Mahler 交響曲第5番 嬰ハ短調
(ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィル/1993年)
Mahler
交響曲第5番 嬰ハ短調
ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィル
EXTON OVCL00258 1993年録音
Vaclav Neumann(1920ー1995捷克)による一種、特別な切迫感と官能性のある作品。旧録音(1977年)は2010年に拝聴。最晩年の再録音は全集になりませんでした。。四管編成+打楽器8種+ハープという大編成、近代管弦楽の精華とでも呼ぶべき傑作でしょう。初めてこの演奏を聴いた印象はアンサンブルが微妙にユルくパワーに足りない、サウンドはノンビリ牧歌的、音録りの思想?ノイマンの意向なのかパワフルな押し出しに弱く、ずいぶんと控えめ、ジミに冴えぬ演奏と感じたもの。これはハズれやったのか・・・でも、世評絶賛の人は多いのですね・・・やがて幾度か繰り返し聴いて、やがてガラリと印象を変えました。EXTONの音質はリアルに極上、低音も良く効いておりました。前のめり激情型切迫に非ず、細部迄クリア入念に噛み締めるような仕上げ。チェコ・フィルは意外とけっこう気持ちよく鳴っておりました。1966年録音も昔聴いて、うっすらとした記憶では音質の違い=オーケストラの迫力は圧倒的。
第1楽章「Trauermarsch」冒頭トランペットの響きはクリアに爽快、ティンパニも金管も強烈だけど葬送行進曲の歩みは常に一歩引いて八分目の力加減。威圧感は感じさせない。第1トリオの激情もクールに慌てない。金管のパワーやリズムのキレにも不足は感じさせない充実した響き。余談だけれど、このあとにバーンスタイン/ウィーン・フィル(1972年)の入念一歩一歩確かめるような足取りに圧倒され、こちらの素直な流れとの個性の違いに驚いたもの。(11:26)
第2楽章「Sturmisch bewegt. Mit grosster Vehemenz(嵐のような荒々しい動きをもって。最大の激烈さをもって)」楷書の明晰な表現、この指示にも力任せの絶叫にに遠く、ホルンもトランペットもメロウなヴィヴラートに朗々と歌って魅惑でした。第2主題のチェロは哀愁、つねに抑制と気品を意識させるもの。金管乱舞爆発(13:33)
第3楽章「Scherzo」は名手Zdenek Tylsar(1945ー2006捷克)のホルンが朗々とスムース。ゆったりとしたテンポ、ややノンビリと噛み締めるように落ち着いたリズム、当初はずいぶんとジミに感じたもの。やがて刺激的ならざる牧歌的な響きに落ち着いたスケール、金管群のマイルドな響きに納得して聴き惚れたものです。(18:59)
一番人気第4楽章「Adagietto」は金管お休み、やすらぎと気品に充ちた最高の静謐。ここもやや遅めのテンポに、濃密な吐息のような官能は優しく、弦とハープはサワサワと風が吹き抜けるよう。情感は爽やかに揺れ動くチェコ・フィルの弦の歌は絶品でした。(10:33)
第5楽章「Rond,Finnale」冒頭ホルンのそっと甘いヴィヴラートが絶品。テンポは遅め、激情には走らない。つねに余裕を以てややもどかしいほど悠々、力みなくていねいな描き込みに噛み締めるようなフィナーレでした。汗水熱狂とは無縁の余裕表現はクリアに響いて、金管の分離最高、濁りのない爽やかなものでした。音質、表現個性ともこの作品のヴェリ・ベスト。(16:09)
(2025年2月1日)
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