Mahler 交響曲第5番嬰ハ短調
(エミール・タバコフ/ソフィア・フィル)
Mahler
交響曲第5番嬰ハ短調
エミール・タバコフ/ソフィア・フィルハーモニー
CAPRICCIO 79043 1988年10月録音
Emil Tabakov(1949-勃牙利)はMahler、Shostakovichの交響曲全集を録音し、自身も作曲家とのこと(彼の作品は聴いたことはない)。未だあまり日本での知名度はありません。15年前、例の如く薄いコメントを残しておりました。当時は非メジャー知名度薄い(そして価格の安い)マニアなCDを好んで集めておりました。
冒頭から出ずっぱりのトランペットからなかなか優秀で、緊張感もあります。細部、アンサンブルのズレ、というより、リズムのキレとノリに弱さが散見されますね。個々の楽器のソロにも少々魅力に足りない。(時にピッチも・・・少々)しかし、なかなか熱演!誠実。有名な「アダージエット」・・・これも同様の音質、奥床しい清潔さに充ちて爽やかでした。そのまま最終楽章に進んだけれど、アンサンブルは時に乱れ、テンションが続かないところは散見されるものの、素朴で前向きな表現に胸打たれれます。(一般には”ヘロ演奏”と評価されるだろうが)
20−21世紀、Mahlerの交響曲全集も数多く出現した日常、ちょいと存在感は薄くなって、久々の爾来拝聴となりました。”リズムのキレとノリに弱さが散見・・・個々の楽器のソロにも少々魅力に足りない”というのは少々厳しすぎるコメント、全体にやや響きは薄いけれど丁寧誠実なアンサンブルに仕上げは洗練され、パワーも芯も足りない、鳴らないオーケストラと云った印象は変わりません。勃牙利のオーケストラ事情には疎くて、このオーケストラはオペラハウスとは別物ですか?音質は分離よろしく良好、低音が足りないかも知れません。収録音量レベルも低い。
第1楽章「葬送行進曲 In gemessenem Schritt. Streng. Wie ein Kondukt.(正確な速さで。厳粛に。葬列のように)」冒頭トランペット・ソロから導かれて悲劇的な爆発へ、オーケストラのサウンドはサウンドは大人しめに迫力いま一歩、ごりごりと物々しい切迫感より誠実が際立つもの。これはサウンドの個性なのでしょう。タバコフの統率はオーケストラの弱さ(管楽器が細い)を超えて、丁寧な仕上げ。(11:39)
第2楽章「Sturmisch bewegt. Mit grosster Vehemenz. (嵐のような荒々しい動きをもって。最大の激烈さをもって)」コントラバスの絶叫から始まる切迫した、ものものしい楽章。金管大活躍!この辺り、ジョージ・ショルティやクラウディオ・アバド率いるシカゴ交響楽団のパワフルな切れ味が懐かしいもの。第2主題は弦による叙情的な歌、この辺りの対比は充分描き分けられて、やはり誠実丁寧、しかしオーケストラにはもっとパワーを!(14:59)
第3楽章「スケルツォ Kraftig, nicht zu schnell.(力強く、速すぎずに)」冒頭の4本のホルンから伸びやかに牧歌的な楽章。こうしてみるとトラペット→コントラバス→ホルンと印象的な出足で各楽章を印象付けているのですね。レントラーのリズムは闊達、誠心誠意なアンサンブルに間違いないけれど(再び)もっとパワーを!自在な金管の活躍には音色に魅力が足りない、テンションが低い。この楽章にはもっと羽目を外すような熱気が必要です。(17:54)
第4楽章「Adagietto. Sehr langsam.(アダージェット 非常に遅く)」この作品の一番人気、白眉である「ヴェニスに死す」(ルキノ・ヴェンスコンティ監督)官能の楽章は纏綿粘着質でも快速熱気疾走でもない、爽やかに涼やかに淡々と進めてこれはこれで充分説得力のあるもの。(10:42)
第5楽章「Rondo-Finale. Allegro giocoso (ロンド - フィナーレ。アレグロ・楽しげに)」ここは前楽章の静謐との対比から時に違和感のある(元気過ぎ明る過ぎ)演奏に出会うもの。ここでは抑制した開始が違和感なく継続して、逆に開放感、爆発に不足します。セッション録音なのにオーケストラにはやや疲れが見られて、テンション時にやや落ち、アンサンブルが乱れるとの指摘は15年前と同じ印象でした。それでも誠心誠意の演奏に胸を打たれる作品であります。(14:19) (2020年10月25日)
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