Mahler 交響曲第5番 嬰ハ短調
(ガリー・ベルティーニ/ケルン放送交響楽団)


EMI 0946 3 40238 2 5  Mahler

交響曲第5番 嬰ハ短調

ガリー・ベルティーニ/ケルン放送交響楽団

EMI 0946 3 40238 2 5 1990年録音

 日本でもお馴染みだったGary Bertini(1927ー2005以色列)も亡くなって既に13年。前回拝聴は2014年。曰く

細部明晰な描き込み、適正中庸なテンポ設定、各パート際立つ美しさ、一糸乱れぬアンサンブルの集中力、縦線の整い方、キレ、鳴り切って芯のあるオーケストラの響き、恣意性を感じさせぬ旋律の歌・・・粘着質な詠嘆に非ず、贅肉脂肪分を削ぎ落とした”浪漫の欠片もない”演奏にも非ず、ほとんど理想的バランス
 当時、テンシュテットとは天と地ほど音質の鮮度が違う! とも書いて、瑞々しい残響と広がり、各パートの存在感定位も明瞭。第1楽章「葬送行進曲。In gemessenem Schritt. Streng. Wie ein Kondukt.(正確な速さで。厳粛に。葬列のように)」冒頭のトランペット・ソロからその存在感は驚くほどクリア、詠嘆や情念に揺れず、知的な集中力に細部ていねい仕上げ、WDR Sinfonieorchester Kolnも驚くべき骨太にテンションの高さ、旋律たっぷりを歌わせて適正なテンポと熱に充ちて、スカッとした響きはほとんど理想的でしょう。(11:16)

 第2楽章「Sturmisch bewegt. Mit grosster Vehemenz. (嵐のような荒々しい動きをもって。最大の激烈さをもって)」は表題指示どおり「嵐のような荒々しい動き」は余裕の爆発、金管先頭にオーケストラの技量をたっぷり感じさせるところ。詠嘆に揺れる哀愁の第2主題の歌とのバランス、スケールの大きさ、テンポのタメ、動きに不自然さもありません。打楽器のハラに響く低音も最高。壮麗なる響きは爽快です。(14:46)

 ここ最近お気に入りの第3楽章「Kraftig, nicht zu schnell.(力強く、速すぎずに)」のホルン・ソロ先頭に圧巻パワフル骨太な金管乱舞して快感、先日聴いたギュンター・ヘルビッヒ/BBCフィル(1984年ライヴ)だって頑張っているじゃないか!そう書いたけれど、こちら縦線ピタリと合わせて濃密華やかなサウンド、スウィング高揚するレントラーは桁違いのパワーでしょう。このスケルツォ楽章が一番長くて、じつは全曲のクライマックスなのですね。ラスト、ダメ押しの金管に胸が高鳴ります。(17:18)

 第4楽章「Adagietto. Sehr langsam. (非常に遅く)」はたっぷり端正に濃厚な吐息、寄せては返す波のような官能。ここの主役は一転弦楽器の抑えたていねいなニュアンス、Mahlerらしい低音ハープが支えて美しさ極まるところ。ケルンの弦も艷やかに歌って一流の響き、金管はお休みして終楽章に備えております。(10:06)終楽章「Rondo-Finale. Allegro giocoso(楽しげに)」はホルンの朗らかな一撃にファゴット、クラリネットが呼応して、その存在感のクリアなこと、金管の圧が凄い!上機嫌な旋律は分厚い響きに力みなく、流れよろしく、微笑みを浮かべて最後まで体力充分に乗り切りました。(14:25)これは音質、オーケストラの技量、ベルティーニの統率と知的な詠嘆がバランスして、いままで聴いたヴェリ・ベストかも。

(2023年6月10日)

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written by wabisuke hayashi