p)

VENUS RECORD VENUS-1005(非売品) 中古@333

 宮沢明子さんはワタシが子供の頃から活躍されていた大ヴェテランだけれど、まだ現役なんでしょうか。(引用先情報だとベルギー在住らしいが)楽器はベーゼンドルファー、たしか高名なるオーディオ評論家・菅野沖彦さんが録音したものでしょう。現代の耳で確認しても、暖かくも臨場感ある音質を確認できます。ややオン・マイクかな?(少々劣化ないでもないが)

 Mozart は素直であり、瑞々しい響きで魅了されます。一種デモーニッシュな作品だろうが、第1楽章には必要以上の切迫感はなく、穏健方向であり、第2楽章「アンダンテ」の緩やかな表情〜不安なる暗転への変化は見事であり、自然体でもあります。終楽章も同様であって、悲痛ではない。(それにしても3楽章あわせてトラックひとつとは・・・)

 Chopin もキラキラしたり、鋭さが先に立ったりせず、暖かな芯を感じさせる音色。懐かしくて素朴な味わい有。夜想曲 嬰ハ短調 作品27-1の表情の陰影に打たれるが、あくまでも優しさを失わない。ワルツ嬰ハ短調 作品64-2の、そっと囁くような抑制と、躊躇いがちの”揺れ”に打たれます。弱音が最高。

 ラスト、Beethoven 「悲愴ソナタ」・・・例外的にお気に入りなのは、子供の頃からバックハウス(17cmLP)で馴染んでいたから〜そんな厳つい表現(鬼神の如き推進力!?)ではなく、もっと親しみやすい音色だけれど、時に指が回っていない?(手が小さいとか)いえいえ、そんな些細なる傷どーでもよろし。(この作品でなんだけど)晴れやかな表情で、叩かず、時にそっと抜いた弱音が(やはり)素敵です。

 スケールは大きくなく、威圧感もない。浪漫の色も濃くはない。第2楽章「アダージョ・カンタービレ」って、おそらくはBeeやんが残した最高傑作・売れ筋の名旋律でしょう。ずいぶん淡々として、さっくりとした演奏だと思います。激昂しない、歌い過ぎない。そして懐かしい。終楽章の嘆きに切迫感は伴いません。その代わり”嘆き”と”安らぎ”があります。タッチはあくまで軽快で重くならない。 (この作品も3楽章あわせてトラックひとつ・・・閉口気味です。途中で途切れず聴け、ということか)

written by wabisuke hayashi