J.S.Bach マタイ受難曲BWV244(ポール・グッドウィン/器楽アンサンブル/合唱団)



J.S.Bach

マタイ受難曲 BWV244(全曲)

ポール・グッドウィン/器楽アンサンブル/合唱団(Rachel Podger Leader)
ルーファス・ミュラー(t)/リチャード・ジャクソン(br)/ナンシー・アルジェンタ(s)/リンダ・リー(ms)/ジョナサン・ペーター・ケニー(ct)ほか
ジョナサン・ミラー(舞台監督)

(Cala Records原盤) BRILLIANT 99048 (p)1995年

 2003年も末、おそらく年齢的に日本最後の演奏となるあろう、ヴィンシャーマンの「マタイ」を聴きに行くこととなりました。以下の自分の文書は1998年くらいの執筆と思うが、呆れ果てるくらい無内容。(恥)5年も経てば人間変わりまっせ。(良いほうにばかり、とはいかないが)真面目に再聴して少々コメントしましょ。

 「長大な曲ですし、どうしても全曲通して聴くのはたいへん」〜もう、そんなことは思わなくなりましたね。「曲が曲だけに緊張感を強いられて、聴き疲れする」〜失礼な。「音楽聴取百遍、意自ずから通ず」・・・Bach って旋律がほんまに美しい。ことし2003年7月、テレビで偶然見かけたバッハ・コレギウム・ジャパンの「マタイ」に釘付け、この作品はワタシにず〜っと近くなって下さいました。もう、あらゆる旋律がするすると耳に、ノーミソに、ココロに吸い込まれる感じ。

 ポール・グッドウィンは高名なるオーボエ奏者であり、現在は指揮者として活躍。ジョナサン・ミラーは演出家で「マタイ」を舞台化した、とのことで、その時の録音かも知れません。器楽のクレジットがないが、ニューヨークのブルックリン・アカデミー・オヴ・ミュージックか?但し、調べた限りでは2000/2001年の上演で、このCDが(p)1995年だから、もっと以前ですよね。(以上、余計なる蘊蓄)

 全151分でカルくCD二枚に収まっていることは、テンポが速めであることを意味しています。もちろん今風の軽やかな、粘らないリズムであることは誰でもわかります。オーボエの粗野な味わいある音色、素朴で地味な弦の響き、オルガンの奥ゆかしい伴奏が際だつのも古楽器アンサンブル故か。

 来なさい。娘たち。私とともに嘆こう・・・と、重苦しく劇的な合唱冒頭がポイントです。眉間に皺でズルズルとじゃ困る。もっと、透明に、リズム軽々と歌ってこそ充分悲劇は伝わるんです。「誰を?」〜こう問いかけられるとドキドキしました。大仰なる表情は必要ない。(これは使用楽器やら、テンポ、演奏スタイルとは別物です)

 ああ、ワタシ注目のこの作品中の白眉「主よ、哀れみたまえ」の印象は5年前と変わらないね。ペーター・ケニー(ct)のノンヴィヴラートは清楚だし、ヴァイオリン・オブリガートはずいぶんとおとなしい。誰もが涙に暮れてしまう「おお、頭は血潮にまみれ」は(リヒターが根底にあるのか)これは少々そっけない、というかさっぱりすぎ。

 「見よ、イエスが両手を広げ」のカッコよさ・・・と言っちゃ、歌詞の趣旨とは大いに異なるが、リズムに乗ったオーボエの躍動、「どこへ?」の合唱の合いの手のたしかさ。やがてイエスは亡くなり、「いつかわたしがこの世を去るとき」のコラールは同じ旋律ながら、前とはイメージが異なってぐっと深刻。「わたしの心よ、わたし自身を清めなさい」のヴァルコエ(?かな)の低音の音域はちょっと苦しい。

 ラスト「私たちは涙を流しながらひざまずいた」〜これは全曲中屈指の名曲です。冒頭「来なさい・・・」、そして「主よ、哀れみたまえ」、「おお、頭は血潮にまみれ」と並んで、もっともココロ震わせていただける時でしょう。ここでは、とても静かにそっと、抑制されて歌われます。欧米と日本では哀しみの表現が違うのか・・・と思っていたけれど、そんなことはない。泣き叫んで、全身を激しく震わせて・・・というばかりが、真の哀しみではない。

 素晴らしい参考サイトを発見、ずいぶんと勉強させていただきました。「マタイ」は摘み聴きを許さない。

マタイぐみ「マタイ受難曲」FOR ビギナー

(2003年11月28日)


(Y氏から詳細情報をいただきましたので、そのまま掲載します。感謝)

去年、アマチュアオーケストラの一員としてマ タイを 演奏する機会がありましたが、それ以前から、クラシカジャパンで たまたま 放映されたミラーの舞台化されたマタイが大変気に入っていて、CD があれば 入手したいと思っていました。

おかげさまで去年の夏にアメリカの アマゾン コムから中古で入手することが出来ました。CDの音は放映された映 像に入って いる音と全く同じでした。

 映像では、1994年に、ロンドンの聖ジョージ劇場で制作されたと なっています。
イギリスのBBCで放送されたもののようです。一種独特の雰囲気のと てもユニークな マタイで、オーケストラ・コーラスとも殆どが若いメンバー(goodwinが声を かけた学生 さんでしょうか?)。全員カジュアルな私服で、指揮とオーケストラは淡々と 演奏する中、 その周囲で、コーラスが静かに立ったり座ったり、激しい表情で言 葉(せりふ)を 交わしたり、小編成なすっきりとしたサウンドと、クールなエヴァ ンゲリストで 私はとても気に入っています。機会があれば是非ご覧下さい。

 先ほど、ページが更新されているのに気づき、唐突で失礼なメー ルで恐縮ですが メールさせていただきました。映像の最後の字幕より、ソリストと オーケストラメンバーの 名前を拾いましたので、参考に送付いたします。

追伸
 バッハコレギウムジャパンのマタイは私も見ました。和声はとて も綺麗ですね。  ちょっと綺麗すぎて本質から外れている様な気もしましたが。

THE ST MATTHEW PASSION

was performed at St George's Theatre London NZ under the musical direction of PAUL GOODWIN

Performing artists:

Richard Jackson, Christ
Nancy Argenta, Soprano
Jonathan Peter Kenny, Counter Tenor
Linda Lee, Mezzo-Soprano
Jamie MacDougall Tenor
Stephen Varcae, Baritone
Rufus Muller, Evangelist

Orchestra One

Violin 1
Clare Salaman (leader)
Adrian Butterfield
Iona Davies

Violin 2
Jonathan Kahan
Joanna Parker

Viola
Jane Rogers

Cello
Daniel Yeadon

Violone
William Hunt

Chamber Organ
James Johnstone

Oboes d'Amore & da Caccia
Gail Hennessy
Catherine Latham

Flute
Rachel Beckett
Andrew Crawford

Orchestra Two

Violine 1
Rachel podger (Leader)
Fiona Huggett
Anna Macdonald

Violine 2
Helen Orsler

Rebecca Miles (Recorder)

Viola
Rachel Byrt

Cello
Helen Gough

Violone & Viol da Gamba
Sarah Cunningham

Chamber Organ
Timothy Roberts

Oboes d'Amore & da Caccia
Caroline Kershaw
Mark Radcliffe

Flute
Christine Garratt
Ashley Solomon (Recorder)

(2004年1月10日)

以下は1998年頃?の文書
 


 このCDは「マタイ」「ヨハネ」「ルカ」「マルコ」の各受難曲をまとめたうちのひとつ。8枚で$15.92。150分でCD2枚に収まったお徳用盤。

 「マタイ受難曲」といえば、LP時代メンゲルベルク(廉価盤で出ていた抜粋。これが当時一番安かった)の濃厚・重厚な演奏の呪縛から逃れられません。(CD買おうかなぁ?どうしようかな1,800円で売っていた)CD時代に入ってからはリヒターの旧録音の峻厳な演奏(抜粋の海賊盤ECC-633)で、ヴェルナーのおおらかな、美しい演奏(これは全曲ERATO B18D-39157〜59)で時々取り出します。旋律の美しい、全編怒濤の感動で、思わず涙モン、極めつけの名曲。

 長大な曲ですし、どうしても全曲通して聴くのはたいへん。曲が曲だけに緊張感を強いられて、聴き疲れするのも事実でした。欧米人の体力には負ける。

 この演奏は、古楽器の鄙びた響き、軽やかで速いテンポは聴きやすいもの。いままで聴いていた劇的・威圧的な音楽とはほど遠くて、スッキリしすぎて少し物足りなく感じます。合唱も人数が少ないようで、最近はこのような演奏スタイルが主流なのでしょうか。

 「主よ、哀れみ給え」における、バロック・ヴァイオリンのノン・ヴィヴラート奏法による素朴な響き、カウンター・テナーの爽やかな味わい。有名な「受難のコラール」は、これが出てくると「お涙ちょうだい」の場ですが、そっけないこと。これが本来の姿なんでしょう。各パートはすごい技巧の冴え、という水準ではありませんが、細部の装飾音なんかは楽しいですし、声楽も清潔な感じ。

 偶然、FMでこの演奏の一部を放送したのを聴きましたから、それなりに知られている録音なのでしょうか。このレーベルらしく、オーケストラのクレジットはありません。もちろん、リブレットも解説もなにもありません。でもこの価格は本当に魅力。録音も上々です。なんといっても、この価格が凄い。文句ないでしょう。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi