Mahler 交響曲第1番ニ長調
(ミヒャエル・ハラース/ポーランド放送交響楽団)


NAXOS 8.550522 Mahler

交響曲第1番ニ長調
花の章

ミヒャエル・ハラース/ポーランド放送交響楽団

NAXOS 8.550522 1999年

 Michael Halasz(1938ー)はハンガリー出身のヴェテラン、ファゴット奏者(フィルハーモニア・フンガリカ/そうか、ハンガリー動乱の流れで独逸にきたのかも)典型的なオペラハウスのカペルマイスター、NAXOSに多く録音しております。この作品は小学生時代からのお気に入り、世代的にブルーノ・ワルター(1961年)に青春の胸の痛みをきゅっとさせて聴き惚れたものです。別途「花の章」(Blumine (original second movement))があると知ったのはいつだったのか・・・優しく、静かな”余禄”はぜひ一緒に聴きたいもの、作品の成り立ち的に正しくないとされていても。

 NAXOSのポーランド放送交響楽団の音質は大概似ていて、やや残響過多、金属的なサウンド、ここでは雰囲気もあってエエ感じの瑞々しい音質でしょう。第1楽章「Langsam, schleppend(ゆるやかに、重々しく)」は提示部繰り返し。浪漫に揺れる、といった風情に非ず、誠実に細部描き込んで清潔なフレージングはテンポ速め。色気のあるサウンドじゃないにせよ、技術的には充分に整ってニュアンスに不足することもない。「朝の野原を歩けば」の主題に青春の憧憬をたっぷり感じ取ることは可能でしょう。

 第2楽章「Kraftig bewegt, doch nicht zu schnell(力強く運動して)」。低弦のリズムアクセントを強調する演奏も見掛けるけど、ここは基本ストレート系、素直なメリハリ表現に躍動しております。テンポアップに充分盛り上がって中間部レントラーへ流れ込みました。ここも第1楽章同様「誠実・清潔」、大見栄を切るような大仰な表現に非ず、必要にして充分な集中力であります。

 第3楽章「Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen(緩慢でなく、荘重に威厳をもって)」。冒頭コントラバスの主題は上手く演奏しすぎる風潮になって、本来もっと無骨に、たどたどしく表現されるべきもの、チェロじゃないんだし。ここではまずまずかなぁ。勝手な聴き手の言い草だけど、この楽章はもっと”浪漫に揺れ”てほしいところ、ハラースの表現はちょいと真っ当に生真面目過ぎて、オモロないというか、陰影が足りない。中間部「彼女の青い眼が」が美しく、夢見るように流れるところ、前後半をごりごり演ってくれないと対比が浮き立たない。主部の回帰で突然テンポアップするでしょ?ここも羽目を外さないから、ちょいと不満です。

 第4楽章「Sturmisch bewegt(嵐のように運動して)」。金管の絶叫は各パート分離してダンゴにならず、豊かに響きあって美しい。第1主題は迫力充分、第2主題との優雅な対比も効果的だけど、ポーランド放送交響楽団の弦は少々冷たい音色かと。あとはフィナーレに向けて金管大活躍、この楽章は誠実な表現が似合って不満はありません。第1楽章が断片的に再現され、やがて「生のテーマ」が静かに登場して第4楽章第1主題に回帰、冒頭ファンファーレが華やかに鳴り響いてフィナーレへ・・・この楽章って、油断するとバカ騒ぎに聴き手が白けるといったことにもなりかねない危ういところ。生真面目な姿勢が似合って、みごとなまとまりが付きました。

 「花の章(Blumine)」は第2楽章に配置して聴きました。トランペットの懐かしい旋律が歌います。現行の第1楽章が華やかに終了して、第2楽章の躍動が始まる前、その対比を活かすべき静謐安寧な美しい楽章であります。

(2016年9月11日)

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written by wabisuke hayashi