Mahler 交響曲第2番ハ短調「復活」
(ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団/合唱団1959年ライヴ)


これはSJB1078 Mahler

交響曲第2番ハ短調「復活」

ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団/合唱団/Victoria Elliott(s)/Eugenia Zareska(ms)

Free Trade Hall, Manchester March 12, 1959年ライヴ(写真はSJB1078)

 放送録音のエアチェックらしい。第2楽章「アンダンテ・モデラート」でテープがもつれたような乱れ有。これはライヴ故のアツい推進力に溢れた演奏であって、冒頭からもの凄い集中力、第3楽章「スケルツォ/魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」に至っては爆発し、叫び、揺れ動き、優しく陶酔する・・・
 前任だったニューヨーク・フィルはMahler のオーケストラ、彼の作品を振れないと話にならぬ、ということでしょう。期待に違わずスケール大きく、アツい、縦横無尽にテンポを揺らせてとことん歌う!といった凄い演奏。ユージニア・ザレスカ?の太い声質も説得力存在感充分。ハレ合唱団も〜つまり声楽の扱いも上手いということですよ。これでちゃんとしたステレオ・セッション録音であったらなぁ、歴史的名盤の一つになり得たと思うんだけれど。
(「音楽日誌」2011年10月より)
 バルビローリだったら晩年シュトゥットガルト放送交響楽団とのライヴ(1970年)が音質もよろしく、有名でしょう。こちら、ネットより音源データ入手、自主CD化して挙句忘却していたもの。歴史的音源は(主に音質的な理由で)拝聴機会は減って、棚中整理していてある日再発見いたしました。直接音中心に残響少ないオンマイク、音質は曇り気味、種々打楽器の音量大きく前面、金管の響きは濁って残念なモノラル・ライヴであります。平板に奥行きが足りないけれど会場ノイズはリアル。テンポは中庸、第1楽章「Allegro maestoso」は燃えるように激しい迫力と集中力にて開始、第2楽章「Andante moderato」冒頭辺りテープ劣化甚だしくも音揺れ有、演奏そのもはアツくテンポが揺れて、滔々と歌うもの。弦のポルタメントもたっぷり。

 ハレ管弦楽団は響きが薄いとかオーケストラの技量云々されることがあるけれど、バルビローリの統率に間違いなし、縦横無尽なテンポな揺れに応えるアンサンブルであります。第3楽章「Scherzo: In ruhig fliesender Bewegung」ここは「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」によるユーモラスなスケルツォ。冒頭のティンパニは衝撃的、リズムはノリノリ、流麗かつヴィヴィッドであります。最終盤は思いっきりテンポを上げて煽っておりました。第4楽章「原光(Urlicht)」「赤い小さな薔薇よ」と歌い出すユージニア・ザレスカ(1910ー1979)この人は1960年前後、あちこちMahler演奏に参加しておりますね。時代を感じさせて深く雄弁、重い声質に驚かされます。ラス前の陶酔が続きました。

 そしてラスト第5楽章「Im Tempo des Scherzos」(荒野を進むように)。激しい管弦楽の開始〜弱音ホルンのハ長調主題〜木管による「怒りの日」主題へ、この辺り静かにやがて「復活」の動機への成長してシミジミ。できれば打楽器金管を伴う大音響、静謐なところもクリアな音質にて聴きたいもの。バルビローリの集中力、情熱、テンションはたっぷり味わえます。金管アンサンブルにもオーケストラの弱さなどは感じさせない(独墺風の音色じゃないけど)。行進曲風の推進力も文句ないでしょう。

 やがて静寂が・・・遠い夜鶯(木管の啼き交わし)〜聖者たちと天上の者たちの合唱へ。ハレ合唱団、ヴィクトリア・エリオット(s)も、先のザレスカ同様時代を感じさせる深刻さ、神秘さ、ヴィヴラート(ポルタメント?の印象か)を感じさせました。この辺り、いかにもバルビローリが好きそうな(似合った)雄弁な音楽やなぁ。表情豊かな声楽の扱いはお見事。管弦楽を思い切った”間”、決然と対比させるアツい表現に胸打たれ、ライヴでの感銘が想像できますよ。音質乗り越えて(あまりよろしくないからこそ)アツい感銘をたっぷりいただきました。盛大な喝采有。

(2017年12月3日)

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written by wabisuke hayashi