アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ1949年ブエノスアイレス・ライヴ


アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ1949年ブエノスアイレス・ライヴ
Beethoven

ピアノ・ソナタ第3番ハ長調 作品2-1

Chopin

マズルカ 第47番イ短調作品68-2/第25番ロ短調作品33-2
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22

Grieg

叙情小曲集〜「ゆりかごにて」作品68-5

Galuppi

ソナタ第5番ハ長調〜「プレスト」

Grieg

叙情小曲集〜「メランコリー」作品47-5

アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(p)

membran 223500-CD1   1949年ブエノスアイレス・テアトロ・コロン・ライヴ 10枚組1,990円にて購入したウチの一枚

 Beethoven には敬意を評しているが、日常頻繁に楽しく聴く機会の少ない作曲家であります。それでも先日ナマで「悲愴ソナタ」を聴いたら、その盤石たる構成感に打たれました。立派な作品ですね。毎日思いつき好き勝手にあちこち音楽を聴いているが、流れみたいなものはあって、最近はオペラとか大きなオラトリオ、受難曲、そしてStravinskyばかり聴いていて、Beethoven はもちろん、ピアノ・ソロもずいぶんと聴いていない・・・ことに気付きました。

 ミケランジェリのライヴ集が、格安で集大成されたのは2005年頃だったでしょうか。残念ながら音質は玉石混淆(ほとんど”石”)ながら、演奏はどれもピカイチ!この戦後すぐのアルゼンチン・ライヴもかなり厳しい音質だけれど、低音が良く響いているし、なにより演奏が凄い。「ワタシゃBeeやん苦手で・・・」などという戯れ言吹き飛ばすような、躍動と濃厚溢れる「ソナタ第3番」にグイグイ引き込まれます・・・って、こんな作品でしたっけ?

 あわてて(いちおう自宅標準としている全集)アンネ・エランド(1999年)で確認してみたら、ああ、可憐で軽快でHaydnやMozart の世界に近い作品なのだね(これだって悪くない)。じゃ、ミケランジェリはなんだ?曖昧模糊とした音質の濃霧の中から、重心の低い、深い味のある旋律が響きました。ほんまの名演奏というのは、市井のド・シロウト音楽愛好家(=ワタシ)を目覚めさせるんです。こちらには陰影がしっかりと表現されて、驚くべき効果。(第1楽章での聴衆の拍手も理解できる)

 ミケランジェリは大好きだけれど、すべてを賞賛しているワケでもなくて、Chopin には感心したことがない・・・マズルカは味が濃過ぎますか?ようはするに前曲のBeethoven の表現と変わらんのです。入念に味付けして、彫りが深い。重い。感傷とか、甘美に不足するのか。「アンダンテ・スピアナートと華麗なる〜」はワタシのお気に入り作品だけれど、音質が悪過ぎて細部のニュアンスが聴き取りにくい。感情が途切れ途切れになっちゃう。不思議なもので、Beeやんはあまり音質を苦にしません。

 この後はアンコールかな?音量レベルが変わって、一筋縄ではいかぬ怪しげな音源由来を感じさせます。Griegは感傷的な旋律を、明快にくっきり歌って、替えって新鮮。ミケランジェリ得意のGaluppiは、シンプルな旋律をたっぷりの味付けで揺らせ、疾走させ、ラスト「メランコリー」は纏綿と「間」を取りながら雄弁でした。音質ガマンできれば、相当愉しめる一枚也。

(2007年8月17日)


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written by wabisuke hayashi