Mendelssohn ヴァイオリン協奏曲ホ短調/
Tchaikovsky ヴァイオリン協奏曲ニ長調(ヤッシャ・ハイフェッツ(v))


CULTURE CCD-1027  RCAの駅売海賊盤 Mendelssohn

シャルル・ミュンシュ/ボストン交響楽団(1959年)

Tchaikovsky

ヴァイオリン協奏曲ニ長調

フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団)(1957年)

ヤッシャ・ハイフェッツ(v)

CULTURE CCD-1027 RCAの駅売海賊盤  350円

 2010年来の再聴。駅売海賊盤は大昔に売り飛ばしてしまったけれど、これはスタンラン(Theophile Alexandre Steinlen/1859-1923年)の「ヴィンジャンヌ産純正滅菌牛乳」宣伝ポスターでした。ネットにこのデザインのCD写真を求めても【♪ KechiKechi Classics ♪】のスキャン画像しか登場しないのは駅売海賊盤だから当たり前。記憶では新宿で入手したもっとも初期の駅売海賊盤だったはず。

 Jascha Heifetzas(1901-1987立陶宛→亜米利加)による代表的録音。RCAの優秀な音質・・・だった記憶も、最近の録音に馴染んだ耳に確認すると、さほどでもないと感じるのは1950年代だから仕方がない。ま、悪くないけどね。これは入手したLP復刻音源の状態かも。さらさらと素っ気ない前のめりの快速テンポ、ヴィヴラートがお下品で好きになれないとの声を伺うこともあるけれど、自分は個性明快にお気に入りのヴァイオリニスト。以前の自らのコメントに

Mendelssohnの甘美浪漫、Tchaikovskyだったら纏綿たる叙情を期待(するならば)完璧快速な技巧、浪漫も叙情もクソもない、サラサラと淡々と音楽は流れて・・・素っ気ない、ツマらない、と感じるのかも・・・
久々に聴いて、これはこれでこの著名作品のヴェリ・ベストかも、そんな手応えを得ました。

 Mendelssohnの初演は1845年、実質上のラスト作品でしょうか。

 第1楽章「Allegro molto appassionato」ソロは快速に急ぎ足、前のめりに浮き立つように落ち着かぬ表現は甘さ控えめ。ミュンシュとの息も微妙でしょう。テンションの高さ、超絶技巧カデンツァ、魔法のようなヴィヴラートと節回しにやがて引き込まれます。(11:01)
 第2楽章「Andante」ファゴットの音が続いて転調から、淡々粛々とした緩徐楽章へ。相変わらず前のめりの快速、クールな佇まいにはすっかり耳慣れて、流れの良さに身を委ねて、熱と情感は高まります。(7:01)
 第3楽章「Allegretto non troppo - Allegro molto vivace」哀愁の経過部から転調して、快活なフィナーレへ。細かい音型を快速にこなしていくハイフェッツに、オーケストラが付いていくのはタイヘンそう。息も付かせぬ快速パッセージも余裕、一気呵成に疾走して軽快軽妙上機嫌、そして落ち着かない・・・けど、これが彼の個性ですから。(5:59)

 Tchaikovsky ヴァイオリン協奏曲ニ長調の初演は1881年。批評家エドゥアルト・ハンスリックはその豊かな民族色に辟易し「悪臭を放つ音楽」(Wikiより)と評判は散々だっけど、ある意味言いえて妙とはこのことでしょう。(自分も最初にこの作品を聴いた時にそう感じたもの)たっぷり纏綿と露西亜風粘着質表現も悪くない名曲と感じます。 こちらライナー/シカゴのアンサンブルはミュンシュよりぐっと充実してテンションが高い。音質印象もあるのでしょうか。

 第1楽章「Allegro moderato」ここでも前のめりの快速表現は変わらないけど、ハイフェッツなりにたっぷり纏綿と歌って鮮やかに色彩と陰影深く、抜き方も絶妙、露西亜風粘着質表現と無縁な朗々たる表現でした。相変わらず快速パッセージは曖昧さ皆無、カデンツァも超絶みごとな技巧でした。シカゴ交響楽団の技量や各パートの美しさにも驚き。(15:52)
 第2楽章「Canzonetta: Andante」懐かしくも憂愁な風情に溢れるTchaikovskyらしい内省的な旋律。ソロの抑制ぶりは絶妙な蠱惑、それに呼応するフルートもオーボエもみごとなオーケストラ。(5:32)
 第3楽章「Finale: Allegro vivacissimo」風雲急を告げる緊張感たっぷりな管弦楽の始まり、それに呼応する暗鬱なヴァイオリンが参入して、速攻快速にテンポ・アップして表情は晴れやかでした。ソロはあいかわらず前のめりに蠱惑の表情を浮かべながら、完璧な技巧に全速力に、まるで軽業の如く疾走いや増す熱狂的なフィナーレ。時にオーケストラの哀愁の表情との相性もぴったり、作品の違うもあるのだろうけど、ミュンシュとは段違いの充実ぶりでした。(8:13)

(2026年6月20日更新)

  My CD導入もっとも初期の購入だった記憶があって、1990年頃新宿駅地下で購入した記憶有。昔から定評ある名盤だけれど、HMVの読者レビューでは評価が割れている、というか、むしろ否定的なご意見多いですね、意外と。両作品とも”所謂初心者向”っぽい作品?との傲慢な考えに至って。ここ最近、滅多に聴いていなかったもの。

 Mendelssohnの甘美浪漫、Tchaikovskyだったら纏綿たる叙情を期待したいんでしょう。完璧快速な技巧で、浪漫も叙情もクソもない、サラサラ淡々と音楽は流れて、聴き方の視点によっては素っ気ない、ツマらない、ということになるのでしょう。ワタシは虚飾ない、ドライな表現が好みである、ということを(おそらくは)十年ぶりの再聴で再確認いたしました。ほとんど嗜好の世界であって、これこそ”現代的な、モダーンな”演奏だと思います。ソロ、バックとも完璧、録音も極上です(こんな駅売海賊盤でも)。

 ちなみにこの駅売海賊盤(RCA録音)のデザインはスタンラン(Theophile Alexandre Steinlen/1859年〜1923年)の「ヴィンジャンヌ産純正滅菌牛乳」。画家というよりイラストレーター、これは宣伝用ポスターなんでしょう。このCDは思い入れがあって(なかなか)手放せません。

 ・・・上記は音楽日誌2009年1月からの引用だから、少々以前の記録となります。再々聴のキッカケはTchaikovskyの旧録音、ジョン・バルビローリ/ロンドン・フィルによる1937年録音を聴いたため。これが36歳鮮やかな技巧と、時代からは想像も付かない優秀録音に驚かされました。ちょうど20年後、57歳のステレオ再録音と比較したくなった、ということです。

 イン・テンポで素っ気なく通り過ぎる〜ことを非難するのは、纏綿と歌う、かなり粘着質な演奏を個性的と認識する流れなのでしょうか。”ソリストは音色が汚い。移弦の際のノイズが気になる。バイオリンを鳴らしきれていない。表面的に鳴らしているだけで金属的なガチャガチャ音がして耳障り”というコメントに至っては、音楽の聴き方にもいろいろあるのか?それとも20代のリスナーは耳がよろしくて、こちら劣化甚だしい50歳代の大カンチガイなのか、いずれ、音楽は愉しんで聴くに越したことはない。お若い人は一般に濃い味を好むものです。あまりにさらさらと”勝手に弾いている”のは間違いなくて、バックとの息の相方にも問題ありそうなのは自明の理。

 ホ短調協奏曲の哀愁のメロディは、刷り込みかも知れぬが、快速、息もつかせぬ勢いで弾き切るからこその快感やノリ、作品の本質が見えてくる思い。細部が雑なのではない、サラリと粋に流しているんです。日本人はなんでも一生懸命になりすぎ、颯爽と軽々な所作を非難する風潮ないですか?やっぱり、艱難辛苦眉間に皺的Beeやん好きですか?第2楽章「アンダンテ」の一気呵成なる推進力に甘美を感じます。途切れずに突入する最終楽章の”これぞMendelssohnの喜び”的軽快なる躍動に、これ以上相応しい演奏はない。肩の力が抜け、淡々颯爽とクールに、額に汗もなく、筆舌に尽くしがたいテクニックの冴えを堪能させて下さいました。

 最高。

 若い頃はTchaikovskyの激甘旋律に気恥ずかしさを感じておりました。それは馬齢を重ねれば、恥じらいも消えようというもの、最近はどれを聴いてもけっこう堪能できる世界に至りました。この代表的名ヴァイオリン協奏曲は初演前後に「クサい」と非難されたそうだけれど、それは一理あるんです。あまりに纏綿とたっぷり演られると、ちょっと脂っこ過ぎて、しつこくて聴いてらんない。イン・テンポで素っ気なく通り過ぎる〜と、ちょうど中和して件の甘い旋律も”甘さ控えめ”に。なんと颯爽と禁欲的なヴァイオリン!名曲を名曲と再発見させて下さる、虚飾を削ぎ落とした演奏。抜いたところが極上の味わい。

 相変わらずの快速テンポ、ライナーのバックはミュンシュより(合わせが)上手いですね。第1主題の様々なるオーケストラの回帰は充実していてお見事。ハイフェッツのヴァイオリンは、美音ではないかもしれないが、幾何学的な美しさを誇って、技巧の壮絶なるキレに快感さえ感じさせるもの。これで”クサみ”は完全に消えるんです。第2楽章「アンダンテ」もあっという間でっせ、過ぎ去るのは。終楽章は”ただ、素っ気なく速いだけ”とは言わせませんぞ、細部音型迄完璧な描き込み、変幻自在の音色、リズム感の良さ、オーケストラの優しい木管との絡み合いは優雅ですよ、充分。

 最高。

 蛇足です。かなりの太古録音であり、しかも(おそらく)LP板起こしの駅売海賊盤。正規盤、しかも音質をウリにする現役CDの音質はいかがですか?じつは、ラスト辺りで少々音が割れるっぽいんですが。定価2,800円也(との表示)。定価で売られたことはあるんでしょうか。

(2010年1月8日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi