To RCA/ARTE NOVA

マータ/ダラス響「High Performance」


RCA  09026-63586-2 Tchaikovsky

イタリア奇想曲 作品45

Mussorgsky

禿げ山の一夜

Dukas  

魔法使いの弟子

Enescu 

ルーマニア狂詩曲 作品11-1

Ravel

ボレロ

マータ/ダラス交響楽団

RCA 09026-63586-2 1980/81年録音  300円で購入

 やった。久々、ビンゴ!のCDでピタリ。先頃「通俗名曲」、とくに「中央アジアの高原にて」の魅力を全面解明した(つもりの冗談か)ワタシだけれど、当然「禿げ山」(もちろんリムスキー・コルサコフ改訂版)の分析に進まねば、と決意していた矢先の出会いでした。マルティノンでは1,000円もしたのに、同じシリーズのこのCDでは(過剰在庫だったせいか)わずか300円。

 ダラス響は日本ではまったく人気がないし、現在のシェフであるリットンのMahler は「安いがツマらないCD」(未聴だから安易な判断できず)とのこと。1995年に残念ながら事故死しちゃったマータ時代が全盛期だったんですよ。このアンサンブルの精度、熱気、勢い、自信、確信、は録音のマジックではないはず。とにかくスッパリと気持ちヨロシい、元気の出る演奏なんです。見つけたら買ってちょうだいな。

 「イタリア奇想曲」〜この曲、中学生時代の放送部のバカヤロウが、放送の穴埋めにやたらとこの曲ばかりワン・パターンで流しやがったので、食傷気味先入観有。なんやら重苦しい前半と、後半のノーテンキぶりに違和感ありませんか?でも、ドラティ/ロンドン響の1955年(超優秀)録音で開眼。マータの鮮度も負けまへん。

 はっとするくらい、立ち上がりのヨロシい金管の鮮度。テンションは高いが、泥臭さは皆無で、都会的洗練された爽やかな解釈。ピタリと決まったアンサンブル。怒濤のオーケストラの迫力。文句あるか(ないでしょ)。

 「禿げ山の一夜」〜ま、原典版がどうの、とカタいことは言わずに物量派オーケストラでゴリゴリやっていただきたい。味わい系も悪くないが、「強引チカラ尽押倒演奏」こそ正しい姿なんですよ。迷いがあっちゃいけない。良き録音、怒濤の爆発で一気に突破!これぞ、この曲の真の魅力を引き出す(いや、魅力などという邪念を考えさせない)唯一の道〜マータの演奏こそ真実なんです。なんやら、はじめて細部まで音が聞こえた、という印象有。

 「魔法使いの弟子」〜これは可愛らしいミッキーマウスのイメージがあるのか、もっと繊細で味わい系であってほしい。リズムに優雅さが不足します。これは選曲のミスか。一歩間違えば恥ずかしい結末となる「ルーマニア狂詩曲」には、躊躇があってはなりません。思いっきりノリノリで、わき目もふらず山を登り切ってください。実際、恥ずかしい曲ナンすから。

 いや、もうモウレツに切れ味のあるオーケストラですね。鳴りっぷりの良さは舌を巻くほど。細部まで魔法のように聞こえる録音が、ある意味人工的でディズニーランドかUSJ(工業用水飲ますなよ)か、というくらいよくできた遊園地の豪華さ。

 ラスト、オーケストラの真価を問われる「ボレロ」。この曲には聴き方(演奏の仕方、責め方)が様々あって、いずれけっこうな難物でしょ。マータは細部まで描き込んで、曖昧さがありません。次々と主旋律を受け持つソロにはやや色気が足りないが、リズムの(几帳面なくらいの)正確さ、ノリ、勢いに文句の付けようもなし。なんという新鮮な味わい。そして興奮。

 こりゃ夏向きのCDだな。精神的に落ち込んでいる人には(逆な意味で)勧められないかも。ボレロは、後半に行けば行くほど高揚し、燃え燃え、鼓動が高まり、血液の循環が速まり、発熱し、発汗し、トランペットの芝居じみたカマシにラスト、ノックダウンされます。(2002年8月29日) 


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi