Mahler 交響曲第1番ニ長調
(コリン・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団)


NOVALIS NOV-16 中古420円にて購入/定価3,200円也
Mahler

交響曲第1番ニ長調

コリン・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団

NOVALIS NOV-16 1988年録音 中古420円にて購入(定価3,200円!との表示有)

 コリン・デイヴィスは1927年の生まれだから、既に80歳を越えました。母国ロンドン交響楽団の主席指揮者をヴァレリー・ゲルギエフに譲ったとのこと。巨匠クーベリック辞任後、コンドラシンが急逝したため1982〜1992年バイエルン放送交響楽団の主席を務めたのは周知の通り。南独逸地方の暖かい、厚みのあるサウンドは彼の穏健な個性に似合っていると思います。同作品にはクーベリックの1967年録音が存在しております。録音が自然で優秀であり(ヘルクレス・ザール)、繰り返しを実行していることにも好感が持てました。

 で、このCD、2006年より開始した「在庫削減計画」(現在は計画頓挫し、現状維持がやっと)に従い、オークションに300円出品したんです。ところが3週間経て一件の入札もなし。世間でも人気ないのかなぁ、ネット検索してもクーベリック盤ばかり出現して話題になっていない・・・そんなこんなで、我が棚中在庫整理は進んで数年、この一枚は生き残ったもの。縁は異なもの、味なもの、ですな(ほんまは男女の仲を指す仏教用語らしい)。

 ”南独逸地方の暖かい、厚みのあるサウンド”〜ワタシはコンセルトヘボウ、シュータツカペレ・ドレスデンと並んでもっとも好みのオーケストラであります。クーベリックの表現はストレートで、ほとんど虚飾がないシンプルなものだったが、アンサンブルの入念さ、細部表現の彫琢に於いて個性の違いを見せつけます。ひりひりするような神経質さとか、青春の胸の痛み、憧憬みたいものではない、もっと暖かく、穏健で、しかも時にメリハリは明確。例えば第1楽章最終版のアッチェランド、第4楽章の(安易な爆発だと辟易してしまうような)抑制と迫力インパクトの対比の上手さ。いずれ語り上手で、違和感なし。

 弦も管も深く練り上げられ、打楽器の迫力に打ちのめされるのは、録音技術の進歩も利しているでしょう。座右に常備するに相応しい、熟達の一枚・・・だけれど、あとはこの作品に何を求めるか、という聴き手の選択となりましょう。ジョージ・ショルティのMahler は世評高いが、ワタシは(聴く機会はそれなりにあるんだけれど)彼の明るく、スポーティで機能的な世界を好みません。バーンスタイン(旧録音)の熱血情熱は、体調が良い時じゃないと受け付けない。”ひりひりするような神経質さとか、青春の胸の痛み、憧憬みたいもの”は、子供の頃からのつき合いであるワルター/コロムビア交響楽団(1961年)の刷り込みか?(現在中年の耳でどう聞こえるかは別として)

 コリン・デイヴィスには”憧憬”は存在するが、”神経質さとか、青春の胸の痛み”はない典型的バランス感覚穏健派。全56分、耳当たりよく、中庸なテンポ、磨き上げられたアンサンブルは見事なものだけれど、”刺激”や”夾雑物”が足りないか。爽快で上機嫌だけれど、足りないのは怪しさか。もしかしたらジュゼッペ・シノーポリの全集をしっかり聴いちゃったせいかもしれません。終楽章の大団円はほんま素晴らしい。いずれ、”リファレンス”として手許に置いておきたい一枚。

(2008年12月12日)

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written by wabisuke hayashi