Ravel ボレロ/Chabrier 狂詩曲「スペイン」/
Borodin 「ダッタン人の踊り」/Rimsky-Korsakov スペイン奇想曲 /
Tchaikovsky大序曲「1812年」
(イーゴリ・マルケヴィッチ)


PHILIPS DMP213 Ravel

ボレロ(1963年)

Chabrier

狂詩曲「スペイン」
(1966年以上スペイン放送交響楽団)

Borodin

歌劇「イーゴリ公」より「ダッタン人の踊り」
(合唱付き/コンセルトヘボウ管弦楽団/オランダ放送合唱団1964年)

Rimsky-Korsakov

スペイン奇想曲 (ロンドン交響楽団1962年)

Tchaikovsky

大序曲「1812年」(コンセルトヘボウ管弦楽団1964年)

イーゴリ・マルケヴィッチ(Igor Markevitch,1912ー1983 烏克蘭→瑞西→伊太利亜)

PHILIPS DMP213

音質は極上、そしてマルケヴィッチはマルケヴィッチ、がちがちの厳しい硬派演奏でっせ。「ボレロ」はオケの技量云々感じさせぬ緻密な集中力(14:50)ヴィヴィッドな熱気愉悦溢れるはずの「スペイン」も息苦しいほど(5:43)「ダッタン人」はスケール大きく(11:14)、オケのコントロール自在なる「スペイン奇想曲」(15:00)大仰にドラマティックなはずの「1812年」も辛口の風情漂う・・・(15:20)。前世代の巨匠たちは個性明快でした(2021年8月「音楽日誌」)
 恥ずかしい15年前コメントさておき、久々の拝聴に新たな感慨がありました。音質、欧州あちこちのオケの色合い個性は異なるけれど優秀録音でしょう。コンピレーションも最高。

 この人はオーケストラを厳しく鍛えたのだと思います。スペイン放送交響楽団の初代首席指揮者として1965ー1972年在任、最初の2曲はいかにも西班牙趣味な作品は、あまり技量的にぱっとしないはずのオケ担当。「ボレロ」は団員が嫌がる演目とか、正確無比なリズムを刻んでクールそのもの、各パートの技量はやや微妙なんだけど、その辺りまったく問題にせぬキレのあるアクセント明快、緻密なアンサンブルそしてバランス。シャルル・ミュンシュの掟破りアッチェレランドの異様な興奮も大好きだけど、怜悧に徹したマルケヴィッチだってたっぷりアツく盛り上がって、これは硬派の演奏でした。

 狂詩曲「スペイン」は愉悦に充ちた躍動作品。こどもの頃から馴染みの旋律も、内声部思わぬ浮き立たせ方があって、この明るさ輝かしさ、爽快なる勢いに圧倒されました。これも細部曖昧さの欠片もなし、速めのテンポに厳しいリズムはメリハリが効いて、たいていの演奏に聴かれる(もったいつけた)ルバートもありません。マルケヴィッチの厳しい統率に遊びがなくて、ちょいと息苦しいほど!

 「ダッタン人の踊り」担当はコンセルトヘボウ。冒頭エキゾチックな旋律を歌うマイルドな木管は(申し訳ないけど)スペイン放響の比に非ず。いきなりの女声合唱が清楚に響いて、弦と温かい響きと遠くからのホルンは夢見るよう。やがてクラリネット、フルートが速い舞曲〜打楽器を伴うフル・オーケストラに合唱が盛大に広がる・・・厚みのあるサウンドは余裕。いつもどおりの正確なるリズムとバランスに、やがて疾走するマルケヴィッチ。スケールも大きく盛り上がって、良いですねぇ、懐かしい旋律最高。Borodinの作品旋律はどれもワン・パターンだけど、けっこう大好き。

 スペイン奇想曲にはロンドンのスーパー・オケ登場。アルボラーダ(アストゥリアの舞曲 アルボラーダ)ー変奏曲(アストゥリア民謡 夕べの踊り Danza prima)ーアルボラーダ(アストゥリアの舞曲 アルボラーダ)ーシェーナとジプシーの歌(アンダルシア・ジプシーの歌 Canto gitano)露西亜人による変幻自在なる西班牙趣味作品。冒頭の舞曲から賑々しい打楽器先頭に、かなり激烈に叩きつけるような迫力、「夕べの踊り」の安寧との対比もお見事なのは、なんせオケが流麗に上手いから。表情豊かに雄弁だけど、やはり”硬派な正確さ”の印象が先に立って、二度目の「アルボラーダ」のヴァイオリン・ソロ、各楽器の妙技に聴き惚れます。いくらでも歌い崩せそうなアクの強い旋律リズムだけど、マルケヴィッチはいつも几帳面に強面ですよ。ラストの追い込み、アッチェレランドもアツく決まって、カスタネットがはっきり聴こえるのもGood!

 ラスト「1812年」は再びコンセルトヘボウ登場。ここは西班牙趣味関係なし、優雅なチェロとヴィオラからスタート(聖歌「神よ汝の民を救い」/ティボール・デ・マヒュラ(Tibor de Machula, 1912ー1982墺太利)は未だ在任していたはず)。露西亜軍の行軍、「ラ・マルセイエーズ」は弱音、強音いずれも余裕の厚み、優雅に歌うところはふくよかにマイルド・サウンド、そこにマルケヴィッチの正確なリズム、時に息苦しいほどの強烈な統率が効いております。やがて迫りくる全戦闘状態の管楽器各パートの動きには初めて気付くような内声部浮き立って、待ってました!大砲5発は特殊効果音なし、打楽器だけというのはマルケヴィッチの矜持でしょう。

 鐘は色彩豊かに種々盛大。ラスト「ロシア帝国国歌」に大砲と鐘鳴り響いて大団円。満足度も解像度も高い演奏でした。

(2021年11月27日)

 もっとシンプルに、素直に音楽を楽しまなくっちゃ。もとより、ド・シロウトの密かな楽しみのためのサイト(あくまで自らの)であって、誰も専門的な価値情報を求めるはずもないのはわかっていることなのに、”原点”を忘れて”惰性”へと流されてしまいます。結果、サイト更新が”楽しみの結果”ではなく、”それ自体が目的”みたいになってしまって、苦痛へと至る・・・バッカみたい。CDはほんまに安くなって、いつしか「一生掛かっても聴き切れない」物量となって、ワタシの眼前にそびえ立ちます。おそらくは十数年に渡るCD生活で、処分したものは数百枚(もしかして1,000の単位?)に上ると思うが、時として”嗚呼、もう音楽聴けません・・・”的感慨溢れて、またそんなことの繰り返しが・・・

 有名無名の演奏家、作品問わず、虚心に耳を傾け、ココロ踊らせる、そんな音楽生活でありたい。その前提は健康と、それなりの経済的前提と、家庭仕事の安定(主にココロの)となりましょう。閑話休題(それはさておき)この一枚も懐かしい、ワタシの(CDとして)原点の一枚か・・・いまとなっては少々珍しい音源へと至りました。以下、以前の更新分では「たしか晩年にBeethoven の交響曲全集をラムルー管と録音していたはず」というのは事実と違っていて、全集楽譜の校訂はしたが録音そのものは数曲しか残さなかったと思います。

 CDは(結果的に)たくさん手許に貯まってしまったので、同じ音源を再聴するのにずいぶんとインターバルが空きますね。(どこにいったのか・・・行方不明なことも)数年の間に、嗜好がガラリと変化したり、音質そのものへの考え方も変わってしまって驚くことしばしば。(ぜいぶん長い前置きだ)で、このCDおそらく7年ほどの懐かしい再会か。マルケヴィッチが様々なオケを使い分けているのが興味深い。たんなる音源寄せ集めかも知れないが。

 管弦楽の精華「ボレロ」はしかも録音鮮明。シンプルな旋律繰り返しだから、オケの技量を見るには最適な作品でして、たしかにスペイン放送交響楽団の個々のソロ(特に管楽器)は少々洗練デリカシー、艶に欠ける感じも有。弦だって薄さが気にならんでもない。しかし、アンサンブルの集中力存分で、リズムのキレ、ノリ、そしてアツく燃えるような”これぞクレッシェンド!”的白熱押し寄せて、これは久々”正統派ボレロ”(というか、ド・シロウトが期待するような)として完成しておりました。嗚呼、楽しい。

 「シャブリエ」は、ノリノリな熱気が少々硬質過ぎ、走り過ぎかな?余裕ユーモア足りませんか。もっと柔軟な(少々エエ加減でもよろしいから)”粋”が欲しくなるけど、やはりストレート系大爆発の魅力たっぷり。このアツさは貴重ですよ。なんども聴いている作品だけれど、硬派最右翼の魅力に間違いなし。

 一般に”なんでも好き!”なBorodinの代表作である「だったん人」は、当然”合唱入り”であります。これでこそ、初めてオペラ原型の片鱗が伺える・・・かも。オケの余裕たっぷりで、流石コンセルトヘボウの柔らかくも厚み、奥行きある、しかも洗練された響きは(それだけで)魅力です。合唱だって、バランス感覚が素晴らしい。でもね、先のスペイン放響は「いかにもマルケヴィッチが力業(ちからわざ)で牛耳ってます!」的緊張(=個性。不器用だけれど鋭敏なる反応)があったが、こちらはオーソドックな味わいで、”ややフツウ”と評しては、失礼か。いえいえ、おそらくはいままで聴いたウチ最高峰の完成度でしょう、きっと。

 「スペイン奇想曲」はロンドン交響楽団ですね。”弾むような元気の良さ、推進力がイチ押しの名演”とは7年前の自らのコメントだけれど、なるほど。時に他の演奏を聴いて、脳裏に蘇っていたのはこの録音だったんだな。ロンドン交響楽団の”反応”はエエですね。録音会場残響問題もあるんだろうが、スペイン放送交響楽団との(ノリノリ)録音に、オケの技量を更にプラスしたような、つまりはマルケヴィッチとの相性を感じさせる演奏でした。録音もGood!

 さて意外とピン!とくる録音が少ないのが大序曲「1812年」か。ま、ドラティ/ミネアポリス交響楽団という超弩級録音(1958年)があって、録音には仰け反るけれど演奏的には最上!とは言い切れない・・・(今更)。当然先の「だったん人」と同方向の演奏であって、オケの繊細なる配慮と余裕が厚みのあるサウンドに乗って・・・云々であるのは当たり前。但し、やはりマルケヴィッチの切れ味を優先させる方向と、オケの個性が異なる(少々リズムが重い)ことは感じられて、コンセルトヘボウにはハイティンク、コリン・デイヴィスの自然体演奏が似合うのか・・・(少々旧聞ですか?)

 合唱も大砲も欲しかったなぁ。予算が足りなかったのか。それともマルケヴィッチの意向か。それでも、金管のマイルドな厚い響きはほんまに魅力であって、このCDラストを飾るに相応しい演奏でした。当然、録音も上々。

 鋭利な切れ味リズムと色彩感、そんなマルケヴィッチの個性が楽しめる一枚でした。

(2006年4月28日)


 このCDは1990年頃、PHILIPSレーヴェルが「コンサート・クラシックス」全30枚で出した国内盤の廉価盤シリーズの一枚。税込み1,200円と書いてありますが、いまでもたまに売れ残りを見かけること有。
 輸入盤でも同じ表紙したね。(選曲は一部異なる)解説も何もなくて、CDへの曲名表示が日本語、「Made in Japan」と印刷があるのみ。60年代の往年の名演奏を中心とした、なかなか聴き応えのありそうなシリーズでした。

 マルケヴィッチは、1983年に70歳で亡くなった往年の名指揮者。かなり著名であり、録音も多いのですが、意外とマイナーなオケとの録音がある(メジャーなポストに恵まれなかった)不思議な人でもありました。たしか晩年にBeethoven の交響曲全集をラムルー管と録音していたはずで、第9番をLPで偶然に手に入れた(現在はDATへ)ワタシとしては、ぜひ全曲廉価盤CDで復活してほしいところ。

 このCD、やや不思議な選曲。
 スペイン系3曲+中央アジア+ロシアものという構成になっており、いかにも寄せ集めらしい無定見さが魅力。通俗名曲といっても良いでしょう。このレーベル特有の中音域の暖かい名録音です。

 「スペイン奇想曲」の弾むような元気の良さ、推進力がイチ押しの名演です。LSOの技術は最高。

 スペイン放響との2曲は「リズム命」の曲で、マルケヴィッチにピッタリ。残念ながらオケの弱さが、かなり鮮明な録音のなかから聴こえてきて、オケの主席の力量がもろに出ています。オケの懸命な演奏ぶりと、指揮者の叱咤激励ぶりが楽しめます。こういう録音には目がないワタシ。

 コンセルトヘボウ管弦楽団曲は、オケの響きは分厚く豪華ですが、マルケヴィッチの鋭いリズムに反応し切れていません。アンサンブルも個々のパートの技量も立派。しかし、やや重くてマルケヴィッチの「切れ味」が生きていないと思います。

 ・・・・・・・・・・・とは云いながら、立派な演奏であるのはたしか。「マルケヴィッチであれば」、という期待込みの聴き方だと、評価が厳しくなるだけのこと。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi