Mahler 交響曲第6番イ短調
(ディミトリ・ミトロプーロス/ケルン放送交響楽団1959年)


IMG Artists 7243 5 75471 2 3「GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY」 Mahler

交響曲第6番イ短調「悲劇的」

ディミトリ・ミトロプーロス/ケルン放送交響楽団

IMG Artists 7243 5 75471 2 3 1959年録音 2枚組1,200円(税込)で購入したウチの一枚

 ARIOSO 105-CD1というミトロプーロスのMahler ばかりを集めた4枚組(1,654円)がありまして、そこにも同一録音が含まれます。(つまり、ダブり買い)これが「同一演奏」とは俄に信じがたいほど音質が違っていて、こちら「GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY」シリーズの復刻は非常に優れて、鮮明そのもの。モノラルではあるが、音質上の不満はまったくありません。ARIOSO盤音源がエエ加減なんだろうな?きっと。(かなりノイジー。それだけ聴けば、ほとんど問題なく聴けるが)ARIOSO 105-CD1 第6番の他には第1/8/9/10番「アダージョ」を含む4枚組1,654円。お買い得!

 2004年11月の「音楽日誌」では

こんな時代にこれだけ集中力と、厳しいアンサンブル、モダーンな感覚が実現していたことに驚かされますね。大仰なるオーバーアクションなど微塵も存在しない。ひたすら厳しい感情の抑制が「悲劇」を表現します。
と書いておりますね。細部の彫琢のみごとなこと、テンポの揺れやら表情付けの個性が明快なのに、あくまでサウンドは引き締まって辛口。そして(青白く)燃えるような推進力も浪漫もあります。オーケストラのコントロールに優れるのは、当時のニューヨーク・フィル(1949〜58年)の録音を聴いても歴然。

 第1楽章、強面でもなく、辺りを睥睨する風でもないが、峻厳な風格がまったく素晴らしい。テンポの揺れは入念だけれど、時代掛かった古臭い粘着質的ではない。どのパートもまったく明快なる緊張感に充ちて、朗々と歌います。狂気ではなく、知的なバランスを欠かない。妖しいが、怪しくはない。急いてはないが、もどかしさはどこにも存在しない。聴き手の胸にさざ波を呼び込む、説得力連続。

 第2楽章「スケルツォ」は快速であり、しかも頻繁にテンポが揺れるが、恣意的な印象を与えませんね。煽ったり、激昂したりしない。かっちり筋肉質の響きであって、知的なチカラ強さに溢れます。聴き手はその表現力(オーケストラ・コントロール)に圧倒されるが、演じ手はあくまで自らの感情に溺れない。第3楽章「アンダンテ」は一見淡々として、肌理細かい味付け、ニュアンス、色彩にも驚くばかり。クールに抑制されているはずなのに、結果として現れた表現は雄弁そのもの・・・

 最終楽章は異形に肥大した、激しい楽章だと思うが、背筋が伸びて端正なんです。途中ホルンが一カ所乱れるから、やはりライヴなのか。素晴らしいアンサンブルですね。爆発力破壊力に不足はないが、響きは濁らず喧(やかま)しさは感じさせません。タメもあるしテンポの揺れも頻発するが、恣意的な印象はほとんどなし。粘着質ではないところが、ニューヨーク・フィル後任のバーンスタインと異なるところでしょう。ひりひりするような鋭利な響きは、あくまで洗練されて、カッコ良い。19世紀生まれ(1896年)とは思えぬモダーンなセンスに溢れました。

(2006年1月6日)


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