Mahler 交響曲第6番イ短調
(マルクス・シュテンツ/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団)


OEHMS OC651 Mahler

交響曲第6番イ短調

マルクス・シュテンツ/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

OEHMS OC651 2013年録音

 ただでさえ蒸し暑い時期に豪雨被害+コロナ蔓延して打つ手なし逼塞自粛の日々、せめてご近所安い居酒屋に冷たいビールでも、といった願いも”まんぼう”とやら、思うに任せません。音楽への集中力も失っております。ちょっと根性入れて、最近その巨大さ故に敬遠気味なMahlerの大曲を聴きましょう。ここ数年異形に怪しい第6番はやや苦手に感じて、30年ほど前FMから拝聴したジュゼッペ・シノーポリ/シュトゥットガルト放送交響曲(1985年ライヴ)感動の記憶何処?状態をなんとか克服したい、そんな思いもありました。

 Markus Stenz(1965-独逸)はこのオケ首席在任2003ー2014年、全集録音完成して歌劇場のオケはたいした力量ですよ、ここでは第2楽章に緩徐楽章「Andante moderato」に配置する版採用しておりました。リアルな、例えば各パート不自然に浮き立たせたり、低音(打楽器)をド迫力に強調しない優秀録音でした。

 第1楽章「Allegro energico, ma non troppo(激しく、しかし腰のすわったテンポで)。低弦がズンズンと急き立てるように深刻な行進曲風開始、第1主題も悲痛な叫び続いて”悲劇的”な雰囲気満載。やがてティンパニのリズムに載ってトランペットの和音が「生」→「死」へ、そして「アルマの主題」が甘く歌う・・・提示部反復有。ステキな音楽はできるだけたくさん聴きたいから繰り返しは欲しいものです。展開部はチェレスタとカウベルが印象的な静謐なところ、ホルン・ソロも抑制的。異様に緊張感を高める雄弁な演奏に非ず、テンポの揺れとタメに恣意的なものを感じさせぬ流れの良さ、熱気、メリハリとバランス重視路線でしょう。厚みのある柔らかい金管先頭に、オケの技量に不足を感じさせません。(23:40)

 第2楽章「Andante moderato」。第1楽章「Allegro」→「Scherzo」と続けると、リズムが変わっただけでワン・パターンな行進曲風イメージになるかも、但し「Andante」→終楽章突入のほうがその対比は効果的なのでしょう。ここでは第1楽章の深刻な緊張のあとに瞑想する、静謐な緩徐楽章を配置しております。歌謡性溢れる切ない主題は、歌心に充ちた優しい世界であります。これが楽章全編を支配して弦、木管、金管と歌い継がれ、切々と寄せては返す陶酔連続。各パート滋味深い音色に歌い交わして、響きは混じり合い溶け合って情感がせり上がって行くところ、この作品の白眉でしょう。ハープ、チェレスタ、カウベルも印象的に登場して、空気は清涼であります。(14:47)

 第3楽章「Scherzo(重々しく)ド・シロウト的には第1楽章「Allegro」と雰囲気クリソツ。ズンズンと深刻なリズムを刻んでも3/8拍子だから、これで行進はできず、風情はいっそうの狂気を孕みます。ティンパニに金管が激しく叫んでも、メタリックに突出しないサウンドが独墺系伝統なのでしょう。金管技量は余裕の上手さ。静謐瞑想な前楽章との対比、緊張感は効果的、トリオの抑制に甘さはありません。頻繁にテンポは揺れ動き、景色は変わり続けて、この辺りシュテンツのコントロールは完璧、流れに不自然さはありません。(12:48)

 第4楽章「Finale, allegro moderato」。ここは凄い場面ですよ。渾身のハンマー登場、ド・シロウトには打楽器デフォルメしてしっかりその存在を堪能させて欲しいところ(例えばジョージ・ショルティ1970年)長いタメの挙げ句低弦のピチカートが止めを刺すところ、幾度聴いてもドキドキします。出足、その低弦のピチカートからハープ、チェレスタがキラキラと脂粉を撒き散らしながら弦が叫んで、金管が怪しく受け止める・・・ショルティじゃないけれど、ここでの金管・打楽器はずいぶんと抑制気味と思います。なにか大きな事件を予感させる不吉な開始、回帰する第1楽章冒頭。高らかに歌う金管も短調に減衰する「生」→「死」のパターンから、提示部は勢いのある行進曲となります。あとは、クライマックスに向けて全力で駆け抜けるところ、オケはパワフルに鳴り渡っても、全体として抑制気味じゃないでしょうか。

 全身全霊汗水飛び散らせてリミッター解除、といった風情に非ず。端正なアンサンブルとバランスに耳あたりよろしく、作品構成をしっかり考えた21世紀演奏なのでしょう。久々に名曲に集中いたしました。ハンマー炸裂!はデフォルメしなしでも、たっぷり迫力いただきました。最終盤は思いっきり快速にテンポ・アップ。(29:50)

(2021年8月14日)

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written by wabisuke hayashi