Mahler 交響曲「大地の歌」
(ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィル/
エルンスト・ヘフリガー/ミルドレッド・ミラー1960年)


CBS/SONY 28DC 5055  1960年録音 Mahler

交響曲「大地の歌」

ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニー/エルンスト・ヘフリガー(t)/ミルドレッド・ミラー(ms)

CBS/SONY 28DC 5055 1960年録音  500円

 声楽は一般に聴く機会が少ないんだけれど、Bach 、Mozart そしてMahler 辺りは例外となって、まったく抵抗なくフツウに聴いております。ワタシの世代は(そして諸先輩も)「大地の歌」だったらワルター/ウィーン・フィル/フェリア(1952年)が出会いでしょうか。1936年(ウィーン・フィル)と併せLP時代より愛聴しておりました。ブルーノ・ワルターは巨匠世代(1876年日-1962年)でありながら長命であったため、こんな音質状態のよろしい録音を残して下さったことに感謝。レシートが残っていて2004年の購入、おそらくは購入直後に聴いただけで、6年ぶりの再聴か。驚異的な鮮度、奥行き、広がり、声楽とのバランスを誇って、最新録音に負けぬ極上音質であります。第1/3/5楽章(ヘフリガー)が4月25日、第2/4/6楽章は4月18日の収録であって、前者のほうがより鮮明であるといった発見もありました。

 既にバーンスタイン時代のニューヨーク・フィルだけれど、アンサンブルの細部精緻なこと、描き込みの徹底に驚かされます。いつもの明るく、ぽってりと肉付きのよい骨太サウンドなんだけど、粗々しさ皆無、瑞々しく潤いがあって絶好調であります。例の如し中庸のテンポ、エキセントリックに煽ったり、走ったり、デモーニッシュに深刻さを強調しない。自然で優しい、繊細なる歌い口はワルターの世界であります。時代の切迫した空気(1936年)やら、オーケストラの美しさ+フェリアの個性的な歌唱を堪能(1952年)する目的ともかく、これだけ条件が整って下されば、日常聴きにはこれが一番よろしいではないか、と思います。(ちなみにLP時代よりCDに至って、何度もリマスタリングされ、各々音質が異なるらしい/当CDは(c)1988国内盤/オーディオは埒外なので言及不能)

 あとは、ニューヨーク・フィルの(ネアカ)サウンド、歌い手の個性の嗜好問題でしょう。エルンスト・ヘフリガー(Ernst Haefliger, 1919年ー2007年)は当時41歳、言わずと知れた20世紀最高のテナーの一人、脂の乗りきった時期の録音となります。端正で生真面目、ユリウス・パツァークの無頼な歌唱(歌い崩し?)に馴染んだ耳には、その硬派で楷書の表現に驚いた記憶有。(1956年ベイヌム盤でも素晴らしいソロを担当している)これは慣れの問題だから、こちらを最初に聴いておけば逆の違和感があったことでしょう。最近の若手で聴くと、こちら系端正な表現が多いような気がする・・・ワタシはテナー担当の第1/3/5楽章が大好きで、とくに第5楽章「春に酔えるもの」

Der Vogel Zwitschert:Ja!
 この歌声にオーボエ(鳥の声を表現しているのか)が呼応するでしょう?その辺りがユーモラスで大好き。オリエンタルな旋律大好き。

 ミルドレッド・ミラーはワルターとの録音が数種残っている(「アルト・ラプソディ」「さすらう若人の歌」など)し、1950年代メトロポリタン歌劇場に出演していたことはネット検索できました。でも、詳細情報全然探せない。アメリカで活躍した人なんでしょう。深みがあり、カスリーン・フェリアほどのクセ(個性?)を感じさせない、ヘフリガー同様端正な歌唱であります。抑制が利いた表現でクールであり、ワルターの入念なる表現と見事にマッチしておりました。終楽章「告別」のしみじみとした諦念に痺れました。

 LP以来馴染みの中国絵の出典はなんでしょうか。どなたかご教授願う。

(2010年5月14日)


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written by wabisuke hayashi